そして、今世
なんと、続きました(驚愕)
俺が転生して、3年がたった。……と、一言で済ませるのは簡単だが。
あんな羞恥は勘弁願う……
自分の体があれほどいうことを利かないとは。乳幼児へのお守りを、20を超えた成人の精神を持つ者が受けるのは、一種の拷問だと思う。
あの性悪幼女め、いつか仕返ししてやる……
まぁ、ようやくと体がある程度だが思うように動くようになってきた。手伝い以外にも、何か鍛え始めたいところだが……
「アル、ごはんよ。」
「はぁい。いまいきます。」
いまだ少し舌足らずな、そんな声で母の呼びかけに答える。
……今度こそ、今度こそ、大切な人を幸せにしてみせる。
そのためには、少しでも力をつけないと。
今生の自分として、願いをかなえるんだ。決意を胸に俺は食卓へ向かった。
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俺が生まれたのはいわゆる開拓村だ。殖民が始まって間もないこともあり、正式な名前はまだないらしい。もっとも、この村に正式な名前がつくまで、この村が存在するかどうかは疑わしいものだが。
魔の森。この村の北、王国の北端に存在するこの森は、世界最大の開放型ダンジョンを内包することで知られる。良質な木材資源を生み出すこの森だが、開発が進まない理由は……
「けっきょくのところ、『カナリア』なんだよなぁ」
スタンピード。定期的に発生する魔物の飽和暴走。発生すれば大都市だろうと飲み込んでしまうそれは、この辺境伯領最大の脅威だ。本来ならば定期的に間引きするべきだが、対処すべき領兵は東にある公国との小競り合いに引き抜かれている。
対処に困った辺境伯が打った手が、魔の森に張り付くよう急造された開拓村群だ。村民は領都のスラムから棄民された者を中心に、国教会からの派遣と冒険者からなる。冒険者は木材採取の護衛や、義務付けられている定期的な魔物の間引きのため、日夜魔の森へ分け入っている。
この棄民政策が今のところ破綻せず運用されている理由は、魔の森の恩恵による。この森の外縁部は肥沃であり、まともな開発がなされていない現在でも開発村群の食い扶持を賄いうる。無論、村民の不断の努力あってこそだが。
いつ失われるかもわからないこの日常は、日々を懸命に生きる、周りの大人たちのたゆまぬ努力のおかげで、かろうじてその平穏を保っていた。
……そう、かろうじてなのだ。
あぁ、力が欲しい。この平穏を守り続けられる、力が……
ステータス画面を開ける。そこに見えるとんでもない祝福を、打破することができない限り、この身が未来を切り開くことはない。
『他山の石』
このスキルは、アルフレッドがこの世界の未来を変えることを許さない。
「こんなこと、みとめてやるもんか」
たとえ、神や世界を敵に回しても、今度こそ、願いをかなえて見せる。復讐者の目に、炎が灯った。
本編で出てきたスキルの説明です。
今後、役に立つことがある……かもしれませんが、次が出る保証がないため読み飛ばしていただいて結構です。
スキル情報:『他山の石』
種別:呪い
ランク:-
前提:スキル『界渡り』及び『到達者』を習得済みであること
説明:所持者に何物にもなれない呪いと、傑物を磨き上げる運命、能力を付与する複合スキル。配下スキルとして、下記スキルがある。
・『傍観者/平穏無事』
・『英雄錬磨』
・『短命』
スキル情報:『傍観者/平穏無事』
種別:呪い/祝福
ランク:-/EX
説明:所有者は未来へ干渉することを許されない。代わりに世界の悪意からも干渉されない。世界の未来に沿わない限り、たとえ戦場のど真ん中でも、すべての矢弾は所有者を通り過ぎ、たった今所有者が救い出した命を奪うだろう。
スキル情報:『英雄錬磨』
種別:教育
ランク:EX
説明:所有者は傑物を磨き上げ、英雄へと至らしめる運命を負う。所有者の技や心意気は傑物を引き寄せ、人の到達点たる所有者と競い、魅せられた傑物は、偉業をもって人の限界を超え、英雄に至る。
スキル情報:『短命』
種別:呪い
ランク:-
説明:「用が済んだらさっさと死にやがれです。」(本来書かれていた文章は塗りつぶされている)
スキル情報:『界渡り』
種別:称号
ランク:B
説明:所持者が世界を渡る経験をしたことを示すスキル。この世界で持ちえない知識、技術、能力を所有者は持ちえるのだ。
スキル情報:『到達者/(能力値/スキル)』
種別:称号
ランク:A
前提:いずれかの能力値や成長要素のあるスキルがランク:Aの上限に到達していること
説明:能力値やスキルが、人類の到達しうる最高に至ったことを示すスキル。高みに至ったその視座は、ほかの能力値、スキルを鍛えるのに大いに役立つだろう。
※このスキルは前提を満たした場合、自動で取得され、各能力値、スキルごとに個別に存在する。