第3話 個人試験 ― 風と炎の激突
ギルドの大闘技場。観客席からは、ざわざわとした声が絶えない。
(まさか……初戦からコイツが相手とはな)
審判役のギルド員が声を張り上げる。
「個人試験、一回戦! レオン・アルヴェン対――ダリオ・フレイン!」
相対するのは、かつての仲間。
俺を追放した張本人。
ダリオは片手に大剣を担ぎ、笑っていた。
「久しぶりだな、無能」
「……呼び方は変わってねぇのか」
「当然だろ? 精霊契約? ──ハッ、笑わせるなよ。遊びか?」
「遊びじゃねぇよ。俺は本気だ」
「じゃあ、どこまで通用するか見せてもらうぜ」
ギルド員が手を下ろす。
「――試合、始め!」
◆
「燃えろ、《フレイム・バーン》ッ!」
開幕と同時、ダリオは大剣を地面に叩きつけ、爆裂した炎が地を舐めた。
「ちょ、いきなり全力ォ!?」
(くるっ――!)
俺は跳躍し、炎の波をギリギリでかわした。
熱風が頬を焼く。心臓の鼓動が激しく跳ねる。
「おいミル! 何か言うことあるだろ!」
「う、うるさい! 私だって緊張してるのよ!」
「緊張すんなよ、精霊だろ!」
「精霊にも感情はあるの!?」
「あんたら、試合中に漫才してんじゃねえぞッ!」
ダリオが炎をまとった大剣で接近してくる。
(速い……っ!)
剣筋が視界に閃光のように走り、思わず腕を交差して受け止める。
重い。腕が軋む。
「ほらよ、レオン! 焼けろォ!」
「ミルッ!!」
「風盾っ! 《ウィンドウォール》!」
風が巻き上がり、炎と激突。
爆ぜた熱が俺の髪を揺らす。
「ふん、少しはやるじゃねぇか」
「そっちこそ炎ばっかりで脳筋かよ!」
「言わせておけ。無能が吠えてるだけだ」
ダリオの冷たい視線。
胸に刺さるあの言葉。
(もう……あの頃とは違う)
拳を握る。
「ミル。行けるか?」
「当たり前! 私を誰だと思ってるのよっ!」
「俺の最高の相棒だ!」
「っ……だ、だったら負けないわよ!」
◆
「風よ、切り裂け――《エアカッター》!」
ミルの風刃がダリオへ向かって走る。
「炎よ、防げ――《フレイムシールド》!」
火の盾が展開し、風刃を弾く。
炎と風。
魔力のぶつかり合いが観客を沸き立てる。
「おおっ! 精霊使いと炎術士の本気だ!」
「炎のダリオ相手に互角……信じられない!」
「無能って言われてた奴だよな?」
ザワつきが増えていく。
(こいつに負けるわけにはいかねぇ)
追放された日の記憶が過る。
――「お前は足手まといだ」
――「精霊契約なんて役に立たない」
――「二度と俺達の前に立つな」
(絶対に、見返してやる!)
「行くぞミル!」
「任せなさい!」
風が集う。力が高まる。
「《ストーム・スラッシュ》!!」
俺の拳に風が渦巻き、打ち込む一撃!
だが――
「甘ぇよ。《フレイムクラッシュ》ッ!」
ダリオの炎が打ち消し、激しい爆風が起こる。
「ぐっ……!」
俺は吹き飛ばされ、背中から砂地を転がった。
「レオン!!」
「……大丈夫だ」
立ち止まれない。
(そうだ。俺は――)
「こんなところで終わらない!」
◆
ダリオが炎をさらに纏い、姿が朱に染まる。
「終わりだ! 《インフェルノブレード》!」
大剣が炎の獣のように咆哮し、一直線に迫る。
(避けられねぇ!)
「やらせません! ――《ウィンドブースト》!」
ミルの風が俺の体を持ち上げ、ダリオの斬撃を紙一重で回避。
「なっ……!」
視界が切り替わる。
(見えた)
ダリオの懐に潜りこむ。
「風の拳だ――ッ!」
「チッ!」
拳と剣が噴煙とともにぶつかる。
風が炎を削り、炎が風を焼く。
互いに勢いが落ち、俺達は同時に飛び退く。
「はぁ、はぁ……」
「クソッ……!」
観客が息をのむ。
《精霊使いが……炎のダリオと……!》
《互角!?》
《むしろ押してる――?》
ザワザワとざわめきが俺達を包む。
(やれる……!)
ミルが小さく笑った。
「レオン、いい顔してる」
「ああ。やっと……戦えてる気がする」
「まだ終わってないけどね!」
「あぁ、ここからだ!」
◆
ダリオは大剣を突き立て、炎を吸い上げる。
「アンタの精霊……確かに少しは強くなった」
「見て分かるか?」
「だがな! 俺との力の差は埋まってねぇ!」
「――やってみろよ!」
「行くぞ……《フレア・バースト》!!!」
地面が裂け、炎柱が乱立する。
(くそっ、こんなの回避しきれねぇ!)
「ミル!!」
「もちろんよ!!――《旋風障壁・最大展開》!」
風のドームが俺を包み込む。
炎柱が次々と撃ち込まれ――
視界が真っ白に染まる。
「――っぐ!」
衝撃が全身を叩く。
腕が痺れ、足が震える。
ミルも苦しそうに声を絞る。
「くっ……まだいける……?」
「当たり前よ……レオンのためだもの!」
そんな真っ直ぐな言い方をするなよ。
胸が熱くなる。
「頼む。最後まで――」
「最後まで、一緒に!」
◆
煙が晴れた。
俺は立っている。
ダリオも立っている。
両者ボロボロ。
審判が叫んだ。
「ここまで! 両者戦闘不能と判定! 試合――引き分け!!」
観客席が爆発したように沸き立つ。
《引き分け!?》
《あのダリオと!?》
《無能って言われてた精霊使いが!?》
視線が俺に集まり――
「精霊使い、すげぇ……」
「なんか……かっこよかったぞ!」
噂が変わる音がした。
(やっと……一歩踏み出せた)
ミルが肩に飛びつく。
「やったわレオン! 勝ってはないけど、実質勝利よ!」
「……ありがとな、ミル」
「ふ、ふん。主を守るのは精霊の役目よ!」
ダリオは悔しそうに舌打ちし、大剣を担いで背を向ける。
「調子に乗るなよ。これで終わりじゃねぇ」
「上等だ。また戦おうぜ」
「……次はぶっ倒す」
炎の気配を残したまま、ダリオは去っていった。
◆
観客の注目がまだ俺を捉えている。
(さあ――ここからだ)
「次も勝とうぜ、ミル」
「もちろん! レオンが私を信じてくれる限り、私は負けない!」
「信じてるよ。ずっとな」
ミルの頬が赤くなる。
「なっ……! ちょ、急にそんな……!」
「ははっ」
追放された無能の物語は――
今、始まったばかりだ。
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