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封印されていた最古の魔王。――外伝――  作者: 斉藤一


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弱点

マオは、ヴァンパイア達が小さな傷はすぐに治るが、体を切断されるような大きな傷は体を霧状にして治していることに注目した。


「アクア・ミスト」


「? 何だ?」


マオはあたりを小さな水の粒で満たしていく。これ自体に攻撃力は無い。


「3人とも、同時に敵に大ダメージを与えてくれ」


「わかったわ」


「はい」


「わかったぜ」


「それではいくぞ。ストーン・スプラッシュ」


マオが合図として最初に石つぶてをヴァンパイアに当てる。小さな石だが、マオの魔力で放てば弾丸の様な威力になり、ヴァンパイアの体にどんどんと穴が開いていく。穴は最初、再生して塞がっていったが、途中から再生が間に合わなくなり、ヴァンパイアの体は粉々になる。


「レイン・アロー」


「パワー・スラッシュ」


「おりゃりゃりゃりゃー!」


同時に、エリザはマオと同様にヴァンパイアの体を穴だらけにして粉砕し、クロンは敵の上半身と下半身を真っ二つにする。レランは気合を入れた炎とナイフ攻撃で、何とか大ダメージを与えた。


「今だ。ダイアモンド・ダスト」


先に撒いていた水の小さな水滴は、ヴァンパイアの体である赤い霧を含みながら氷の粒へと変化する。赤い霧は薄くなり、赤く色づいた氷の粒が地面へと溜まっていく。マオは、赤い霧が減った以上、ヴァンパイアの再生は不完全になると予想していた。


「……何だと?」


だが、マオの目論見は外れ、一部の赤い霧が集まると体を作り出し、その体を中心として全身が再生していった。さっきよりは再生に時間がかかってはいたが、それだけだった。思っている以上に、ヴァンパイアの再生能力は高いようだ。


「それなら、ヴァンパイアの弱点を攻めるしか無いようね。レイン・アロー」


「無駄だ。その攻撃はすでに受けた」


エリザは、下から上にいるヴァンパイアに向かってレインアローを撃つ。その攻撃は、先ほどと同様にヴァンパイアの体を穴だらけにするが、それだけだった。違いがあるとすれば、矢がそのまま屋敷の天井まで穴だらけにした事だろう。


その天井が壊れた音に、ヴァンパイア達が上を向く。


「ぎゃああぁぁ! に、日光が!」


「体が焼ける! 早く光から離れろ!」


穴から入り込んだ日光を受け、ヴァンパイア達が苦しみだす。ギルドに居た冒険者とは違い、すぐに灰になることは無いが、絶大な効果があるようだ。


「逃がすな! そのまま光で焼き尽くすぞ」


エリザとクロン、レランはヴァンパイアの足を集中的に攻撃し、逃げられないようにする。そして、マオは入り込んだ光を、器用に水の膜で屈折させて焼いていく。


「今なら、こちらのほうがいいか。屋敷を壊さぬように威力を抑えて、範囲で当てる。サン・ビーム」


マオは、直接光を集め光魔法で使用する。ただのライトと違い、日光を集めた魔法はヴァンパイアに致命傷を与えていく。


「我らが、冒険者なぞに……」


「ブラド様……」


光を受けた者から、体が灰になっていく。さすがに、灰になってから復活する事は無かった。


「やっかいな敵だったわね」


「ああ。もし、今が夜だったら倒せなかったやもしれぬな」


エリザは、思ったよりも敵が強かったので楽しめたと笑顔だ。マオも、屋敷を気にしなければいくらでもやりようはあると思ってはいた。ただ、クロンとレランは、補助魔法を受けてなければヴァンパイアに勝てず、さらに致命傷を与える事が出来る攻撃が無いことに、最強生物のドラゴンとして歯痒い思いをしていた。実際は、ドラゴンの姿であればブレスで倒せたかもしれないが、その場合は屋敷も吹き飛ぶ。


パチパチパチ。どこからか拍手が鳴る。


「誰かしら?」


「我が眷属を倒すとは、なかなかやるではないか」


ブラドが、2階に現れる。そこには光が当たっているが、ブラドにダメージは無い。


「少し眩しいな」


ブラドがパチンと指を鳴らすと、ジャイアントバットが何匹か飛んできて屋根の穴をその体で埋めた。そして、再び薄暗い空間へと戻る。


「おっと、先ほどの問いに答えていなかったな。吾輩は魔王四天王の一人、ブラド。どうだ、お前達。吾輩の眷属にならぬか? それほどの力を持っているならば、幹部として歓迎しよう。それに、強さも数段上がるぞ?」


「結構よ。日光浴が出来なくなるじゃない。……けれど、眷属と言うからには、あなたもヴァンパイアよね? なぜ、現れた時に日光を受けて平気なのかしら?」


「さかしいお嬢さんだ、弱点を直接相手に聞くとは。だが、あえて答えてあげよう。吾輩はヴァンパイア・ロード。真祖である。元々、ヴァンパイアに弱点など無いのだよ。しかし、眷属は夜に強化される代わりに、日中は弱体化してしまうだけだ。慣れればそのうち、日光も耐えられる体になる」


魔族の住んでいる場所は北であり、昼よりも夜の時間帯が長い場所であった。なので、基本的には夜の方が得意な魔族が多い。ただ、その強弱が極端なのがヴァンパイアの眷属であっただけだ。


「それで、返事はいかがかな?」


「お断りね。実は、最初からそっちにつくつもりは無いもの」


ブラドは、マオ達にも顔を向けるが、全員首を横に振って同意することはなかった。


「そうか。ならば、強制的に眷属にして吾輩の忠実な下僕に変えるしかないな」


「最初から、そのつもりだったのかしら?」


「命令しか聞かない駒は扱いが面倒なのだよ。命令しないと動かないのでな。だが、その強さは拒否されたからと言って捨てるには惜しい。是非とも欲しい。だから考える時間を与えようではないか。今夜、もう一度この領主邸へ来るがよい。それまで、配下には手出し無用と命令しておく」


「断ると言ったでしょう? それに、もう一度来るなんてめんどくさいもの。ピアシング・アロー」


エリザはそう言うと、矢で攻撃する。しかし、その矢はブラドの体を貫通し、すぐに再生する。それも、ただの再生ではなく、先ほどのヴァンパイアと違って服にすら穴が開いていなかった。


「では、今夜、待っておるぞ」


ブラドはそう言うと、パチンと指を鳴らす。すると、大量のジャイアントバットが現れてエリザ達にぶつかっていく。そして、強制的に屋敷の外へと連れ出されるのだった。屋敷の扉は自動的に閉まり、魔法によってロックされ、手で押しても開ける事は出来なくなっていた。屋敷を壊せば入ることが出来るが。


「あいつ、結局自分が有利になる夜になるまで戦闘を避けたんじゃないかしら」


エリザは、ブラドの真意を読み解く。配下になるにしろ、戦うにしろ、ブラドにとっては全く損が無いからだ。


「だが、大人しく追い出されたという事は、そちらの方が楽しめそうと考えたのであろう?」


「そうね。じゃあ、こちらも対策を考えましょう? 今度は、日光も効かないようだし」


「私も、考えます」


「あたしもだ」


「それじゃあ、夜までどこかの宿屋に行こうかしら。本当に、あいつの配下が攻撃してこないとは限らないけれど」


「まあ、その時は倒せばいいだけだろう」



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