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封印されていた最古の魔王。――外伝――  作者: 斉藤一


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四天王フレディ

エリザ達がちょっと街で補給を行い、城門前に向かうとすでにローランドが待っていた。


「あら、早かったのね」


「美女を待たせる訳には行かないからね」


ローランドの目はエリザのみに向けられている。マオ達はまったくローランドに興味が無いため別に構わないのだが。


「それじゃあ、もう少し離れた場所から出発しましょうか」


飛び立っても目立たない場所へと移動する。もし、城壁の上から監視をしている者が居れば気が付くかもしれないが、そこまでエリザ達は気にしない。


「クロンは今日はもう飛べないから、レランに運んでもらおうかしら?」


エリザは、それともクロンの人化の解除に1日に1回の制限なんて無い事をそろそろ教えようかと迷う。


「あたしですか? でも、翼がまだ治っていないのでうまく飛べませんよ」


「マオに翼を治してもらうのよ。でも、人型になった時のレランの装備が変わってしまうから、また翼を斬り落とすけれど」


「うっ、それは嫌ですけど……。それなら、がんばって翼無しで飛びますよ」


翼は飾りとまでは言わないが、船で言えば翼は舵の様なものなので飛ぶだけなら魔法で飛べる。なので、レランはがんばって魔法で調整しなが飛ぼうと考えた。


「それじゃあ、レランの人化の解除」


エリザはレランの人化を解除する。翼が無く、爪も短いレランのドラゴン姿はやはりドラゴンとしては情けない姿だ。それでも、どちらの姿が良いかと言われれば、人の姿よりはドラゴンの姿の方をレランは選ぶ。


「ぐおぅ」


「さあ、乗りましょう」


「それじゃあ、失礼するよ」


エリザ達はレランの背中へと登る。レランは、少しふらつきながらも上空へと飛ぶ。少しマオが風魔法で補助しながら、高空よりイーストサイドへと向かった。


実は、イーストサイドへ向かう道では魔王軍に着いた冒険者が、イーストサイドへ向かう者がいれば襲う様に命令されていたため待機している。そのランクはCランク以上なので王都に残っているどのパーティだろうがイーストサイドへたどり着くことは出来ない。実際、イーストサイドから王都へ向かう早馬は仕留められていた。ただ、鳥による手紙の配達は邪魔できなかったので情報自体は王都へと伝わってしまったが。複数の手段で情報を伝えるのは常識である。


「……何か、イベントを逃したような気がするわ」


「別に、構わないのではないか? これから行く街でも何かあるだろう」


「そうね」


エリザは、盗賊(元冒険者)との遭遇イベントを逃した事を感じていた。だが、マオの言う通り向かう先でもっと大きなイベントがあるだろうと気にしない事にした。待ち伏せする元冒険者達は、いつまでも誰も来ない道で待ち続ける事になるが、命拾いはしていた。


「それほど時間がかからずに到着できそうね」


「本来なら、そんなに早く着くことは出来ないんだけどね……」


王都からイーストサイドまでは、東京から九州くらいの距離があるが、レランの速度でも数時間もあれば着く。飛行機ほど早くはないが、新幹線くらいは早いので。なので、休憩も無しで飛行し、あっという間にイーストサイドの街が見えてくる。


「城壁は、王都ほど高くはないけれど、機能はしているようね」


城壁の周りに黒い粒が集まっている。それが魔物の大群であることは理解できた。街から逃げ出せない様に周りを囲んでいるが、やはりすべてに同様の戦力を置くことができず、門の一つに多く集めざるを得ない。そして今、人型の魔物たちが門に丸太をぶつけてこじあけようとしている。


「絶対に門を破らせるな! 矢と魔法を放て!」


指揮官らしきものが兵士に命令する。兵士たちは、命令に従い矢と魔法を撃つが、破城槌の役割をしている魔物を、盾を持った魔物が守る。

魔物側にも司令官が居た。四天王の一人であるフレディである。フレディは、魔物使いとして四天王の一人になったが、個人の戦闘力は低いため四天王最弱である。しかし、魔物を使役さえすれば、多対多においてその働きは他の四天王よりも遥かに優秀である。


