致命傷
「ぼくは……ぼくは、吸収した家族の為にも負けないのだ!」
矢が抜けず、ブレイクショットによって動けないフレディ。しかし、動けないだけで何もできないわけではなかった。フレディの体が徐々に小さくなっていき、色も段々と薄いピンク色から茶色、黒色へと変わっていく。そして、3メートルくらいの大きさまで縮むころには、エリザの矢が抜け、真っ黒な体へと変わっていた。ただ、その体には赤く光る細い血管の様なものが張り巡らされていた。それは、体内の密度を上げ過ぎたため、体内に納めておけない魔力を通す筋が体表に現れたものだった。
「まだ続けるのね」
「当たり前なのだ。どちらにしろ、ぼくには退却という手段は無いのだ!」
一応、退却して再び魔物軍団を作り直すということは出来るが、それは今吸収した魔物たちを無駄死にさせたという事であり、フレディにとっては看過できないものであった。何より、今の自分が負けるとは思えなかったからだ。
「小さくなったからと言って、私の矢が外れる事は無いわよ?」
「そんな事、言われなくても分かっているのだ!」
巨大だったフレディは、デメリットとしてどこを狙われても当たる代わりに、メリットとして一撃の重さがあった。そのため、エリザに行動不能にさせられると何もできなかった。今の小さな体なら、回避率が上がったという事もあるが、元々近接戦闘等は得意ではないため、正確無比なエリザの矢を回避できるとは思っていない。その代わりに、密度を上げたのだから。
フレディは、エリザにつかみかかろうと、突進する。しかし、その程度の動きで捕まるエリザではない。
「ピアシング・アロー!」
ブレイクショットではもうフレディの体に刺さることは無いと判断して、貫通力のある矢を放つ。
「無駄なのだ! その矢の威力はもう分かっているのだ!」
フレディは、矢のあたる場所の密度をさらに上げ、矢をそこで受ける。
「うわああぁ!」
フレディは、矢の威力に押されて吹き飛ばされて転がる。しかし、その肌には傷が無かった。単純に、威力のみを受けた形だ。
「ふーん、面白いわね」
「今の大きさなら、私の技が通るかな? 月光刃!」
倒れたフレディの隙を突いて、ローランドが止めをさそうと必殺技を放つ。倒れている相手への攻撃は卑怯と思われるかもしれないが、実戦でそんな余裕を見せるやつはいない。しかし、月光刃はフレディの体の左右の地面を切り裂いただけで、フレディの体には傷一つなかった。つまり、今のフレディの皮膚は、ドラゴンの鱗よりも硬いということだ。
「そ、そんな馬鹿な!」
「パワー・スラッシュ!」
再び地面にたたきつけられたフレディに、今度はクロンが追撃する。その一撃は、正確に腕の関節部分を捕らえた。が、それすらもガキンッと硬質な音を立てて切り裂けない。それどころか、フレディにそのまま腕を曲げられて剣を掴まれる。
「うああぁぁ!」
「うぐっ!」
技術も何もない、ただの力を込めただけのフレディのパンチが、クロンのわき腹に当たる。ドラゴンの鱗と同等の硬さを誇るクロンの鎧に、ひび割れが出来るほどの衝撃を受けてクロンが吹き飛ばされる。
「がはっ!」
衝撃であばら骨が折れたのか、クロンは血を吐く。それを見て、レランはフレディへの追撃を思いとどまる。クロンよりも攻撃力の低いレランでは、ダメージを与えられないし、もしクロンが受けた攻撃と同じものを同じ場所へ食らうと、その部分に鎧の無いレランではクロンよりもひどいダメージを受ける可能性が高いと思ったからだ。
「ミドル・ヒール」
「マオ様、ありがとうございます」
マオは、致命傷になっては不味いと骨折を治す。ドラゴンの体力なら、人間と違ってまだ耐えられる可能性もあるが、わざわざ重傷の状態にしておく必要はない。レランはそれを見て、ほっと安心する。その間に、フレディは立ち上がり、さらに体を変化させる。
「ぼくは、負けないのだ!」
フレディの下半身が6脚になる。わざわざ2足で戦う必要は無いと思い、スピードを上げる事にしたのだ。そして、実際にその速度は人間の速度を上回る。
「は、早い!」
フレディは、足の変化と共に腕も槍の様に尖らせていた。そして、速度を上げたままローランドに向かって突進する。そして、そのスピードはローランドの回避を超えていた。つまり、その尖った腕はローランドの心臓を捕らえる。
「危ないわ!」
エリザは、とっさにローランドを突き飛ばし、フレディの射線から押し出す。そして、その代わりにフレディの尖った腕はエリザの細い体を貫くのだった。




