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封印されていた最古の魔王。――外伝――  作者: 斉藤一


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ウェストサイドへ

「さあ、そろそろ出かけましょう。今日はどちらに乗ろうかしら?」


「あたしに!」


「わたしへ」


足元にはまだ水たまりが残ってはいるが、晴れているためそう時間がかからずに消えるだろう。そして、足元が何だろうが、空を飛んで移動するエリザ達には関係ない。重い荷を運ぶ商人が、車輪がはまったら嫌だなと思うだけだ。


「そうねぇ、それなら今日はレランに乗ろうかしら」


「やったぜ!」


「……なぜレランなのでしょうか?」


「なんとなくよ」


「そうですか……」


クロンも、エリザが気分ですべてを決めていることを思い出し、ドラゴンの姿に戻るのを諦める。代わりに、レランは上機嫌でドラゴンの姿に戻る。もっとも、まだ翼の無い痛々しい姿ではあるが。


だが、レランは魔法の練習をしたこともあり、今は翼があってもなくても大して変わらない精度で飛ぶことが出来るようになっているため、気にしなくなっていた。


「それじゃあ、飛ばすぜ!」


レランは、ご機嫌にスピードを上げる。その程度で振り落とされるエリザ達ではないが、いつもよりもスピードのあるレランに驚く。魔法の精度が上がったことにより、無駄なく空を飛べるようになった副産物だろうか。


天気がいいこともあり、一行は特に何も無くウェストサイド付近へと着くことが出来た。そして、レランは目立つドラゴンの姿を見られないように離れた場所で着地する。


「この辺の地面は、まだまだ濡れているわねぇ……」


「それに、何か生臭い臭いがするような気がします」


ブラドが魔法を使ったため、街の周りは一段とぬかるんでいた。泥をはねないように気をつけながらゆっくりと街へと向かう。


「後で靴を洗わないといけないわね」


「あたしたちは平気だよな、クロン」


「そうね」


レランとクロンの靴は、鱗の一部なので汚れはほとんど付着しないすぐれものと化していた。代わりに、脱ぐことも出来ないが。


マオは、こっそりと水の膜でコーティングして汚れないようにしていた。この世界の靴は、防水性に難があるため、しばらくすると水がしみこんできて気持ちが悪いからだ。ローランドの靴は金属製なので、防水性はあるが汚れた時の手入れがめんどくさい。


「魔王軍は、まだこの街に来ていないのかしら?」


「とりあえず、中へ入ってみるかい?」


ローランドは、街の門の方へと向かう。街の門には誰も並んでいないし、誰も街から出てこなかった。


「変だね、この時間帯で人の往来がとても少ないよ」


「そうなの? 何かあったのかしら」


門番は、直立不動で街の外を監視していたが、中へ入るのに特に何か調べたりも無く、むしろさっさと中へ入れと言うような態度だった。


「どこへ向かいますか?」


「とりあえず、ギルドかしら。何か情報があるかもしれないわ」


ギルドの方へ向かう時に、街の住人とすれ違ったが、どれも暗い顔をしていた。そして、エリザ達から距離を取るように、絶対に近づかないように誰かに命令されている様な動きだった。ローランドも少しその動きに不審がるも、ギルドで聞けばいいかと特に気に留めなかった。


「ここがギルドね」


中へ入ると、数人の冒険者が居るだけで、特に変わった様子は無かった。ただ、異様に静かな事以外は。


「ごめんくだ……」


ドダンッ


エリザが、ギルドのカウンターに声をかけようとした時、後ろから何かを床にたたきつけるような音がした。エリザが振り向くと、そこには一人の冒険者が転がされていた。


「どうしたのかしら?」


「この者が急に私に抱き着いてきたので、倒しました」


「あら、クロンが可愛いからかしら」


「よしてください」


エリザはくすくすと笑い、クロンは照れる。しかし、マオは怪訝な顔をする。


「我も少し見たが、クロンに抱き着いたというよりも、クロンの首に噛みつこうとしたように見えたが?」


「そうなの?」


「クロンを食おうとしたのか? 鎧があって無理だと思うぜ」


レランが、こんこんとクロンの鎧を叩く。フルアーマーに近いクロンの鎧を見て、鎧ごと噛みつこうと思うやつはいないだろうと。


「見よ、この牙を」


マオは、倒された冒険者の男の唇を靴で少し持ち上げる。そこには、鋭い牙が見える。


「こやつ、人間ではないのではないか?」


その瞬間、冒険者の男はカッと目を見開くと、今度はマオの靴に噛みつこうとする。


「おっと」


さっと足を引いたマオの足先で、ガチンと金属をかみ合わせたような危険な音がする。それに、男の見開いた眼は真っ赤に染まっていた。


すると、ぞろぞろと冒険者が集まってくる。いや、冒険者だけではなく、ギルド職員も混じっている。


「……何かしら?」


その異様な雰囲気に、エリザ達はお互い離れないように近づく。


「話を聞かせてもらっても?」


その返事の代わりに、周りのすべての人間がエリザ達に襲い掛かってきた。 



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