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精霊契約でパーティー追放されたけど、今さら戻ってこいとか言われても遅い!  作者: 夢見叶
第2章 ギルド昇格試験編

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 第9話 幻影の試練 ― 過去との対峙


どれだけ歩いたかわからない。

気づけば、ダンジョン内の薄暗い通路は深い靄に飲まれていた。


──視界が歪む。

霧が色を変え、景色が捻じ曲がる。


目を開いた瞬間、息が止まった。


王都の中央広場。

石畳、建物の配置、風の匂いまでもが、あの日と同じだった。


追放宣告の日。


「無能が粋がっても無駄なんだよっ!」


「コピー? そんなの誰でもできるだろ!」


「お前は英雄候補の面汚しだ!」


俺を囲み、罵倒する声が次々と浴びせられる。

石が飛ぶ。唾が飛ぶ。笑い声が刺さる。


胸を抉られる記憶。

忘れたことなんて、一度だってなかった。


「……はぁ、はぁ……幻覚だ……」


わかってる。

だけど、身体がすくむ。足が動かない。


俺は視線を落とし、拳を見つめる。

震えている。


あの時の感情が、膿みのように湧き上がる。


悔しさ。

情けなさ。

自分自身への怒り。


押し潰されそうになる。


その時、幻影の中で一番見たくないやつが現れた。


元パーティーメンバー──

かつて俺が尊敬した王国最強候補。


顔をしかめ、つまらなさそうに言い放つ。


「お前は最初から欠陥品だ。仲間の力をコピーしても、本物にはなれない。二番煎じの劣化品──それがお前の全てだ」


胃の奥から酸っぱいものが込み上げた。


「違う……俺は……!」


声が震えた。

言葉に力が入らない。


すると──小さな影が前に出た。

幼い俺だった。


「僕を見捨てたのは、君自身だよ?」


「……やめろ」


幼い俺は、ひどく冷たい目で笑う。


「君に何ができる?邪魔者だよ。重荷だ。誰にも必要とされない」


カッと視界が滲んだ。


「っ……やめろ……!」


膝が崩れ、地面に手をつく。

頭の奥がガンガン痛む。息が掠れる。


「レオンはそんなのじゃない」


はっと顔を上げた。


幻影のミルが、目の前に笑顔で立っていた。


だけど。


「弱い男に魅力なんてないのよ?」


ザクリと心を切り裂く毒笑。


もう一度、心臓を掴まれる。


続いて現れるのは──セリナ。


だがその瞳は、どこまでも空虚だった。


「あなたが傷つく価値なんて、ない」


世界が音を失った。


俺は両耳を塞いだ。


「違う……聞きたくない……!」


幻影たちは容赦なく近づく。


「逃げるなよ無能!」

「また泣き喚くのか?」

「お前なんて、生まれてこなければよかった!」


ついに心が折れかけたその瞬間──


ガシッ!!!


誰かが腕を掴み、強く引き寄せた。


「レオン!!」


驚いて振り向くと──

瞳を赤くし、荒い息を吐きながら走ってきた本物のミルがいた。


「あ……あれ……?」


ミルは涙のにじんだ目で、俺を睨む。


「何してんのよっ!」


そして怒鳴りながら、俺の胸ぐらを掴む。


「ひとりで勝手に沈んでんじゃないわよ、この大バカ!」


「ミ、ル……?」


「レオンがいなくなるなんて……嫌に決まってるでしょ……!」


泣き声が混じった怒鳴り声。

その震えが胸を揺らす。


「後ろばっか見てんじゃないわよ!あたしが……今ここにいるでしょ!その手、離したことなんてないんだから!」


「……ミル……」


言葉にならない。


ミルは唇を噛みしめ、涙を流しながら訴える。


「辛かったなら、ちゃんと言いなさいよ……あたしが聞くから……!慰めるから……!笑わせるから……!……だから……ひとりで苦しまないでよ……」


その一言で、全ての重りが外れた気がした。


俺はミルを無意識に抱きしめていた。


「……ありがとう。お前がいてくれて……本当に良かった」


ミルは驚きで少し硬直したが──

次第に俺の背中に両腕を回してくる。


「もう……いなくならない?」


耳元で震える声。

小さすぎる声。


俺はそっと彼女の頭を撫でた。


「離れないよ。絶対に」


「……っ、約束だからね……!」


ミルの温度が、俺に強烈な現実を返してくれた。

胸の霧が消え去る。


その瞬間。


パリンッ!!


周囲の幻影たちが砕け散った。


白い光が溢れ、霧は一気に晴れていく。


ミルと繋いだ手から、暖かい魔力が溢れ出していた。


融合コピー──

俺たちの力が共鳴し、形を成す。


影が俺の周囲を包み、風が背中の翼となる。


「これが……俺の力……!」


ミルが涙を拭いながら、ニッと笑った。


「ほらね。レオンは無能なんかじゃないわよ」


その笑顔は、世界のどんな光よりも眩しかった。


──だが。


足元に、不穏な魔法陣が浮かび上がった。


脈打つ禍々しい光。

耳鳴りのような低い音。


ミルの表情が引き締まる。


「……まだ終わりじゃないみたいね」


俺も頷いた。


「むしろ、ここからが本番だ」


ミルの手を強く握る。


「一緒に行こう、ミル」


「当たり前でしょ!……あたしの大馬鹿レオン」


俺たちは同時に前へ踏み出した。


暗闇の奥で、何かが唸り声を上げている。

協会が仕掛けた陰謀が、牙を剥こうとしていた。


でも──


もう俺は怯えない。

だってミルが傍にいる。


そして。


遠くで光が瞬いた。

セリナがこちらを探しているのが、直感でわかった。


俺には──

守りたいものが、こんなにもある。


拳を握る。


「行くぞ。仲間を助けに」


「合図もなしに走るんじゃないわよ!……ちゃんと隣を見なさい」


ミルが照れ隠しに俺の肩を小突く。

その横顔に笑い、一緒に駆け出した。


幻影の試練は終わった。

逃げずに、痛みと向き合えたから。


次は──

俺の力で未来を掴む番だ。

 最後までお読みいただきありがとうございます。


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ったら


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