第13話 雷都の英雄
雷塔決戦から一夜。
俺は、人生で初めて――英雄扱いというものを体験していた。
「お兄ちゃん、サインちょうだい!」
「雷鳴の英雄さまだー!」
そう、街の子供たちに囲まれ……
サイン攻めにあっていたのだ。
「い、いや俺そんな大した――」
「英雄なんでしょ!?かっこいー!」
「なんで俺だけサイン効率悪いの!?ミルちゃんは3秒で終わるのに!」
視線の先、ミルは――
「風パンチ!こうだよー!はっ!」
「「はっ!」」
ちびっこたちのヒーロー教官になっていた。
「ミルちゃんすげぇ……」
「俺じゃなくて完全にミルが主役じゃん」
ミルは風をまとってポーズを決める。
その衣装は新しく仕立ててもらったギルド製の風精装束。
淡い翡翠色に、風紋が流れるように輝いている。
「えへへー♪ レオン、見てみて!かわいい?」
「……似合ってるよ。すごく」
本音だ。素直に。
けど、その瞬間――
「ほぉ。英雄殿は精霊に甘い言葉ばかりだな?」
バチィッ!
背後から突然、静電気タッチ。
「いてぇ!?なにすんだよゼルフィア!」
雷を纏った美女――ゼルフィアが、退屈そうに顎を指で支えている。
今日のゼルフィアは珍しく、肩までの銀髪を後ろでまとめ、
雷光の羽飾りを揺らしていた。
明らかに街に馴染む気ゼロの、王女ムーブだ。
「人間のくせに英雄?笑わせるわ」
「いや、俺が望んだわけじゃないから!」
「なにそれ!レオンは英雄なんだから!」
ミルがぷく〜っと頬を膨らませる。
その様子を見て、ゼルフィアは目を細めた。
「また電波系風女が吠えてるわ」
「だれが電波系よー!!」
言い争いが始まる。
俺の胃が痛い。
雷塔の大広間で、多くの視線が集まる。
ギルド長代理のカイが、俺たちの前へ歩み出る。
「レオン。君とミル、ゼルフィア、そしてノワール――雷環の塔は、君たちに最大限の敬意を示す」
拍手が沸く。
そしてカイは胸ポケットから一つの徽章を取り出した。
《精霊契約者チーム 認定徽章》
「俺も……君たちのチームに、正式に加わりたい」
え?
その言葉に一番大きく反応したのは――もちろんミル。
「えぇ~~!? また頭でっかちが増えるの!? 今だって分析~注意~効率~ってうるさいのに!」
「……ミル。それは偏見だよ」
「偏見じゃないよ、実績だよ!」
「お、お前……言うなぁ」
俺は苦笑しながら、右手を差し出した。
「これからも頼む、カイ」
カイは少し肩を震わせ、俺の手をしっかり握った。
「理論は、現実を変えるためにある。君となら、それができると思う」
ミルが「むーーーっ!」と頬をひっぱり、
ゼルフィアは「ふん、使えれば良いけどね」とそっぽを向く。
カイは苦笑しつつ、どこか嬉しそうだった。
その夜、酒場にて。
(と言っても俺たちはジュース)
街の人たちがおごりまくる。
カイは終始緊張しているのに、ミルは超絶ゴキゲン。
「おかわりくださいっ!」
「ミル、飲みすぎ!」
「今日は英雄なんだもーん♪」
その背で、ゼルフィアは唐揚げをつまんでいた。
……庶民飯を気に入ったらしい。
「ん、これうまい」
「気に入ったなら良かったよ」
すると彼女はニヤリと笑い、俺に顔を近づける。
「調子に乗るなよ、人間。まだ――英雄には程遠い」
そんな強がりが、
俺を少しだけ安心させた。
しかし――
楽しい時間の裏で、
カイは研究室の資料を見つめていた。
「この焼け跡……雷じゃない。高熱破壊――炎属性だ」
嫌な予感が背筋を走る。
帰り道ミルが俺の袖を引く。
「ねぇ、レオン……空が、ちょっと赤くない?」
見上げると――
遠くの森、闇を裂くように赤炎が揺れていた。
「――来たか」
カイが低く呟く。
その焔の中から、
巨大な影がこちらを睨む。
「レオン……俺を越えたつもりか?」
炎帝の紋章が、紅く輝き――
炎の騎士ダリオが、再び現れた。
土が焦げる匂い、
押し寄せる熱波。
ミルが小さく震える。
俺は前に出て、仲間たちを背に庇った。
「……来るなら来てみろよ。俺は、あの日の俺じゃない」
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