第7話 雷契約、成功
雷の光が空を裂き、俺の身体を包む紫電が消えていった。
気がつくと、俺は片膝をつきながらも、しっかりと地面を踏みしめていた。
雷鳴が止み、空気が静まる。
まるで世界そのものが息を呑んでいるような――そんな静寂。
正面には、腕を組みこちらを見下ろす上級雷精霊――ゼルフィア。
「……見事だ、人間。風と雷を調和させるなど、凡俗には絶対に不可能な芸当だ」
その言葉を理解するより先に――
「れ、レオンっ!!」
ミルが飛びついてきた。
勢い余って俺は倒れ込み、ミルの涙が頬に落ちる。
「よかった……よかったよぉ……!レオンが消えちゃうかと思ったんだから!」
「はは、大げさだな。ちょっと痺れただけだよ」
「嘘だっ!あんなの命がけだったじゃん!もう……もう二度と無茶しないでよ!」
胸の奥が熱くなる。
心配してくれる存在がいる――それだけで救われる。
その時。
「ミル。離れろ。人間と馴れ合うなと、昔教えただろう」
ゼルフィアが冷たく言い放つ。
ミルがビクッと体を震わせ、俺から離れる。
その表情は、嬉しさから一転して、怯えと寂しさに飲み込まれていった。
「……ゼル姉……まだそんなこと言うの?」
「私は精霊王女。人間と対等など――ありえない」
言葉は刺々しいのに、表情はどこか揺れている。
ミルを見つめるその瞳は、冷たさだけではなく――焦りと戸惑いも滲んでいた。
ミルは唇を噛み、俯く。
「でも……レオンは違う。私たちを道具なんて思わない。一緒に笑って、一緒に泣いて……何より、精霊としてちゃんと見てくれてる!」
俺の背中が熱くなる。
ミルの言葉は、俺の思いそのものだった。
「ゼルフィア」
俺は立ち上がり、ゼルフィアと向き合う。
「俺は精霊を力としてじゃなく――一緒に戦う仲間として契約してる。ミルもノワールも、だからここにいる」
ゼルフィアの瞳が鋭く細まる。
「その戯言が、いつまで通用するか……見ものだ」
そう言いながら、ゆっくりと手を差し出してきた。
「だが――認めよう。我が雷霆を使いこなす資格、お前にある」
光の輪が俺の手首に刻まれ、雷の紋章が煌めく。
――雷契約、成功だ。
◇
「お姉ちゃーん!!」
ミルが歓喜の跳躍で、ゼルフィアに再アタック。
「やめろと言っているだろう!!」
バチィッ!!
「あっづぅ!!も〜〜お姉ちゃんのいけず!!」
「誰が姉だ!勝手に姉扱いするな!」
ツンツンしながらも、ゼルフィアはミルをそっと地面に下ろした。
その仕草は――優しさに満ちていた。
「ふん……少しは成長したようだな、ミル」
「へへーん!レオンと一緒だからねっ!」
ミルの無邪気な笑顔。
それにゼルフィアは、ほんの少し口元を緩めた――気がした。
◇
その様子を見ていたカイが、呆けた表情で呻く。
「バカな……上級精霊が、人間と……尊厳を持った対等契約……?そんなの、理論的に……!」
ノワールが苦笑いする。
「ほらな、坊や。理屈では解けないこともある」
「……理論を超えるものが、あるのか」
その呟きは、雷鳴よりも深く響いた。
◇
街に戻ると――歓声が押し寄せた。
「ゼルフィア様と契約だって!?すげえ!」
「雷都の英雄だ!」
「うちの研究室に来てください!」
「サインを!サインをくれ!」
ミルが誇らしげに胸を張る。
「聞いた!?レオン、英雄なんだって!」
「いや、そういうのは……」
「控えめなとこがまたイイ!」
「やっぱり喧しいな、お前」
ノワールのため息。
でも、少し笑ってる。
ゼルフィアは腕を組み、つまらなそうに言う。
「人気者だな、人間。だが忘れるな。強さは、孤独と紙一重だ」
「……ああ。でも、俺は一人じゃない」
ミル、ノワール、そしてゼルフィアを見渡す。
「お前たちがいるから、俺は強くなれる」
ミルが満面の笑みで手を握り、
ノワールは照れ隠しで影に沈み、
ゼルフィアはそっぽを向いて頬を染めた。
――雷都での新しい伝説が、確かに始まった。
そして背後で、カイが小さく拳を握る。
(次は……僕だ)
雷が遠くで鳴った。
新たな運命を告げる音のように。
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