秋。
llmを使って小説を書く試み。アイデアは人。壁打ちはllm(主にChatGPT)。文章がうまく紡げないときはllmにふくらませてもらっています。
ようやく汗を拭うことも少なくなり、衣替えをした長袖のカッターシャツをまくらないで登下校するようになった。
改札を出て、商店街へ向かう。
個人商店はハロウィンの雰囲気を少しでも出そうと飾りつけがされている。折り紙でできたかぼちゃのおばけやとんがり帽子を被ったおばけの絵には気が向かなかったが、何軒かがいらすとやの画像を使っていて、妙に醒めてしまった。
祐介は足早に通り抜けようと歩く速度を上げたが、商店街の終わりの空き店舗に目が留まり立ち止まった。
がらんとしたコンクリートの床と壁。そこにおざなりに並べられた長机。その上には細々とした小物類が雑然と並べられていた。
上部のシャッターが入っているだろう場所から垂れ下がった少し汚れた垂れ幕には「リサイクルショップ」と書かれており、手書きの「本日最終日」の紙が、これまたやる気のないガムテープで留められていた。
こんなのやっていたっけ?
毎日通る商店街だ。昨日は無かったように思うが、歩きながらイヤホンで英単語を覚えるためのアプリの音を流しているため、気が付かなかったのかもと考え直す。
日がくれ始めた空気は少し寒くなってきた。それとともに受験勉強の息苦しさが上がった気がする。焦っても勉強は進まない。ひとつひとつ積み上げるしかない。砂時計の砂のように。わかっていても一七歳の祐介には砂は自らの意志とは無縁に落ちる。時間は静かに、確実に落ち重なって山となっていく。目には見えない小さな一粒一粒が、静寂でないと聞こえない音をともないながら、落ち、積もり層を作っていく。知識なのか澱なのか。砂がすべて落ち切った瞬間が早く来て欲しい、でもまだその準備が整っていないんだ。静かに大声で。手を止めたふとした瞬間に。
少しのぞいていこう。
客もいないが、コレを並べた主人もいないようだ。盗まれたらどうすんだろう?
environment
環境
耳から聞こえる女性の声に心のなかで呟く。
雑多に並べられてる小物は主にガチャポンの景品のようなものが多かった。
そういえば姉はこういう小物が好きだったっけ。
アニメやマンガのキャラクターではなく、生活用品が小さくなった景品の出来が最近はすごく良いとこの前帰省したときに力説していたな。
according to
~によれば
目に留まったのは懐中時計のミニチュアだった。それだけが他の小物に比べて少し大きく精巧に見えた。小さな透明な袋を手に取って顔に近づけてみる。プラスチック製だが、金属に近い鈍い金色をうまく表現していた。時計の針はもちろん動かいていない。
comfortable
心地よい
「良いのに目をつけたね」
イヤホンから聞こえる音声に続けて聞こえたのでギョッとして瞬間身体を強張らせる。
目の端に中年の痩せた男が見えた。
慌ててイヤホンの片方を外しポケットに入れる。
「すいません」
とっさに謝った祐介に男の方も申し訳無さそうな顔をした。
「ごめんごめん。最近のイヤホンは線が無いんだね。驚かせて申し訳ない」
声のトーンは軽い。
「いえ」
「それは他のヤツと違ってガチャポンの景品じゃないんだよ」
「そうなんですか?」
「あぁ、『不思議の国のアリス』って知ってるかい」
「ルイス・キャロル」
「お、よく知ってるね」
世界史のイギリス文学で出てきた。
「そこに出てくるうさぎが持ってる懐中時計なんだ」
「そうなんですか」
「元々はそのフィギュアかなんかの付属品なんだが、肝心のフィギュアが無いもんでね」
確かにうさぎはいない。
「だもんで、ガチャポンと一緒にならべているわけさ」
「へー」
substance
物質
「あの、コレください」
夜が更け、少し開けた窓の隙間からはもう虫の声は聞こえていない。時折、帰宅したであろう車の音が遠くにある。少し冷たい空気が忍び込んで来てたが、その方が頭が働く。
机の上に広げられた問題集を見ながら、ノートに解答を書き込む。シャープペンシルが刻む音はだいたいが滑らかで、時々に止まっている。
ふぅ
一ページを終えて、椅子の背もたれに身体を預けるとキィっと鳴った。両手の指を絡ませて腕を頭の上に上げて上半身の筋肉を伸ばす。ゴキッと背骨がなった。肩もけっこう固くなっていた。割と集中できてたかな。
気が緩むと勉強机の棚に置いた、昨日まではなかったモノに気が向く。
なんでこんなの買っちゃったかな。
一呼吸ついてから再びノートへと向き直る。けれども、思考の片隅で何かが引っかかっていた。
夢を見た。
去年の今頃。
受験なんてまだぼんやりとしていた。文化祭の終わりの日。クラスの出し物は合唱だった。クラスの一部の男女はそれでも何かをやり遂げた熱に浮かれていた。祐介は音程を外さなかったことに安堵したぐらいで、自分でも醒めていることを自覚していた。
帰ろうと教室を出ようとしたその時、同じクラスの女子とぶつかった。
「ごめん」
「ごめんなさい」
同時に謝ったことに二人は思わず微笑んだ。
「おつかれさま」
「伊勢崎さんも伴奏おつかれさま」
普段はクラスでも目立たなかった彼女だが、ピアノが弾けるということで伴奏をまかされていた。
「間違えることなく弾けって良かった」
彼女の安堵した微笑みはとても眩しく映った。
「バイバイ」
祐介の横をすり抜けて教室に入ろうとした彼女が胸に抱えていたクリアファイルには懐中時計を持ったうさぎが描かれていた。
あっ。
スマホから目覚ましの時間を告げる曲が祐介の意識を遮る。目を開いた祐介。目の端に涙が流れた感覚があり、むず痒かった。
「祐介、まだ寝てるのー?遅刻するわよー」
階下から母の声。なにか引っかかった思いは霧散し、日常に、反射的に、身を起こしベッドから出る。
布団から出ると空気は冷たかった。
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