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封印されていた最古の魔王。――外伝――  作者: 斉藤一


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勇者の移動2

「ほんとーに誰も居ないみたい」


結局、4人で領主邸を探したが誰も見つける事が出来なかった。そのため、4人は街の中へと戻る事にした。


「まちのなかも、へいわーってかんじ?」


ソルスは、街を歩く人々を見て平和そうだと感じた。


「ほんとーに、ブラドがしはいしてるの?」


ルナも、街が通常通りなのはむしろ異常だと感じていた。魔族が支配しているとなれば、もっと変わるものだと思っていた。ただ、2人の勇者はそこに人族が恐怖や屈辱を感じるとは考えていなかった。2人にとっては人族だろうが魔族だろうが、イケメン以外は等しく下等なものだと思っているからだ。


「まさか、さぼってる?」


「もしそうなら、ばつがひつよーよね」


ソルスの言葉に、ルナはそう答える。そして、情報収集のためにその辺を歩いている人に聞く事にした。ただ、2人だと要点をまとめて話すことは不可能だと判断したグレンとロイが率先して情報収集する事になっている。


「ソルス様、ルナ様、我々が情報を収集してまいりますので、どこかでお待ちください」


「ロイ、丁度ここに宿屋があるぞ。ここの一番いい部屋でいいんじゃねぇか?」


「それならばグレン、2人を部屋に案内してもらえませんか? 無論……分かっていますね?」


「ああ、分かっている。部屋が無かろうと主人が文句を言おうと、用意させるさ」


もし、一番いい部屋に誰かが泊っていれば奪い、もし部屋を借りるのに金が必要だと言われれば宿屋の主人を脅すつもりだ。総じてこの世界のものはすでに人族の物……いや、勇者の物――つまり、自分たちのものだとロイとグレンは考えている。


「ここの主人は居るか?」


宿屋に入り、受付の女にすごみを聞かせて問う。受付の女性は、自分では対処できないと思い、すぐに主人を呼ぶ事にした。


「は、はい。どうされましたか?」


すぐに主人がやってきたが、理由も分からぬまま連れてこられたので困惑気味だ。


「一番いい部屋は空いているか?」


「もちろん、空いております。ご宿泊されますか?」


主人は、上客だと判断してすぐに営業スマイルに変わる。最近はお金持ちはもちろん、冒険者すら訪れなくなっていたので泊まるものが少なくなっていたのだ。


「ああ。それじゃあ、鍵を寄越せ」


「何日ほどご宿泊されますか? ちなみに、1日あたり金貨1枚になります」


「気分次第だ。ほら、鍵を早く寄越せ。ついて来なくていいぞ」


「は、はぁ……」


主人はあいまいな返事に怪訝な顔をするが、客なら問題ないと鍵を取り出して渡した。そして、グレンはそのカギをもって上の階へと登って行く。宿屋にはスイートルームの様な上等な部屋は無く、一番いい部屋と言ってもただ普通の部屋よりも綺麗で広いだけの部屋だ。それでも、普通の部屋に勇者を連れていく訳には行かないのでただの休憩だとしても一番いい部屋へ連れていくしかない。そして、グレンは部屋を選び放題だと思っているため案内させなかった。ただ、この宿屋には広い部屋は2つあり、一つはすでにエリザ達が借りている部屋だった。


