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封印されていた最古の魔王。――外伝――  作者: 斉藤一


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対グレン

「今度はわざと外したりはしない」


「それは、当然ではないのか?」


当たり前のことをわざわざ宣言するグレンに、マオはあきれた表情をする。それでさらに頭に血が上ったグレンは、完全に殺すつもりで呪文を唱える。


「うるさい、炎の精霊達よ、今こそ力を示す時だ。我が眼前にいる敵を灰と化せ。力の源たる深炎よ、巡り巡りて――」


「隙だらけなのだが、攻撃してよいか?」


グレンが呪文を唱え始めて十数秒しか経っていないが、戦闘中にまったく動く事無くそれだけの秒数を突っ立ったったままであれば、普通に何十回と殺せてしまう。


「だめにきまってるでしょー、まほーの戦いなんだからあんたも自分のまほーを準備したら?」


「我は別に詠唱は要らぬのだが……」


それでもマオは律義にグレンの詠唱が終わるのを待つ。身振り手振りを交えて目を閉じながら呪文を唱えるグレンは、ただの祭りとかの催しであれば幻想的なのだろうが、今は攻撃を誘っている様にしか見えない。


「――血より熱き炎よ、大地より出でてすべてを灰燼に帰す場と成れ。グランド・フレア・ドーム!」


「やっと終わったのか」


数分の詠唱が終わり、グレンがマオへ魔法を放つ。マオの周りを、円形に赤い線が走り、そこから青や黄色や白の炎が湧き出る。そして、それがドーム状にマオを包むと、内側に向けて炎が舐めた。


「終わりました、ルナ様。炎で中は見えませんが、魔法の効果が終わる頃には少しの灰が残るだけですので見るまでもありません」


「もーおわったの? つまんなーい」


「わたしのでばんなーし」


ルナもソルスも、少しは戦えると楽しみにしていた。魔王が降伏してから、まったく動かない日々が続いて体がなまりそうだったからだ。

そして、街へ帰ろうと再びルナが影に潜ろうかと準備した時、グレンの魔法が内側から破裂するように割れた。


「ふむ、直撃すれば我でも危なかったやも知れぬが、2度と当たる事はあるまい」


「馬鹿な! なぜ生きている! 仮に水魔法で防ごうとしたとしても、一瞬で蒸発する熱さだぞ!」


「だが、所詮は熱だ。空気を遮断してやれば暑くもない」


グレンには、どういう事かは分からなかったが、実際に生きている以上、防がれたという事だけは理解させられた。


「ならば、今度は衝撃で消し飛ばす! 炎の精霊――」


「今度は待たぬ。アイス・スピアー」


無防備に立つグレンに、マオは氷の槍を放つ。詠唱中のグレンは、それを避ける事が出来ずに直撃する。


「ぐあっ!」


「あっ、ひきょー!」


「ずるいずるい!」


「何とでもいうがよい。死にたくなければ、お主らが立ち去れ。アイシクル・レイン」


マオが手を上げると、何千もの小さなツララが上空で作られる。回避不能だと思わされるその魔法に、ルナはすぐに撤退を選ぶ。


「みんな、わたしにつかまって!」


「わたしはだいじょーぶだよ?」


「ソルスだけぶじでもいみないでしょ! いったん引くよ」


ソルスはしぶしぶに、ロイとグレンは慌ててルナを掴む。ルナはすぐに岩陰の中へと沈んでいった。


「……一体、奴らは何だったのだ? 魔族や魔物には見えなかったが、冒険者か?」


マオは、ただ宿で待っていただけなのにこんなことになるとは思ってもみなかった。そして、帰りは自力で街まで歩くしか無いのかと、少し面倒に感じながら降らせる予定だった魔法を解除した。






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