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精霊契約でパーティー追放されたけど、今さら戻ってこいとか言われても遅い!  作者: 夢見叶
第3章 雷鳴の都と導きの魔導士

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第3話 雷鳴実験室の見学

雷都ヴァルデンの朝は、相変わらず空が騒々しい。

遠くで落ちる雷の音が鼓動に混ざって、不安と興奮を同時に煽ってくる。


「今日の案内は僕がする。ついてきて」


カイは無表情で、けれど期待に満ちた目だけは隠そうともせず、塔の奥へと歩いていった。

ギルドというより、研究機関の匂いが濃い。

魔力の帯電した空気が肌をチリチリ刺激してくる。


「なんか……ここ、落ち着かない」

ミルが俺の袖を掴んだ。耳の先まで逆立つように震えている。


「気合い入れろ。ビビってると余計に雷が寄ってくるぞ」

ノワールの皮肉にミルは情けない声で

「ひゃあああやめてぇぇぇ!」と跳ね回る。


……いや、確かに冗談に聞こえないくらい雷気が濃い。



大きな扉が開かれた瞬間、空気が変わった。


眩い青白い光。

三日月型の巨大な装置の中央で雷が暴れ、

その周囲には……見覚えのある、小さな光の生き物たち。


――雷精霊だ。


「すげぇ……」


だが俺はすぐに息を呑む。

精霊たちはまるで飼い殺しにされるように、

魔導器の中へ吸い込まれていったのだ。


「これが……研究?」


俺が呟くと、カイは淡々と説明した。


「雷精霊は高純度の魔導エネルギーを産む。だからこうして抽出して利用するんだ」


抽出。

まるで資源だ。


「……それ、彼らは苦しんでるじゃないか」


「苦しむ? 精霊に感情なんてない」


その一言が胸を刺す。


ミルが眉を寄せる。

「あるよ! だって、あの子たち震えてるもん!」


「震え? それは電圧の変動だ。精霊の形質は物理法則の一部で――」


「違う!」

俺は思わず遮った。


言葉より早く、あの子たちの怯えが伝わってくるんだ。

契約者だからこそ、逃げ場のない声が聞こえる。


「精霊は、俺たちの仲間だ。お前たちがしてるのは搾取だ」


カイの瞳が細まる。


「仲間? それは思い込みだ。感情に頼るから、魔導は進歩しない」


ミルが俺の背に隠れ、ノワールは小さく舌を鳴らした。


「てめぇ頭でっかちのくせに、心がカラッポじゃねぇか」


カイの表情に初めて感情が灯った。

嘲りの色だ。


「……君たち、遅れてるよ。精霊を使役するなら、効率こそ正義だ」


どうしてわからない。


精霊は道具じゃない。

生きているんだ――想いを持って。


俺は強く拳を握った。


「俺は、お前とは絶対にわかり合えない」


「いいね。そうやって感情的になる君を観察するのも面白い」


バチンッ


雷精霊が火花を散らし、装置が軋む。

誰より先に、俺はその悲鳴に気づいた。


――助けたい。


触れれば俺は傷つくかもしれない。

でも、このまま見ていられるか。


俺が一歩踏み出すと、カイが冷たく告げた。


「勝手なことをするな。ここでは俺がルールだ」


その瞬間、胸の奥に熱い怒りが渦巻いた。


精霊を縛る世界なんて――認めない。


俺が握る拳は、雷の鼓動と同じテンポで震え続けていた。



研究室を出ると、外気がやけに冷たく感じた。

遠くの塔で雷鳴が低く響く。


ノワールが肩で笑う。


「どうした、青筋立てちゃって。あのガキがムカつくってか?」


「……ムカつく。けど、それだけじゃないんだ」


ミルがそっと手を重ねてきた。


「怖かったけど……レオンの言ったこと、正しいと思う。精霊は、あんな扱いされるために生まれてきたんじゃないよ」


俺はミルの手を握り返した。

雷の光が手の間を照らす。


「ありがとう。俺は、精霊を守れる強さが欲しい」


胸に宿った決意は、雷よりも熱く燃えていた。


――だがその夜。

俺の信念を試す事件が、街を襲うことになる。

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