「僕の強さを知らしめるのだ! もう誰にも四天王最弱なんて言わせないぞ!」


フレディは知らないが、すでにドラグルが墜ちているため四天王はすでに3人で、そのうちレイランも負傷の為戦線を引いている。なので、今は四天王の第二位に位置していた。だが、その情報はまだどこへも知らされていないため、魔王ですら知らない。


「オーク弓兵、壁の上へ撃て。ゴブリン兵はオーク弓兵を守れ。オーガはそのまま門を破壊するのだ!」


フレディは的確に人型の魔物を使ってイーストサイドを攻略する。イーストサイドは王都よりも遠いため、王都よりも1週間遅れで攻略に入った。なので、戦闘は始まったばかりだ。


「オークメイジ、火魔法を街の中へ撃ち込め。ゴブリンリーダーは火炎瓶を使って他の門へ火をつけに行くのだ」


火を使い、燃やせるところを燃やすことで相手に対応させる。街としても、火を使われては放っておくことはできない。普通は占領した後のことを考えれば、出来る限り建物などはそのまま残っている方がいいのであるが、魔王軍の目的は領地の拡大だけなので、イーストサイドを落とせればそれでいい。


「門がそろそろ開くのだ。オーク兵、ゴブリン兵、オーガ兵、突撃陣形!」


門の開放と共に、なだれ込むつもりで陣形を組む。必然的に、門の方へと戦力が固まる。そして、固まったオーク、ゴブリン、オーガに空から火球が降ってきて吹き飛ばされる。


「な、何が起きたのだ!」


フレディも、とっさの事に何が起こったのか分からず、陣形を立て直す事が出来ない。命令が無いため、ゴブリンはちりじりに逃げ出し、オークは走り出してそのゴブリンを踏みつぶす。


「薙ぎ払え!」


その声と共に、再び火球が飛び、門を破壊しようとしていたオーガ達を焼き殺す。


「もういいわ。お疲れ様、レラン」


「ぎゃお」


フレディの近くに、翼の無いドラゴンが降りたつ。その赤い体躯は、見間違えようもなくレッドドラゴンだ。フレディはすぐに今の火球がこのドラゴンによる攻撃だと理解する。そして、その背から複数の人間が降りてきたのが見える。


「き、貴様ら! これは四天王である僕への攻撃だと理解しているのだ?!」


「当たり前よ。私達は、依頼を受けてイーストサイドを助けに来たただの冒険者だもの」


「ただの冒険者?」


一体、どこの世界にただの冒険者がドラゴンを使役できるというのか。それよりも、今はドラゴンをどうするべきかと思案する。四天王の一人であるドラグルならば、ドラゴンとも戦える。しかし、同じ四天王の一人でもフレディでは無理だと分かっている。その代わりに、数の暴力を使っているのだから。そして、フレディが迷っている間に、ドラゴンが一人の少女へと姿を変えた。


「な、なんだ。僕を驚かせるなんて。単なる幻覚だったのだな」


フレディは、幻覚魔法を使って冒険者の一人をドラゴンの姿に見せ、単なる火魔法をドラゴンブレスに見せかけたのだと判断した。しかし、何かの事情で幻覚が解け、その事実がばれてしまったのだと。


「僕の邪魔をした事を後悔するといいのだ。ゴブリンアーチャー、射殺してしまうのだ!」


フレディは自身の声に魔力を乗せ、ゴブリンアーチャーに命令する。魔物使いであるフレディは、魔力を乗せた命令によって魔物の能力を引き上げることが出来るとともに、冷静にさせる効果もある。火球によってばらばらな動きをしていた魔物たちが、再び統率の取れた動きをし始めた。





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