飛ぶ
「倒したの……ですか?」
クロンとレランは現状を把握しきれないでいた。レイス自体を体に入れることは、さっきのレイス冒険者達と同じなので、もう一度体から出てくる心配はしていない。しかし、いまエリザが行った行為はそれとはまた違う感じがしていた。レイランの魔法と気配が一瞬で消え去ったからだ。
「そうね、少なくとももう二度と私たちの前に現れることは無いでしょうね」
「そうなの……ですね」
戦闘が終わったということで、クロンとレランはやっと体の力を抜いた。レイランが最後に放った魔法は、ドラゴンにも死を届かせうる威力があったと認識しているため、自然と体に力が入っていたのだ。さらに、クロンに至っては全力で魔力を使ったため疲労感がひどかった。
「あ、ローランドの所に戻らないといけませんね。私が……いえ、まだ元の姿に戻れる時間でではありませんでした」
「そういや、あたしもここに来るのに元の姿に戻っているから今日はもう無理だな」
クロンとレランは、ドラゴンの姿に戻れない事に気が付いてしょぼくれる。そこに、マオがふと疑問を口にした。
「お主ら、その姿では飛べぬのか?」
「え? どういう事でしょうか。人間は飛べませんよね?」
「だが、お主らは人間の姿ではあるが人間ではない。ならば、ドラゴンの姿と同様に飛べるのではないか?」
「!!? 言われるまで、全く考えつきませんでした……」
「よっしゃ、あたしが試してやるよ!」
レランは、いつもどおり空を飛ぼうとしてみる。すると、人間の姿であっても飛ぶことが出来た。ただ、バランスがとりづらい為かフラフラしているが。
「飛べた!」
「それじゃあ、私も……飛べますね……」
クロンもレランをみて飛んでみる。疲れてはいるが、飛ぶ程度の事は歩くのと変わらないくらいの労力しかかからないので、無理をしている訳では無い。それに、クロンもレラン同様にふらふらとバランスが取れていない。
「これでは、ご主人様たちを運べませんね……。乗せる場所はありませんし……いえ、背負えば一人くらいなら……」
「それなら気にしなくていいわ。実は、私たちは自分で飛べるのよ」
「え……人が飛べるなんて全く聞いたことが無いのですが。いえ、魔法で無理やり飛ぶというか、吹き飛ぶ事は出来るとは知っていますが、私たちのように自由に空を飛べるというのは聞いたことがありません」
「我が実際に見せてやろう。そうだな……まずはエア・フライ」
マオは風の力で空中に浮く。速度はそれほどではないが、小回りが利くのでくるくると飛んだ。
「本当に飛んだ! マオ様すごい」
「他にもあるぞ。フレイム・フライ」
今度は、足の裏からジェット噴射の様に炎を出して飛ぶ。速度は速いが、直線に限る。
「次は、ウォーター・フライ」
今度は、水の噴射の反動で飛ぶ。プシュプシュと水の吹き出す方向を変えれば自由に向きを変えられ、速度もそれなりにあった。
「もしかして、土魔法でも飛べるんですか?」
「さすがに、土魔法では飛ぶ方法はないぞ。あとは、闇で重力を操って飛ぶこともできるが。とりあえず、お主らに合わせてエア・フライでローランドの所へ向かおう。ついでに、お主らもバランスを取りやすい様に仮の翼を生やしてやろう」
マオは、クロンとレランの背中に鳥の様な翼を生やす。ドラゴンの翼でもいいが、ドラゴンの翼はほぼ飾りなので実用的な鳥の翼だ。翼があると、クロンもレランもさっきよりも楽に飛べるようになった。
「それじゃあ、行きましょう」
エリザも、ふわりと空中に浮いて先導する。
「本当に、お二人とも飛べるんですね……。エリザ様にいたっては、何か不思議な感じがします」
「ふふっ、内緒よ。それより、人の姿で飛ぶのはこれっきりにしましょう。じゃないと、あなたたちがドラゴンの姿に戻る機会がグッと減るわよ?」
エリザの言葉に、クロンとレランはコクコクと激しく同意するのであった。




