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封印されていた最古の魔王。――外伝――  作者: 斉藤一


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出発

「そろそろ寝なさい」


「はい」


クロンとレランが行っていた練習を止める。


「やっぱり、もう一度汗を流してから寝てちょうだい」


「はい……」


クロンとレランは、自分の体が埃だらけ、ススだらけなのに気が付いた。つまり、一度風呂に入ったにも関わらず、再び汚れたのだ。宿屋と違って、別に汚れていたからと言って誰かに怒られるわけではないが、習慣と言うのは大事である。普段からその動きをしていないと、本当に宿屋に泊まる時も汚れたままでベッドに入りかねない。ちなみに、土魔法で作ったベッド代わりの土は多少柔らかいものだが、掛布団は無い。まあ、誰も風邪をひくような軟弱な体をしていないのだから。

ついでに、レランは水が苦手なので風呂が嫌いだ。というよりも、濡れるのが嫌いだ。雨の日には戦闘力が下がるくらいに。クロンの方は苦手な天気は無く寒さにも強い。


「入ってきました」


「それじゃあ、寝るわよ」


クロンとレランがきちんと汚れを落としたことを確認してから眠る。1日1回、夜に寝るのも人間の真似の練習だ。本当は、クロンは夜の方が暗闇に紛れて強いくらいなのだが、今は皆に合わせている。


「おはようございます」


朝になり、作った建物もマオが片付ける。


「さて、今日はどちらが飛んでもらおうかしら?」


「あた――」


「私が飛びます」


レランにかぶせるようにクロンが発言する。


「レランは昨日飛んだじゃない。だから、今日は私の番」


「うぅ、分かったよ」


レランはドラゴンの姿に戻りたいという理由で、クロンはエリザの役に立ちたいという理由でそれぞれ立候補している。


「それじゃあ、今日はクロンね。人化の呪い解除」


クロンがブラックドラゴンの姿に戻る。気のせいか、いつもよりも鱗に艶があるように見える。まあ、これから土足で背中が汚れるのだが。レランがそれを見て気持ち程度、足裏を綺麗にする。マオは、降りた後で水で綺麗に流してやろうと心に留める。


「クロン、急いでいく必要は無いわ。なんなら、他に寄り道してもいいくらいよ」


「どうしてですか?」


「そんな気がするのよ。それに、あまり早く着いてもローランドがついて来れないわ」


確認したからとは言えないので、誤魔化す。しかし、クロンはエリザ達を乗せて飛べる時間が長くなるので文句はない。レランはうらやましそうな顔になったが。


「それでは、少し南側にそれる形で飛んでいきます」


「分かったわ」


真っすぐに飛べば王都にぶつかるので、北か南に少しずれて飛んだ方が問題は少なくなる。そして、北側は魔王領に近いので、何となく南側を選んだ形だ。

クロンは翼を羽ばたく格好だけすると、垂直に飛び立つ。そして、南に向けて進むのだった。


その頃、ローランドはイーストサイドの街を救った英雄として街を上げて歓迎されていた。


「私は、急ぎの用事が……」


「いえ、ここで英雄様をもてなさなかったと知られたら、我々が何と言われるか!」


「英雄様、私の子供に名前を付けていただけませんか!」


「英雄様、握手をお願いします!」


「英雄様!」


「あはは……」


ローランドから乾いた笑いが出る。ギルドに報告後、ギルドマスターに連れられて領主の元へ。そして、その流れで宴が開かれた。街に被害がなかったので、その被害額を考えれば宴を盛大に開いたとしても損失は少ない。何より、戦いが終わったと住民に知れ渡り、気分転換にもなる。

そして、ギルドからの褒賞と領主からの褒賞で結構な額のお金が入った。ローランドは、そのほとんどをエリザ達に渡すつもりであるが、とりあえず馬を買うお金は必要だ。


ローランドは、どうにか数日続く予定の宴を1日だけ出席するという事で乗り切り、イーストサイドの街一番の馬を無料で受け取ることが出来た事は僥倖であった。その馬は肌が赤色に近く、真っ白なローランドの鎧には目立ち過ぎる感じだが。


ローランドは、イーストサイドの街の住民から盛大に見送られ、門を後にした。

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