「ここか? 鍵は……なんだ、もう開いてるな」


「ん? もう帰って来たのか?」


考え事に収集していたマオは、ドアが開いた事で誰かが帰って来たのだと思った。しかし、そこに立っていたのは見知らぬ男で、なぜか自分を睨んでいるようだ。


「冒険者か? ここは我々が貸し切った。荷物をまとめて出て行け」


「そのような話、聞かされておらぬが?」


「さっき決まったんだ。さっさと出て行け」


「連れが居る。我が勝手に決めるわけにはいかぬ」


「ああ? だったら、痛い目を見てもらうしかねぇな」


グレンは、すぐにきびすを返して外へと向かう。屋内で火魔法を使うわけにはいかなかったし、魔法使いが素手で戦うなどもってのほかだ。だから、ルナを呼ぶ事にしたのだ。


「ルナ様。部屋を確保しようとしたところ、冒険者に奪われてしまいました。手を貸してもらえませんか?」


「うばわれた? そーか。わたしにさからうなら、さからうなら……えーと」


ルナは良い言い回しが思い浮かばず思案する。グレンは、そんな事どうでもいいと思ったので素早く立ち上がり案内を開始する。


「冒険者を排除しましょう」


「うんうん、はいじょしよ、はいじょ」


ルナは排除って何だ?と思いつつもグレンに着いて行く。部屋にはマオがまだ残っていた。出て行く理由がないので当然なのだが。


「おまえがてきか?」


「我は敵ではないぞ。何用だ?」


「てきじゃないのか? ならばなぜへやをうばう?」


「ここは我らが先に借りていた部屋だが?」


「ルナ様。冒険者の戯言など聞く必要はありません。実力を見せてやりましょう」


「わかった」


ルナは戯言って何だ?と思いつつも実力を見せるという事は理解できたので実力行使に出る事にした。


「ダーク・ショット」


ルナの手から小さな闇の球が発射される。小さいと言っても、オーク程度なら1撃で倒せるほどの威力はあった。つまり、普通の人間であれば当たれば死ぬ事もある。


「ウォーター・シールド。いきなり、何をする?」


マオはそれを水のバリアで防ぐ。ルナは、防がれたのが意外だったのか驚きの表情をした。


「やるわね。だけど、これはどーお? ダーク・キャノン」


「ちょっ、ルナ様それは!?」


グレンはルナが放つ魔法の威力を想像して顔をひきつらせる。明らかに屋内で使用する威力ではなかった。普通に宿を丸ごと破壊する威力があるはずだったからだ。そして、ルナの手からボーリング大の闇の球が発射される。


「! ウィンド・シールド、アイス・シールド」


マオもその威力を感じ、まずは風のバリアで威力を殺し、氷のバリアで爆風を封じ込めた。おかげで宿の破壊は免れたが、ルナはこれで止める様子は無い。


「これでもだめ? それじゃあ……」


「ルナ様! それ以上の威力の魔法を使っては宿が壊れてしまいます!」


「あ、そっか。それじゃーどうする?」


「おい、冒険者。外へ出ろ」


「我がお主の指示を聞く必要などないが、ここで戦うわけにも行かぬな。よかろう、お主の好きな場所へ連れていけ」


「ルナ様、我々が到着した場所へ行きましょう。そこならば、被害はでないはずです」


「いいよー。それじゃあ、かげわたりー」


ルナの特殊能力で、部屋が暗闇に包まれる。そして、暗闇が晴れた時にはソルスがこの街に到着した場所へと移っていた。ルナは、一度行った場所ならば影を繋いで移動する事ができる。


「ほぅ、面白い魔法だな。我でも見たことが無い」


「まほーじゃないよ。これはねー」


「ルナ様、わざわざ話す必要はありません」


得意げに自身の特殊能力を話そうとしたルナをグレンが止める。


「まずは私が。炎を司る精霊よ、我が難敵を葬らん。イグニート・ジャベリン」


「詠唱だと? ウォーター・ランス」


マオの放った水の槍は、グレンの火の槍とぶつかるとあっさりと蒸発した。ただ、その槍はマオにあたらずに横をとおり、後ろの岩壁に刺さる。よほど高温だったのか、刺さった場所の岩がマグマへと変わった。


「わざと外した。これで実力差が分かっただろ? ほら、あきらめてどっかいけ」


グレンは魔法使いではなく精霊使いだ。ただ、他のものからは魔法使いと区別はつかない。むしろ、詠唱が必要なだけ隙だらけで弱いと思われていた。しかし、威力だけで言えばこの世界のどの魔法使いよりも高い。


「珍しいが、それだけだな」


「なんだと?」


その威力を見ても逃げ出さないマオに、グレンは苛立つ。殺すまでは必要無いと思っていたグレンではあったが、どうでもいいと考え始めていた。


「わたしがやろーか?」


「いえ、俺がやります」


さすがに、ここで交代してはメンツが潰されると感じたグレンは戦闘を続行するのだった。






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