ギルド内
「話を……聞いてくれそうにないわね」
「目が赤いな。何かに操られているのか?」
エリザとマオが自らの経験を元に推測する。その間にも周りの冒険者やギルド員からの攻撃が続く。その攻撃がからぶり、テーブルや壁を破壊する。
「ぎゃああぁぁ!」
クロンを襲おうとしていた冒険者の一人が急に叫びだした。
「一体、何をしたのだ?」
「私は何も……。壁から入ってきた光に当たったら急に叫びだしました」
冒険者は、しばらく地面を転がった後、灰になった。それを見た周りの冒険者やギルド員が壁から離れる。
「こやつら、光に弱いのか? ライト」
マオは、単に光るだけの魔法を唱える。しかし、その光に照らされた冒険者は、眩しそうにはするが苦しむ様子も灰になる様子もない。なぜなら、魔力によって作られた光には紫外線が含まれておらず、吸血鬼化した者は紫外線に弱いだけなのだから。
「違ったか」
「バンパイア系統の様ね。日光に弱いのは」
エリザは、正確にこの場の敵の正体を推測した。
「それなら、多少怪我を負わせたところで無駄になるかしら」
実際、クロンやレランに切り傷をつけられた冒険者やギルド職員は、すぐにその傷が治っていた。
「アイス・バインド」
マオは、敵の動きをとめる方へと舵を切る。マオの魔法で作られた氷の蔓は、多数の冒険者たちの動きを、体に巻き付くことによって止める。ヴァンパイアの怪力であってもその魔法から抜け出す事は容易ではない。
「このまま日光に当てても良いのだけど?」
エリザは、周りの敵を脅す。しかし、味方意識は無いのか攻撃する機会を伺うだけで攻撃を止める様子は無い。
「ふむ、知能が低下しているようだ。それでエリザ、このものたちは元に戻るのか?」
「無理ね。細胞単位で変異しているのよ。なりかけならまだしも、ここまで変異してしまっては元に戻すのはほぼ不可能ね」
「ほぼということは、一応戻す手段はあるのか?」
「この人たちを吸血鬼化させた親玉を倒せば、体内に混ぜられた魔力が抜けて戻るかもしれないわね」
「それなら、閉じ込めておくだけにするか。クロンとレランよ、この牢へ入れて行け。アース・プリズン」
「はい」
マオは頑丈な土で出来た牢を作る。その強度は、クロンが本気で殴ってもひびすら入らないレベルだ。怪力のヴァンパイア達であっても壊す事はできない。クロンとレランは、動けない者たちを牢へと放り込んでいった。
「ここで情報は得られなさそうね」
「領主ならばこのことについて何か知っているのではないか?」
「それも望み薄だと思うわよ。ここの職員全員がヴァンパイアになっているのに、他の者たちが無事だとは思えないもの」
「ふむ。ならば、会うものすべて敵だと思うくらいが丁度いいのか」
「外に出歩いていた人たちは少なくともヴァンパイアじゃ無いと思うけれど、敵がヴァンパイアだけとは限らないわ」
ワーウルフやワータイガーは、月明かりで強化されるがヴァンパイアの様に日光で弱ったり死んだりしないので、外を出歩いたりしている。ただ、力は普通の人間と変わらないくらいなので、見た目や力での判別は不可能だ。
「終わりました」
「片づけたぜ」
クロンとレランがすべての者を牢へ入れたと報告する。マオは牢の入口を閉じて出られないようにした。
「待っておれ。我らがお前たちをヴァンパイアにした者を倒して戻ってくる」
牢に居る者たちにはその言葉が理解できなかったが、外に出られないことだけは理解したようで大人しく待つようだ。
「まさか、もう街が攻撃されているとは思わなかったわ」
「戦闘があった形跡が全くないから我でも分からぬ。人の姿は分かっても、それが敵かどうかも分からぬな」
「警戒して領主邸へ向かいましょう。クロン、レランも油断しないでね」
「はい」
特に、急に襲われたクロンは気を引き締めた。少しでも近づこうとする者がいれば、すぐに剣で威嚇出来るように構える。レランも、両手のナイフですきなく構える。
その頃、領主邸でワインを飲んでくつろいでいたブラドは、街の異変に気が付く。
「吾輩の眷属が、一人死んだようだ」
「まさか、日光に当たったのか? あれほど、気をつけろと言っておいたっていうのによ」
ブラドの近くに居たワーウルフキングが、味方のアホ加減にあきれる。
「どうだろうな。取り合えず、調べてもらっても良いかな?」
「分かった。おい、お前。ちょっと行って調べてこい。場所は……どこだ?」
「ギルドだ」
「ギルドだ。ギルドへ行け。そんで、何かあったら報告に戻れ」
「はっ!」
部下のワーウルフが街へと向かう。
「ここへ近づくものがあれば、報告せよ」
ブラドは、配下のジャイアントバットを外へと向かわせる。ジャイアントバットは吸血はするが吸血鬼ではないので日光で死ぬことは無い。ただ明るいところはやや苦手なだけだ。
「街の住人の暴動か? それならば、すぐに片付くと思うが」
ブラドは、まさかすでに街へ敵が入り込んでいるとは思っていない。昨日降らせた雨で、すぐにこの街へ来れるような者がいないと思っているからだ。だから、ブラドは再びワインを飲み、ソファーでくつろいでいた。




