第17話 戦いの後に
炎と雷が衝突していたあの瞬間の残響は、まだ耳に残っていた。
焦げた瓦礫から立ちのぼる熱気は、ダリオの炎の名残だ。
――死闘だった。
◆ 回想:雷炎衝突の記憶 ◆
『レオン、お前だけは……絶対に越えさせないッ!!』
血走った目。
あの時のダリオの顔が脳裏に焼き付いている。
『もう負けない……ミルも、カイも、守るために!』
拳を、剣を、雷そのものを交えた衝撃が、骨に刻まれている。
――俺は本当に、ダリオに勝ったのだろうか?
倒れた彼の視線は、悔しさでも恨みでもなく――
どこか寂しさを含んでいた。
その余韻が、今胸の奥でずっと疼いている。
◆
「レオン!本当に、ありがとう!!」
瓦礫の中を片付けていた住民たちが駆け寄ってくる。
「レオンさんのおかげで、俺たち生きてるんだ!」
「また、ここに立ち直れる……!」
俺は苦笑して頭を下げた。
「いや、俺だけじゃない。みんなが踏ん張ったから、守れたんだ」
でも、胸が少し熱くなる。
自分の力が誰かを救った。
それがこんなにも、嬉しいなんて。
◆
「レオーン!瓦礫運び、手伝ってぇー!」
ミルの声が響いた。
振り向けば、子どもたちに抱きつかれ、腕を引っ張られている。
「ミルちゃん!また雷の魔法見せて!」
「ダメだよ!レオンがすごすぎて私、全然見せ場なかったんだから!次は絶対、私が主役なんだからね!」
むくれながらも笑うミル。
その笑顔が見れるだけで――俺は負けなくてよかったと思える。
◆
一方で――カイは全身汗まみれになりながら魔導障壁の再構築を続けていた。
新たな輝きを帯びる結節点に触れながら、息を荒げている。
「カイ、大丈夫か?無理してるだろ」
「はぁ、はぁ……無理してるよ。でもね、レオン。今日ここで僕が踏ん張らなかったら、君の戦いが無駄になる」
顔を上げたカイの瞳は、涙すら光っていた。
「僕は……君と一緒に戦った仲間でいたい。誰かに守られるだけの、情けない僕じゃいたくないんだ」
俺は言葉を失った。
そんな想いを抱いていたなんて――
「お前は十分に戦っていた。俺はそれをちゃんと見ていたよ」
「っ……ちょっと、それ反則だよ」
耳まで真っ赤にして、そっぽを向くカイ。
けど、震える指の先で魔導陣を描く動きは止まらなかった。
◆
夜の空は、まだ雷雲の残り香を抱えている。
瓦礫の丘の上、ゼルフィアが一人で風に髪を揺らしていた。
「もう行くつもりなのか?」
「私は雷の精霊。この街を守るための使命は、ひとまず果たされた」
横顔は寂しげだった。
俺が近づいても視線は空に向けたまま。
「レオン。お前はやがて、もっと巨大な力と向き合うことになる」
「大袈裟だって。俺はただ……」
「ただ?お前はただの少年ではない。写し取る者――それは精霊すら例外ではない」
胸の奥が冷たくなる。
ダリオの最後の視線が、また疼く。
ゼルフィアが俺を見る。
銀の瞳に、雷光が宿る。
「雷鳴が鳴る時――私はお前を見つめている」
「……ずいぶんと、見守り方が物騒だな」
「フッ。人間はどうしてそう、照れると茶化す?」
ふわりと笑い、彼女の姿は雷とともに消えた。
◆
「レオン!」
ミルが走り寄ってくる。
その手には、焼け焦げた髪飾り――
俺が、ダリオの炎から庇った時に焦がしたやつだ。
「これ、ボロボロだよ?でも……レオンが守ってくれた証だから、捨てない」
胸が痛いほど熱くなる。
「あの時、怖かったよ……レオンが燃えちゃうんじゃないかって……」
震える声。
そっと、俺はミルの肩に手を置いた。
「もう大丈夫だ。これからも、絶対に守る」
ミルは目を潤ませ、でも笑った。
「じゃあ……絶対に、離れないでね」
その言葉に、俺は強くうなずくしかなかった。
◆
街は傷を負いながらも、息を吹き返し始めている。
そして俺たちも――
次の試練を迎えようとしていた。
――これは、終わりじゃない。
これは、始まりだ。
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