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封印されていた最古の魔王。――外伝――  作者: 斉藤一


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奥の手

「はははははっ!」


「シューディング・アロー!」


「そんな攻撃当たらないわ」


「それならレイン・アロー」


「いくら数を増やそうと、遅すぎるわ」


巨大な蛇となったレイランは、その大きさからはあり得ないほどの速度で地面を這ってエリザの矢を躱す。エリザは、それを何回も繰り返すが攻撃が当たることは無かった。

そして、レイランの体にはコブラの様に目の模様がついていた。その目の模様が見開かれると、本物の目に変わる。


「今度はこちらの番よ。この目に魅入られたものは、先ほどとは比べ物にならない速度で石化する! 目をつぶろうと、サングラスとやらをかけようと無駄よ!」


巨大な目は、今までの蛇の数倍の威力があるうえ、物体を貫通する能力が付加されていた。

なので、この目には鏡で反射して本人を石化させるという方法は効かない。そもそも、鏡で視線を跳ね返せるのならば、鏡越しで姿を見ても石化するという事になる。

だが、レイランの予想とは裏腹に、エリザが石化する事は無かった。


「何故無事なの?!」


「さっき石化した時に、そのカラクリに気が付いたのよ。あなたが行う石化は、人の体内にある魔力を固める効果があるだけね。だから、魔力の量が多いクロンやマオには効かなかった。それは、海や湖を多少凍らせるようなものね、すべてを凍らせるには全然足りないわ。……水たまりくらいのレランは時間をかければ凍るみたいだけれど」


「ご主人様、ひどい!」


一言余計に話してレランをディスるエリザ。しかし、その例えで言えばエリザの魔力量は小さなコップ1杯くらいになるので、レイランの質問の答えにはなっていない。


「まさか、それですでに石化しているというの?!」


「違うわよ。逆に、魔力の無いものは石化しないって事よ。その視線にさらされている草や服が石化しないのが証拠よ。だから私は、自分の魔力をすべて使いきったの」


「え……魔力をすべて使いきった……?」


「エリザ様! 大丈夫ですか?!」


「ご主人様!」


それを聞いて、レイランは不可解な表情を浮かべ、レランとマオは悲痛な叫び声を上げる。この世界の生物はすべて魔力を使って動いている。なので、魔力を使いきるという事は死を意味するのだ。しかし、エリザはたとえMPが0であってもHPさえあれば死ぬことが無いためこの世界の生物とはシステムが違う。


「……魔力が無いのになぜ動けるの?」


「? 普通に動けるわよ。石化していないもの。それよりも、油断し過ぎよ」


「え……? あ――」


「パワースラッシュ!」


呆然としているレイランをクロンがぶった切る。それはレイランのコブラの目を切り、そこにあった魔石を切り裂いた。レイランはそのまま横倒しに倒れる。そして、その切り口から不健康そうで髪がぼさぼさの女性……レイランの本体が飛び出す。


「くそっ、私の姿を見せる事になるなんて! この姿を見たからには、あんたらには確実に死んでもらうわよ」


「はっ、物理的な攻撃が効かないだけだって分かってるさ。あたしのブレスなら効くのは実証済さ」


レランは練習した成果を見せるため、両手に火の玉を作り出してレイランへと投擲する。


「馬鹿なの? 私をさっきのレイスどもと一緒にしないで頂戴」


レイランの手に周囲から魔力が集まり、冷気の塊を作り出した。レランの火の玉は、その冷気の塊にぶつかると消滅する。


「私はその辺のレイスどもと違って自分で魔力を集めることが出来るわ。だからこそ、この地位にいるわけよ。だけど、あんたたちもただの冒険者達じゃ無いって分かったから私も本気を出すわ。デス・ブリザード!」


レイランは、普通の攻撃では効かないと思い、自身の本当の奥の手である死の吹雪を作り出す。この雪の形に見えるレイランの魔力に触れると体温ではなく魔力を奪う。そして、魔力の無いものが触れればその形を留める事ができなくなって塵と化す。実際に、近くにあった草は瞬く間に塵となって吹き飛ばされる。

それが、たとえ魔力の多いレランやクロンであっても、死ぬまでの時間が多少長いか短いかだけで、防ぐことは出来ない。


「エリザ! これはさすがにやばいのではないか?!」


「そうね。ここでクロンやレランを失うわけにはいかないわ。だから、私も力の一部を見せるしか無い様ね」


いままでエリザは力を抑えて楽しんでいたが、今はクロンやレランの命の危機だ。それに、エリザはレイランのことを……。


「あなた、その姿になってからすごくおいしそうな匂いがするわ。だから、いただきます」


「は?」


エリザが口を開けると、それを数百倍大きくしたような口が幻視された。その幻の様な口は、あっという間にレイランを飲み込む。


「ご馳走様」


「お主……」


マオは、苦笑いを浮かべたあとで何とも言えない顔をする。魂そのものであるレイランは、エリザからすればごちそうにしか見えないのだった。





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