第2話 雷都の魔導ギルド
雷都ヴァルデンの中心にそびえる巨大な塔——
天空を貫くかのような鋼鉄と魔導結晶の円柱。
その名も《雷環の塔》。
入口に近づくだけで、身体中の毛が逆立つような魔力の圧を感じる。
「うへぇ……なんかビリビリするよ! 雷怖いよぉ!」
ミルが俺の背中にしがみつき、震えている。
「ビビるな、軟弱風玉」
ノワールが呆れたように翼を畳む。
「痛いのは嫌なんだもん!」
「殴られても痛くないだろうが。影なんだから」
「心は痛いの!」
……いつものやり取りに、少し肩の力が抜けた。
俺たちは受付カウンターに向かう。
水晶パネルが浮かび、魔導士らしき職員が淡々と手続きを続けている。
「冒険者登録をお願いしたいのですが」
俺が声をかけると、職員は顔を上げて、俺の契約石を見て目を見開いた。
「精霊使い……? この都市では珍しいですね」
視線には、好奇心より懐疑が混じっている。
ここでは、精霊使いは一段低く見られるらしい。
その瞬間——
「二重契約……いや、それどころじゃないな」
聞き慣れない少年の声が、俺の背後から響いた。
振り返ると、白衣を羽織った銀灰髪の少年が立っていた。
切れ長の眼は鋭く、俺の契約石を凝視している。
「属性が混在してる……? 理論上、崩壊するはずの系統が共存……」
「ちょ、ちょっと!? 近い近い! パーソナルスペースって知ってる!?」
ミルが俺の腕にしがみつき、少年を指差した。
「こいつ、理屈が歩いてるような顔してるな」
ノワールがぼそりと呟く。
「君、複数契約の理論をどう説明できる?自我干渉型か? 共鳴制御? まさか意識同化……!」
「……あの、自己紹介からお願いできる?」
俺が困って言うと、少年は一拍遅れて我に返った。
「カイ・ラインハルト。雷環の塔のギルド長代理だ」
まだ17、8歳くらいだろう。
だが、ただ者じゃない気迫と知性が漂っている。
「君の契約法……研究させてくれないか?」
「研究……?」
思わず眉をひそめる。
カイは俺の反応など意に介さず、ぐいと俺の手を掴む。
「来い。少し試験をさせてほしい。誰もが黙るような結果を見せてくれ」
強引な態度に反発心も湧くが……
俺は、ここで引くつもりもなかった。
カイに案内されたのは、灰色の金属壁に囲まれた訓練室。
魔導結界が張り巡らされ、魔力密度が異様に高い。
「では、結界を破ってみろ。強度はBランク規格だ」
カイの声は自信と挑発を含んでいる。
「ミル、ノワール。いくぞ」
「任せて! 今度こそ雷なんかに負けないんだから!」
ミルが小さな拳を握りしめる。
「主の命令とあらば、いくらでも」
影が蠢き、ノワールの双眸が妖しく光った。
俺は二人と呼吸を合わせる。
「風と影──共鳴、解放!」
ミルの突風が結界に大きなひびを刻む。
そこへノワールの影槍が収束して、中心を貫いた。
バキィッ……!
結界が砕け散り、雷光が弾け飛ぶ。
「……っ! やったぁ!」
ミルがぐるぐると飛び回り喜ぶ。
「当たり前だ。この主と俺の絆を舐めるな」
ノワールは誇らしげに顎を上げる。
カイは一瞬、呆気にとられた顔をしていた。
だが次の瞬間、頬を紅潮させて笑う。
「面白い……本当に、面白い!君の契約、理論的にあり得ない。けど、可能性に満ちてる!」
ミルとノワールは同時に一歩下がり、言い放つ。
「「近寄るな、理屈メガネ!!」」
「め、メガネはかけてない!」
カイが素で動揺する。
……なんだか、憎めないやつだ。
「明日、研究室に来てくれ。精霊と人間の未来を変える実験を見せてやる」
彼は満面の笑みでそう言った。
俺は胸の奥に灯った不安と期待を、噛みしめる。
——精霊は道具なんかじゃない。
——でも、力の未来を俺は見てみたい。
「わかった。俺たちの力、見せてやる」
その宣言が、雷鳴のように塔の天井へ響いた気がした。
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