第8話 魔導士カイの提案
雷契約が成立してから、雷都の空はどこか明るく感じる。
いや、街の空気が――俺たちを歓迎してくれているようだった。
ミルは上機嫌に宙をふわふわと旋回し、
ゼルフィアは相変わらず凛として俺を見下ろしている。
「ま、悪くないな。お前には……まだ期待できそうだ、人の子」
「それ褒めてるのか……?」
「褒めている。全力でな」
ツンなのかデレなのかよくわからないが、照れ隠しが激しいらしい。
ミルは「お姉ちゃんが照れてるー!」と嬉しそうに跳ねていた。
その賑やかな時間の中、ひとりだけ、冷静な視線が近づいてくる。
カイだった。
白衣の袖を風になびかせながら、
まっすぐに俺の前に歩み出る。
「レオン。僕を、君のチームに入れてほしい」
「……え?」
まったく予想していなかった言葉に、思わず聞き返してしまった。
「僕は、理論と知識で君たちをサポートできる。情報分析、作戦立案、精霊との魔力干渉実験……どれも君たちに足りない部分だ」
淡々とした口調。
でも、その瞳には消えない焦りと、熱があった。
ミルが前に飛び出し、ビシッと指を差す。
「やーだ! 絶対やだ! また頭でっかちなだけの人間でしょ!」
「偏見だ。僕は……頭でっかちではあるが」
「やっぱりじゃん!!」
俺は苦笑しつつ、カイの表情を観察した。
以前の彼はただの研究者。
精霊の感情など、研究データの一部でしかなかった。
だが――今の彼は違う。
雷契約を目の当たりにして、
世界観が覆された男の眼だ。
「でも、言葉だけじゃ信用できないよな」
「当然だ。だから実戦で示そう」
カイはそう言って指を鳴らした。
◆
雷都の外れにある訓練場。
ゼルフィアが腕を組んで宣言する。
「この男が仲間になるに値するか、試してみるといい」
カイは杖を構えると、俺たちを鋭い目で見た。
「ミル、君の魔力波形は既に解析済みだ」
「な、なにそれ……気持ち悪い!」
「失礼だな、僕はただ研究しただけだ」
ミルの風圧が巻き起こり、俺は剣を握る。
対してカイは魔法陣の数式を組み上げていく。
――勝負開始。
ミルが高速で飛び回り、カイ目がけて突風を放つ。
俺はその隙を狙って間合いを詰めた。
しかし。
「来ると思った」
カイは冷静だった。
地面に展開した雷の罠が弾け、俺たちは一度後退を余儀なくされる。
「僕は直接戦うつもりはない。君たちを最大効率で勝利へ導くのが役目だ」
言葉通り、カイはひたすらサポートに徹していた。
敵の動きを読み、弱点を指摘し、戦場全体を把握する。
そして――
「レオン! 右後方! 放電直後に必ず隙ができる!」
瞬間、俺は跳ぶ。
風の加速が剣を後押しした。
「――ウインドサンダーブレード!」
雷と風の刃が閃き、標的の雷精霊のコアを貫く。
訓練場に響く静かな制止音。
ゼルフィアが小さく頷いた。
「悪くない。こいつを仲間にするのは……賢い選択だ」
「ちぇーっ! やるじゃん……!」
ミルは不満げにしながらも、少し尊敬の色が混じっていた。
カイは深く息を吐き、俺に向かって手を差し出した。
「どうだ?僕を、君の旅路に加えてくれないか」
俺は迷わなかった。
「――これからよろしく、カイ」
手を握り返した瞬間、
ミルの小さな掌が俺の腕に絡む。
「レオンのサポートは、ミルが一番なんだからね!」
「もちろん、風の精霊の力は必須だ。僕はその力を補完する。敵じゃない」
「……ほんとに?」
「もし信用できないなら、ずっと監視していてくれ」
ミルの目がまん丸になり、それから少し笑った。
「変な人間だけど……悪くない!」
◆
加入直後、カイが端末を操作しながら言った。
「まず手始めに――これを暴こう」
光るスクリーンには、
暴走精霊の市場取引データ
それには魔導協会の紋章まで刻まれていた。
「……裏で何が動いてる?」
雷契約が導いた新しい仲間。
そして、見えてきた都市の闇。
ゼルフィアが低く呟く。
「腐敗は……いつも、最も高い場所に潜む」
次の目的地は、
精霊が商品として扱われる地下の世界――
雷都の裏市場。
ついに、俺たちは
この街の真実に踏み込む。
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