明日のために(見取り稽古)
継続して更新できるようになりたいです(書き溜 is 何処 orz)
この世界には魔術が存在する。体内や自然界のマナを変換し、事象をなすそれは、骨格の未発達である今の自分にとって鍛錬可能な唯一の技術に思える。
それに、どうも未習熟のようだし
今までまともに見てこなかったがどうやら俺はとんでもない数の『到達者』スキルを保有しているらしい。前世では『剣道』『銃剣道』あたりは間違いなく取得条件を満たした自信がある。しかし……
『薬草学』とか『錬金術』なんて、いつ鍛えたんだ?あの性悪幼女がギフトなんて渡すわけないし……
……まぁ、考えたところで分からないのなら時間の無駄だ。前世から考えてこの命の残りは20年弱。あの性悪幼女を出し抜くためにも、時間は惜しむべきだ。
……というわけで
「たのもー」
「おう、ギリアムんところのガキか。ここは子供が来るようなところじゃないぜ。」
冒険者ギルド。田舎ゆえ、本業の冒険者への依頼管理に加え、料理、酒、宿泊施設を一挙に引き受けるそこは、昼食前、これから戦場と化そうとしていた。
「ぼく、おーだーとりもはいぜんもできるよ。」
そう、マスターに売り込んでみる。ベテランの配膳役が一人故郷に帰ったばかりなのだ。どう見ても猫の手も借りたい状況だ。3歳児であっても、向こうには喉から手が出るほど欲しいはず。
「望みの報酬は?」
「まかない。あと、てがあいたらおねえさんとおはなししたい。」
「……マセガキめ。いいだろう。商談成立だ。まずは……」
「マスター、頼んだエールが来ないんだけど!」
「……あの馬鹿どもにエール3つだ。」
その日、この冒険者ギルドにマスコットが生まれた。
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「で、お姉さんに何の用かな?」
昼下がり、少し手すきとなった時間に俺は報酬を受け取っていた。要求するのは当然……
「まじゅつみせて!」
(そう来たかぁって、顔しているな)
四半刻とはいえ、このギルドの高嶺の花を占有するのだ。抱っこだの、膝枕だの、不埒なことを要求されると思っていたに違いない……実際にそういうことをせがむマセガキはいる。俺には理解できないが。
「……そうなると、ここではできないわね。訓練場に移動しましょうか。」
いまだ足元のおぼつかない(ように見える)子供を引き連れて、ギルド一の才媛は裏庭に向かった。
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(魔術を使う上で求められる資質は3つ。魔力の生成、一度に放出できる魔力量、あとは各種魔術の構築式を覚えられる頭脳。そのうち、魔力の生成については、私は得意ではないのだけれど……)
ギルド職員、アリシアは訓練標的の前で考える。
(今回の要望は「教えて」ではなくて「見せて」。なら、子供の喜ぶ見た目が派手なものにしましょう。)
そう考え、小規模な火球を選択。詠唱に入る。
「根源たるマナよ……」
突如、おぞましい感触に襲われる。まるですべてを、それこそ、魔力の動きから、思考の端々まで見透かされているような……
(恐ろしい……でも、暴発させるわけには!)
乱れた集中力を無理やりまとめ上げ、アリシアは火球を放ち、見事に標的に命中させた。
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「おねえさん、すごい!」
慌てて子供らしさを偽装する。先ほどの熱視線は不躾すぎたかもしれない。俺からであることまではバレていなさそうだが、同じ手は2度と使えそうにない。今はバレるわけにはいかないのだ。
「はい、おしまい。次からは私に直接お願いしてね。」
そう言うとギルドの才媛は仕事に戻っていった。
「さて、と」
魔力の流れと使い方はつかんだ。後は練習あるのみだ。
スキル情報:『解析』
種別:知識/感覚
ランク:A(E~)
説明:感覚でとらえた情報を自らの知識に照らし合わせ分析、類推し、一つの情報として構築するスキル。世界の知識へ接続し情報を引き出す『鑑定』と違い、まるっきり未知のものについては精度が圧倒的に落ちてしまう。