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封印されていた最古の魔王。――外伝――  作者: 斉藤一


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奥の手?

「困ったわね。この半透明の冒険者達には物理的な攻撃は効きそうにないわね」


大して困った様には見えない表情でエリザは言う。物理的な攻撃は効かないが、手に魔力を纏って殴るか、魔力を含んだ武器や道具での攻撃は当たるので、対策さえしていればレイスと言えどもそこまで対応に困る敵ではない。


「あら、やだ。返しなさいよ」


エリザは、ワザとレイス冒険者にサングラスを盗られてみる。それをレイランは絶好のチャンスと見て蛇の視線を合わせた。


「やった! お前は私が直々に食べてやるから覚悟しなさい!」


「ああ……これが石化するという事なのね」


エリザは、初めての感覚に喜ぶ。普段の姿であれば、この程度の石化は自動的にキャンセルしてしまうので、石化するのは初めてである。なお、レイランはじわじわとやるつもりなので、蛇の数は最低限の1匹だ。そして、エリザを蛇で巻いて人質とする。


「あなたたちは動かないでね。動くと、すぐに壊しちゃうから」


「どちらにしろ、石化したのであれば死んだのと同じであろう?」


「いいえ? もし、大人しくしていれば、石化を解いてあげても良いわよ?」


レイランは、まったく表情を変えずに嘘を言う。レイランですら、石化を解く手段は知らないし、知っていたとしても解くつもりはない。つまり、どちらにしろレイランはエリザ達を殺すつもりであった。

クロンは、ちらちらとマオを見てどう対応すればいいのか判断を仰ぐ。クロンとしては、マオがエリザの石化を解くと思っているので、無理に突撃して壊されては大変だと思い、動かない方を選んだ。レランは半分石化しているのでどちらにしろ動けない。マオは、なぜエリザがわざと石化されたのか、理由が分からず判断できないでいた。


「まずは、武器を捨てなさい。当然、魔法を撃つような真似をしたら……分かっているわよね?」


「分かっている。クロン、ここは大人しく武器を置け」


「分かりました」


クロンの大剣はクロンの爪なので、生えてくればいくらでも作り直せる。ただ、時間はかかるので壊されたくはないと思っている。マオはフローターを地面に落とすが、こちらもいつでも操れるのであまり意味が無い。


「冒険者達、武器を回収しなさい」


「へいっ」


レイス冒険者は、レイランの言う通りにマオ達の武器を回収する。そして、レイランの元へと集めて放り投げた。


「それじゃあ、あなた達にも体を与えてあげようかしら。あの2人をあげるわ。早いもの勝ちよ?」


「へいっ!」


「なっ、騙したのか!」


レイランはレイス冒険者にマオとクロンを襲わせる。マオはとっさに魔法を撃とうと手を向けるが、エリザがマオに分かる程度の微細な動きで首を左右に振ったのでやめる。


「そう、大人しくしてなさい? エリザを殺すわよ?」


それを、レイランはエリザの為と勘違いして蛇をエリザの近くへと寄せた。そうしているうちに、レイス冒険者達はマオとレランに憑りつこうと殺到する。


「ぐぅぅ」


「がっ」


レイス冒険者達は、一番体内に入りやすそうな口を狙う。体は魔力の塊なので、憑依しようと思ったら、相手の体内に入るのが一番だ。そして、体内に入った後、相手の脳を支配して自由に動かせるようになる。ただ、魔力の塊な分だけ多少は質量があるので、入られる方は微妙に苦しい。そして、クロンとマオの体内に複数のレイス冒険者達が入り込むのを見て、レイランは勝ちを確信しほほ笑んだ。


「レイラン……これで満足かしら?」


「ええ、満足よ。復讐を果たしたし、強力な部下も手に入るし、いいことづくめだわ。やはり、人生はこうでなくちゃ面白くないわね」


「……ちなみに、あなたに奥の手は無いの?」


「奥の手? 見せる機会はもうないだろうけど、当然あるわよ。ただ、自分自身のエネルギーを使うから、めったに使わない本当の奥の手だけれど。それがどうしたのかしら? 冥途の土産にも、見せては上げられないわよ?」


「あるのならいいのよ。マオ、クロン、もういいわよ」


「我の肉体はユグドラシルだと伝えたはずなのだがな」


「ぎゃあああ!」


マオは、体内に入り込んだレイス冒険者達を魔力で押しつぶす。そもそも、ユグドラシルに憑依自体不可能なため、マオを選んだレイス冒険者達は初めから詰んでいた。


「があぁっ!」


「ぎゃあああ!」


クロンは、ブレスを吐く要領で体内のレイス冒険者達を吐き出し、そのまま本当にブレスを吐いてレイス冒険者達を消滅させた。単純な魔力であるクロンのブレスは、レイス達にとっては一番ダメージが大きい攻撃だったのだ。


「大人しくしていなさいって言ったわよ! エリザがどうなってもいいの?」


「ああっ!」


レイランは、まだ石化していないエリザの首筋に蛇を噛ませる。それ以上動くなら、首の動脈と噛み切らせるという脅しだ。


「エリザがもういいと言ったのだ。お主が何をしようと、もはや無駄だ。アンチ・ストーン」


マオはエリザの石化を解く。エリザは即座に首に噛みついている蛇を握りつぶすと、ついでにマオの方向を見ていた全てのレイランの頭の蛇を、短刀で切り裂く。その後、距離を取った。


「ギャッ、痛いじゃない! それに、まさか石化を解く方法があったなんて!」


「あの……マオ様、あたしの石化も解いてもらえませんか?」


「アンチ・ストーン」


「ありがとうございます」


すでに半分以上石化したため、レイランから放置されていたレランは、やっと石化を解かれて動けるようになった。


「形勢逆転ね。さあ、蛇もすべて潰したし、奥の手を見せてもらおうかしら?」


「……? 馬鹿な娘、追撃すれば少なくともこの体を破壊する事が出来たでしょうに」


「その頭で、何が出来るというの?」


エリザはすでに蛇の居なくなったレイランの頭部を指す。さすがに、視線を合わせる蛇が居なければ石化させることは出来ない。


「ただのメデューサなら何もできないでしょうね。けれど、私が改造したこの体なら別よ!」


レイランがそう言うと、レイランの体自身が大きな蛇と化すのだった。


 

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