第7話 謎のヒーラー登場
「――レオン。少し休め」
ノワールの低い声が響く。模擬討伐試験を終えたギルド裏庭、休憩スペース。俺はベンチにぐったりと腰を下ろした。
「はぁぁ……疲れた……」
「よくやったじゃないか、レオン! ミルの援護が完璧だったおかげでもあるけど!」
ミルが胸を張って、俺の背中をバンバン叩く。痛い。
「お前が敵を吹っ飛ばしすぎるから、こっちは回収が大変だったんだぞ」
ノワールがため息を吐く。影から黒い手が出て、俺の肩にタオルをかけてくれた。
「いや、ありがとな。二人とも」
「っ――! ふふん! もっと感謝してもいいのよ!」
褒めるとすぐ調子に乗る。分かりやすい。
そのときだった。
「……お疲れさまです」
小さな、鈴のような声。振り向くと、白と水色の衣装をまとった少女が立っていた。胸元にはギルド職員の小さなバッジ。淡金の髪を一つに結び、控えめな雰囲気。
透明感があるというか――触れたら消えてしまいそうな子だ。
「えっと……君は?」
「試験補助として同行していた治癒術士、セリナと申します」
彼女は深く頭を下げた。
「先ほどの戦い……拝見しました。精霊との連携、とても見事でした」
「え、そう? ありがと」
「――む」
横でミルがぴくっと反応した。嫉妬ゲージが上昇している気配。
「特に、風精霊の援護と、影精霊による捕縛……精霊との連動魔法を、完璧に実行されていました」
「(うわぁ、めっちゃ褒められる……)」
正直、照れる。
と、
「……貴様、我らを視ていたな?」
ノワールの目が細くなる。影がゆらりと揺れ、敵意を隠さない。
「な、なに? どうした?」
「その娘……ただのヒーラーではない」
セリナはわずかに目を伏せた。その肩が、ほんの少し震えている。
ミルも気づいたらしい。
「……そっか。あなた、隠してるね?」
「隠して、いる……?」
「光の波動。強い光精霊がいる証拠よ。ほら、バレてるわよ?」
ミルが悪戯っぽく笑うと、セリナは観念したように胸元を押さえた。細い光の粒が零れる。
「……はい。実は、私……光精霊を」
「契約者か」
ノワールの声が重い。警戒MAX。
「す、すみません。隠すつもりはなかったのですが……試験の妨げになると思い……」
「いや、別に責めるつもりは」
フォローしようとした瞬間――
セリナが俺の両手を包むように握ってきた。
「次の試験……ご一緒させていただけませんか」
「――っ!?」
距離が近い! 顔が近い!!
「わ、私……レオンさんの戦い方を、もっと学びたくて……!」
ミルが半歩前に詰めた。
「レオンの契約枠は満員です」
にっこり笑ってるが、目は笑ってない。
「ちょっ、ミル……! 枠って何!?」
「精霊契約は普通一体まで。それをレオンは二体。つまり、もういっぱい!」
「法律か何かか!?」
セリナは小さく震えながらも、離さない。
「精霊契約……ではなくて……ただ、次の試験で、お傍に……!」
「ほう、傍に? 貴様、主との距離が近いな」
ノワールの影がわずかに膨らむ。
「ちょっと! 二人とも威圧するな! セリナ泣きそうだから!」
慌てて両者の間に入る。セリナは申し訳なさそうに首を振った。
「ご、ごめんなさい……無礼を……」
「無礼なんて思ってないよ。ただ……どうして俺なんだ?」
セリナは少しだけ目を伏せた。言葉を選んでいる。
光が、彼女の胸元で揺れた。
「――あなたは、精霊を信じて戦っているから」
その声音に、揺るぎない確信があった。
「精霊は、道具じゃない。仲間。あなたの行動から、それが伝わってきました」
「……」
胸が熱くなる。
それは、俺が一番大切にしていることだったから。
ミルがきょとんとした顔をする。
ノワールも、影の揺らぎが少し弱まった。
「だから……もし、迷惑でなければ。私はあなたの力になりたい」
「……迷惑なわけ、ないだろ」
自然に言葉がこぼれた。
ミルが腕を組み、ふんと鼻を鳴らす。
「そ、そうね! レオンの人望が厚いのは当然だし? 特別に許してあげる!」
「上からだなぁ……」
ノワールはセリナを見据えたまま、低く言う。
「役に立たぬなら捨てる。その覚悟があるなら、仕方ない」
「ひどっ!?」
「覚悟は、あります。精霊も、人も……守りたい」
セリナの瞳がまっすぐ向けられる。
――強い子だ。
◆
その後、セリナは控え室に戻り、俺たちはベンチへ戻った。
ミルが腕をぷらぷらさせながら、俺に言う。
「レオン、モテ期ねぇ」
「からかうな。俺は精霊使いだし、モテるとか無縁だから」
「いや、今の見たでしょ? 完全にヒロインムーブだったわ」
「……ヒロインムーブって何?」
「知らない」
「知らないんかい」
ノワールは腕を組んだまま周囲を睨んでいる。
「人間どもが近づきすぎだ。警戒を解くな」
「ええ……」
ミルが小さく肩をすくめた。
「でも、セリナ。悪い子じゃないと思うわよ?」
「……分かっている」
ノワールの影が静かに収まる。
「だが、あの力……光精霊。協会が放っておくはずがない」
「協会……?」
「余計なことは気にするな」
意図的に話を切られる。
だが――
(協会って……やっぱりただの支援組織じゃないのか?)
胸の奥に不安が残った。
◆
しばらくして、ギルド職員が声をかけてくる。
「昇格試験、最終フェーズの準備が整いました! 受験者の皆さんはアリーナへ!」
「お、来たわね!」
「……やるか」
ノワールが影から抜け、俺の背後に寄り添う。
俺は拳を握った。
「最終試験《模擬ダンジョン攻略》――!」
そして、セリナ。
俺たちの新しい仲間候補。
「よし。四人で行こう」
「任せて!」
「……了解した」
「が、頑張ります……!」
精霊使いと、光を宿す少女。
物語が、新しい局面を迎えた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるのっ……!」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークすると更新通知が受け取れるようになります!
ブクマ、評価は作者の励みになります!
何卒よろしくお願いいたします。




