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CON-CREATURE 出張版 - 梅雨のじめじめ企画 -

作者: 戯言士

 ごめんなさい。陰に隠れてこっそりと新連載を立ち上げてました。

 世界征服を企む悪の組織といえば、やはり怪人やモンスターがお約束。

 そんな彼らがとある怪人の噂を聞きつけ、遥か日本までやって来ていた。


「はぁ……。今日もまた雨。しかもじめじめむしむしとした湿気の高さ。本当に気が狂いそうになってくるわ。

 あ~、早く任務を(こな)して帰りたいっ」


「ええ、同感だわ。話には聞いていたけど、この不快さは想定外。

 でも、この国の住人はこんな環境に慣れているみたいなのよね。雨にも負けず風にも負けず。そんな強がりが文化として沁みついた結果ってことなのかしら。

 この国の住人のこの姿勢、うちの連中にも見習ってほしいところだわ」


「ええ~、風情があって良いじゃない。

 天からは大地を潤す癒しの雨。池には蓮華と蛙の歌が、せせらぎには紫陽花と蝸牛(かたつむり)

 私はそんなこの国が大好きよ♡」


「はいはい。このろくでもない、すばらしき国は最高です」


「さすがはロマンチストのあなたね。言うことが違うわ」


 魔女マージョリーとシスターレシス、そして水の妖精アイナの三人、彼女たちが今回の任務のメンバーである。


「ふふん、解ればよろしい」


 今回のアイナは絶好調。

 一般人には鬱を齎す雨も彼女には却って心地好いばかり。正に水を得た魚ならぬ水の妖精なわけである。


「ところで肝心のターゲットだけど、どんな相手なの? そのくらいは調べてあるんでしょ?」


「当然よ」


 さらりと話を逸らすレシス。そして素知らぬ顔でそれに乗るマージョリー。これはドライというべきなのか、それとも陰湿というべきなのか。


「ええっ?

 ちょっと、そんな露骨に話を逸らさなくたっていいじゃない」


 涙目なアイナ。調子に乗り過ぎた報いというものだ。


「……これが妖怪『ものもらい』……。

 酷い。これじゃ絶対に誰も嫁に貰い手がつかないわね……」


 とはいえこうも平然と会話に溶け込もうとするこの姿勢。水の妖精のくせにドライである。

 というか、同じ女性のくせに言うことが酷い。


「これは人に寄生する病魔の一種かしら。

 見たところ細菌で瞼を化膿させ失明を齎す難物のようね。

 目許の不衛生さはもちろんのこと、酷使や睡眠不足による疲労、ストレスや不摂生による体力や免疫機能の低下した状態だと症状が一気に加速することが予想されるわ。

 感染の可能性が考えられるだけに、できれば近づきたくない相手ね」


 いや、酷いのはレシスの方も同じだ。

 対象の分析はまだしもとして、最後の台詞はあまりである。

 まあ、女性の身であることを考えてみれば理解はできないでもないのだが。

 (因みにこの病は基本的に感染しませんが、類似したウイルス性の病だとタオル等の共用による接触感染の可能性があるようです)


「し、仕方ないじゃない。これも一応は任務なんだから。

 取り敢えずこの人相書きを参考に、両目なり片目なりの潰れた醜女を探し出してさっさと終わりにしてしまいましょ」


 そしてマージョリーもまた同じ。

 とはいえ所詮は他人事、況してやこんな環境での任務である。本音が出るのも当然だろう。



 対象を訪ねてその目撃場所へと移動した三人。

 手分けしてそれらしい女性を探すが一向に見つかる様子もない。


「いたっ! 多分きっとあの人っ!」


 とある女性の後ろ姿を指差し大きな声を上げるアイナ。

 半ばげんなりとして諦めかけていたふたりとは違い、ただ一人雨の中元気である。



「あのっ、すみませんっ!

 あなた、椎○○美さんですよねっ?」


 テンション高く声をかけるアイナ。

 そして対象の彼女が振り向いた。


「ええ、そうですけど……あなたは?」


「え……?

 いや、嘘? どういうこと?」


「いや、どういうことって言われても……。それを訊きたいのはこっちの方なんだけど」


 取り乱すアイナ。

 しかしそれ以上に事態を理解ができていないのは彼女の方で。


「え……、いや……、その……」


 しどろもどろになるアイナ。

 そして──。


「ご、ごめんなさいっ、人違いでしたっ!」


 勢いよく駆け出しその場を離れるアイナ。

 残された椎○嬢はただぽかーんと佇むばかり。

 あれだけ元気よく飛び出したのはよいが、声をかけた相手はどうやら見当違いの人間だったようだ。



「どういうことよ? あれだけ自信満々で飛び出していったくせに」


 消沈しながらもどってきたアイナを責めるマージョリー。

 しかし──。


「それはこっちの台詞よっ!

 何が目許の潰れた醜女よっ。

 あの人、すっごい美人じゃないっ!」


 マージョリーの手元から人相書きを奪い取り、ひたすら文句を言い詰るアイナ。


「まあ、あれは病魔に侵された状態のものだったものね。だから彼女が完治していればこういう結果になるのも当然の話。

 ほんと、誰かさんのお陰で余計な骨折り損になったわよね」


「し、仕方ないでしょっ。

 みんなあの情報源が悪いのよっ!」


 嫌味たっぷりのレシスと恨みがましい視線のアイナ。そして開き直って反論するマージョリー。

 不確かな情報に振り回された者たちは、こうして徒労の末に帰途へと就くのであった。

 この話はあくまでもフィクションです。実在の人物とは一切関係ありません。(笑)

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― 新着の感想 ―
椎○○美……。 一体何処の○名心○さんなんだろう? 解らない…………。 怪人になる素質を持ち、それを失った(完治)した女。
あぁ……。 思わず★5つけてしまいました。
こ、これは戦隊モノでござるか? (つい高評価をw)
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