別大陸
違う大陸という事もあり、クロンの飛行速度でも1日で行くことは出来なかった。なので、海の側で一度野営し、次の日に今度はレランに乗る。2日連続でクロンだけドラゴンへ戻すのは、レランにとって不満になるだろうとの配慮である。速度に関しては、火魔法によるブーストがある分だけレランの方が速度が出る。
「あれが、新しい大陸ね。こっちの大陸とは交流があるのかしら?」
「一応、船での貿易はあるみたいだよ。ただ、距離があるからあまり盛んじゃないみたいだけど。だから、海賊なんかからの襲撃の護衛として冒険者もあっちの大陸に行くから、ギルドもそのままあるはずよ」
「そう、それじゃあ最初にギルドに行きましょうか。何か情報があるかもしれないわね」
大陸に近づくと、港が見えてきた。ただ、ドラゴンの姿を人に見られたら騒ぎになりそうなので、港から離れた位置に着陸し、港へ向かう。港は、大きな街であって王都では無いようだ。
門の出入りでは、簡単な荷物検査だけがあり、特に入場料等が取られることは無く、普通に入れた。商人が多く出入りできるようにか、それなりに道も整備されていて活発な様子が伺える。
門番にギルドの場所を聞いておいたので、迷うことなくギルドへ着いた。ギルドはそれほど大きくはないが、護衛依頼が多いためかそれなりに冒険者の出入りはある。
「結構にぎわっている様ね。とりあえず、受付に行きましょう」
5人は、受付へ向かう。受付嬢は、若い綺麗な女性だった。
「いらっしゃいませ。どのようなご用件ですか?」
「ダンジョンについて聞きたいのだけれど」
「あの、この大陸へ来るのは初めてですか?」
「初めてよ。何か、問題があるのかしら?」
「いえ、向こうの大陸とは少しシステムが違っているもので。それではランクの確認を行いますので、ギルドカードの提出をお願いします」
「分かったわ」
エリザ達はギルドカードを渡す。ソルナは、冒険者では無いので、ギルドカードが無い事に気が付いた。
「ねぇ、冒険者の新規登録って出来る?」
「はい、もちろんできます。こちらの書類に記入をお願いします」
一枚の紙をソルナに渡すと、受付嬢はエリザ達のギルドカードを確認する。
「すごいですね、皆さんCランクですか。すみません、駆け出しの冒険者かと思いましたが、Cランクであれば問題ありません」
受付嬢が言うには、ダンジョンは危険が多いため、ランクによる規制がある。特に、エリザが情報を求めたダンジョンは、最難関のダンジョンであるため、最低でもCランク以上でないと入る事は出来ない。
「書けたわよ」
「はい、受理致します」
「この子のランクは、Gからなのかしら?」
「はい。登録したての場合は、Gランクからとなります。ただ、冒険者学校や何かの功績があれば特例でDやFランクが与えられますが」
「特例と言うなら、この子は勇者よ。私達と一緒に、ダンジョンに連れていきたいのだけれど」
受付嬢は、勇者と聞いて驚く。別の大陸であるが、魔王の存在や勇者の存在は情報としてギルドに入ってきていた。
「しばらくお待ちください。ギルドマスターに聞いてみます」
受付嬢は、ギルドマスターを呼びに行く。しばらくすると、傷だらけの大男が受付嬢と一緒に歩いてきた。
「勇者が居ると聞いたんだが、誰だ?」
「あ、私」
ソルナは、軽く右手を上げる。ソルナの姿を見て、ギルドマスターは怪訝な顔をする。
「本当か? お前達からは、強者特有のオーラを感じないのだが。それに、勇者は2人だと聞いたぞ」
「色々あって、一人になったのよ」
「少し、実力を試させてもらう。嘘だったら大怪我じゃ済まないぞ?」
「別にいいわよ」
「そうだな……。ちょうどBランクのパーティが居るな。おい、お前達、少し手伝ってくれ」
ギルドマスターは、丁度掲示板でクエストを探していたBランクパーティに声をかける。リーダーの男が、ギルドマスターに顔を向けた。
「どうした、ギルドマスター直々に」
「こいつの力を試したい。報酬は出すから、ちょいと試験を手伝ってくれ」
「その小さな少女をか? それなら、俺達よりも下のランクのパーティでいいだろ」
「一応、勇者らしいんでな。それに、ダンジョンに行くって言うんだから、最低でもCランクの実力を持っているんだろう」
「Cランクか。それなら、いいでしょう。手伝いますよ」
リーダーの男は、ソルナを見て簡単なクエストだと思い引き受ける。ギルドマスターは、エリザ達とBランクパーティを訓練場へと連れていく。
「おーい、お前達。ちょっとばかり試験を行うから場所を開けてくれ」
ギルドマスターは、思い思いの場所で訓練を行っていた冒険者達に声をかける。冒険者達は、何か面白いことが起こるのかと、特に文句も言わずに場所を開けた。
「これはあくまで力試しだ。多少の怪我は仕方ないにしても、致命傷を与える事を禁ずる」
「分かっていますよ。ただ、本当にCランクの実力が無い場合は思いもよらぬ怪我をするかもしれませんが」
Bランクパーティのリーダーは、悪い顔をする。公式なクエストで美少女と関わることが出来る機会が出来た。自分の実力を見せつければ、自分に惚れるかもしれないと考え、ある程度怪我をさせるつもりであった。
「それでは、試験を開始する」
「? 武器は構えないのか?」
「必要無いよ? だって、Bランクでしょ? 雑魚じゃん」
「あんだと?」
苦労してBランクに上がったリーダーは、雑魚と言われてさっきの考えを改める。
「怪我をしないと分からないようだな!」
プライドだけは高いリーダーは、本気で攻撃を仕掛ける。一応、腕を狙っているので死ぬことは無いが、当たれば骨が折れる様な攻撃だ。それを、ソルナは指1本で受け止める。
「もっと本気出してもいいよ?」
「くそがっ!」
リーダーは、滅多打ちにソルナを攻撃する。しかし、それらをすべて指1本で受け止める。リーダーが疲れ、攻撃の手が止まる。
「じゃあ、こんどはこっちの番――」
「待て、待て! 終わりだ、お前をCランクにするから試験は終わりだ!」
「えー、まだ何もしてないよ?」
「しただろうが! Bランクの攻撃を素手どころか、指1本で受けるなんぞAランクでも無理だぞ! 本当に勇者だと分かった。ただ、規定は規定でCランク以上には今は上げられん。何か功績でも上げればすぐにでもBランクには上げられるが」
「エリザ達とダンジョンに入れるなら、別にランクは何でもいいよ」
「分かった。すぐにCランクのギルドカードを発行するから待っててくれ」
ギルドマスターは、受付嬢にCランクのギルドカードの発行を指示する。野次馬たちの歓声に手を振りながら、ソルナ達は訓練所をあとにした。




