第18話 精霊協会からの密命
朝日が差し込む雷都の街は、昨日までの地獄が嘘みたいに穏やかだった。
瓦礫はまだ残っているけど、そこかしこに復興のための笑い声が響いてる。
ミルは子供たちに囲まれ、パンを高く掲げていた。
「はいっ、ミル特製! 復興風パンチー! できたよーっ!」
「ミル姉だー!」
「風パンチー!どりゃー!」
子供たちがお互い殴り合い――いや、楽しげに真似している。
……ネーミングセンスはともかく、元気になってくれて何よりだ。
少し離れた場所では、カイが魔導障壁の出力調整をしている。
「これで街全体を守れるはずだ。雷精霊の暴走は抑制できる」
「さすが雷都の天才魔導士だな」
「今は君の参謀だよ、リーダー」
そう言って小さく笑うその顔は、どこか誇らしげだった。
ーーやっと休める。
仲間と笑っていられる。
そう思った矢先だった。
◆
ドンッ
ギルドの扉が乱暴に開かれた。
黒い封筒が差し出される。
封蝋には、見覚えのある紋章。
――精霊協会。
ギルド長の表情が険しくなる。
「……レオン。お前宛てだ」
嫌な予感に喉が渇く。
封を切る手が震えた。
──精霊契約異常について調査を行うため
ヴァルデン支部へ出頭せよ。
一文を読んだ瞬間、空気が重く沈んだ。
「は?どういうことそれ?」
ミルが不安げに僕を見る。
「なぜ僕ではなく、君なんだ……?」
カイの眉がきつく寄る。
ギルド長が手を組み、大きく息を吐いた。
「精霊協会はな、管理が第一だ。お前みたいな例外は、危険視される」
「危険……?」
「多重契約、融合契約……前代未聞だ。あいつらが放っておくわけねえ」
ミルが俺の袖をきゅっと掴む。
「いやだよレオン……行かないでよ。また怖い目に遭うかもしれないじゃん……!」
視線を落とすと
ミルの瞳がひどく揺れていた。
言いたい。
「行かないよ」と。
でも、それは嘘になる。
握った封筒が音を立てた。
「……俺は行くよ」
「レオン!?なんでっ!」
「逃げてばかりいたら、何も変えられない。――この力の意味を知りたい」
ミルは唇を噛みしめる。
「じゃあ……ミルも行く!レオン一人なんて、絶対だめ!」
「僕もだ。僕の理論が間違ってないと証明させてくれ」
二人の言葉が胸に刺さる。
怖さよりも、頼もしさが勝った。
◆
バチッ……
突然、空気が震える。
街の空を貫くような雷光。
その中心から、白銀の女性が現れた。
ゼルフィア。
「クク……まだ英雄気取りは抜けぬか?人間」
「相変わらず、現れ方が派手だな」
「雷鳴は、ただの合図よ」
視線が突き刺さる。
魂をのぞき込まれるような感覚。
「その封書は罠だ。だが同時に、扉でもある」
「扉……?」
「運命と真実をつなぐ扉。開けば後戻りは叶わぬ」
ミルが震える声で叫んだ。
「そんなの、レオンに押しつけないでよ!」
「ミル……やめ」
ゼルフィアは細めた目でミルを見る。
「小さき風よ。お前の想いは知っている。だが、人間が力を持つ時それが災禍か光か――見極めねばなるまい」
その視線は、確かに優しさを含んでいた。
「レオン。写し取る者の未来は、雷雲の如く変わりやすい。光を掴むか、闇へ堕ちるか――その覚悟、しかと示せ」
胸が熱くなる。
「俺は……俺の大切なものを守るために進む。それが、苦しい道でも」
ゼルフィアは満足げに笑った。
「よかろう。雷鳴が響く時、お前の選択を見届けよう」
雷光と共に、彼女は消えた。
残った空には、渦巻く黒雲。
精霊たちがひそひそと怯えるほどの異常。
嵐が、確実に近づいている。
俺は仲間たちを振り返った。
「ヴァルデンへ行く。全部、確かめるんだ」
ミルとカイが強く頷き、
ノワールが肩の上でため息をついた。
「やれやれ、また厄介ごとだな……まぁ、主に付き合ってやるよ」
ギルド長も静かに言う。
「戻って来い。英雄なんざ肩書きはどうでもいい。お前は、お前でいい」
胸がじんわりと熱くなる。
「……はい。絶対に」
そして俺たちは、嵐へ向けて動き出した。
知らなかった。
この決断が、精霊と人間の歴史を揺るがす一歩になるなんて――
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