第6話 ゼルフィアの試練
雷鳴が天井を震わせ、洞窟の壁に青白い影が揺れた。
俺の前に立つゼルフィアは、風に靡く銀紫の髪を雷光に照らされながら、まさに嵐の化身のような威圧感を放っていた。
「ミル。貴様がなぜ、下等な人間に仕える?」
低く響くその声は、嵐の前触れのように冷たい。
「した、仕えてるわけじゃないもん!レオンは……私の相棒だよ!」
ミルが翼を震わせながら一歩前へ出る。
「私が泣いてたとき、レオンは一緒にいてくれた。道具になんて一度も扱われなかった!」
「綺麗事だ」
雷がゼルフィアの指先で弾ける。
「人間は、精霊を利用する生き物。いつか必ず、汝の心を踏み躙る」
「そんなこと……!」
ミルは拳を握りしめ、悔しそうに歯を噛んだ。
俺も、胸の奥がぐらりと揺れる。
確かに、そういう人間を見てきた。
でも――俺は違う。
「ゼルフィアさん。俺は――」
「口を閉じろ、人間。汝の言葉を聞く価値はない」
一刀両断。
雷鳴よりも鋭い拒絶。
ミルは震えながら、それでも俺の前に羽を広げる。
「お願い……レオンを試して。私が信じた人を……信じてみて」
「ミル……」
ゼルフィアの視線がミルに向けられる。
その瞳に、僅かだが迷いが宿った。
「……そこまで言うのならば」
彼女はゆっくりと空へと舞い上がる。
同時に、洞窟全体が戦場へと変貌した。
雷と風が渦巻き、空気は張り詰める。
「この試練を受けよ。風と雷――混じり合わぬ力を調和させてみせよ」
閃光。
足元に雷が突き刺さり、石床が炸裂した。
「成功すれば契約を認める。失敗すれば死ぬのみだ」
「レオン……!やめようよ……!」
ミルの声は震えていた。
それでも俺を必死に引き止めようとしている。
「俺は――逃げない」
怖い。
生きたい。
でも――
(ミルを守りたい。精霊が泣く世界を……絶対に許せない)
俺はミルを抱き寄せた。
「信じてくれ、ミル。一緒に乗り越えるんだ」
「……うん。信じる!だって私たちは……パートナーだから!」
ミルの魔力が、嵐のように俺へ流れ込む。
風が俺を包み、雷へと挑みかかる。
だが――
「うあっ……!」
雷と風は拒み合い、爆ぜた衝撃が体を裂く。
激痛が走り、膝が崩れそうになる。
「レオンっ!!」
「まだ……だ!」
雷の軌跡が俺の肌を焼き、視界は光に飲まれる。
意識が飛びそうになる――
だけど。
(ミルが必死なんだ。置いて倒れるわけにはいかない)
「レオン、お願い!一緒に……!」
ミルが涙を散らしながら叫ぶ。
その声が――雷鳴を押し返した。
「ミル……俺を導け!!」
「うんっ!!」
風の精霊の魔力は、俺の腕へと集まる。
一方で、ゼルフィアの雷がそれに絡みつくように重なった。
相反する力が、ひとつになろうとしていた。
(受け入れろ……拒むな……!)
「――行くぞ!!」
俺は叫び、剣を構える。
「複合魔法!!!」
風の刃が雷光を纏い、世界を真っ二つに割るような轟音が響く。
雷雲が裂け、まばゆい光が差し込んだ。
「……!」
ゼルフィアが瞳を見開く。
そして、静かに――着地した。
「ここまでとはな」
その声音は先ほどと違っていた。
威圧や嘲りはなく、純粋な評価。
「ミル。貴様は確かに良き目を持っていた」
「お、お姉ちゃん……!」
ミルはゼルフィアの胸に飛びつこうとするが、
「近寄るな。鬱陶しい」
すっと風に押し返される。
「つ、冷たいよぉ……!」
「ふふ、照れてるんだよゼルフィア!ミル、よかったな」
「うん……!レオン、ありがとう。一緒に頑張ってくれて……本当にありがとう」
(ミルが……笑っている。それだけで救われる)
ゼルフィアは俺の前に歩み寄り、問う。
「名は?」
「レオン=アークライト」
「覚えておこう。――我が契約者の名として」
彼女の指先が俺の額に触れる。
暖かい雷が体内へと流れ込む。
「風と雷の調和を示した者よ。今より汝は――我が主である」
その言葉に、背筋が震えた。
誇りと責任がのしかかる。
ミルは俺の腕に抱きつき、満面の笑みを向ける。
「レオン!私たち、すごいよねっ!?」
「ああ。すごいのは――ミルだよ」
「えへへぇぇぇ……!!」
ミルは嬉しさでバタバタと宙を舞った。
「姉妹で同じ主に仕えることになろうとは……皮肉なものだ」
ゼルフィアは横を向くが、その口元はほんの少し――柔らかい。
「これからよろしくな。……ゼルフィア」
「図に乗るなよ、人間」
雷光の中のその姿は、確かに笑っていた。
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