最終形態
ドラグルの大剣が、頭突きと共にクロンへと降りかかる。
「ぐうぅっ」
クロンは、それを何とか自身の剣の腹で受ける。しかし、重さや力はそのまま伝わる為、クロンの体が半分地面にめり込む。ドラグルは、尚も力を込めていく。他の首は、エリザとマオが破壊し、再生し、反撃しを繰り返しているためクロンを攻撃する余裕は無かった。そして、頑丈な竜鱗の剣にひびが入る。ドラグルの大剣も、ドラゴンの竜鱗から削られて作られた逸品なので、大剣の方は壊れる様子もない。
「ああっ!」
とうとうクロンの剣が割れ、そのままドラグルの大剣がクロンの胸を貫こうとする。
「させるかぁ!」
レランが、自分のナイフをドラグルに投げる。運よく、そのナイフはドラグルの目に突き刺さる。突き刺さったままでは目が再生しないドラグルの攻撃は、照準がずれてクロンのわき腹をかすめるだけになった。クロンは、わき腹の痛みを我慢して、転がって抜け出す。
「レラン、助かった」
「ふん、ライバルが居なくなったら寂しくなると思っただけさ」
レランは、照れ隠しにそっぽを向く。そして、邪魔をされたドラグルの標的はレランへと変わる。
「グルギャオオオ!」
「うあっ!」
ドラグルの雷ブレスが再びレランを撃つ。レランはまたしも回避する事ができず、麻痺して地面へと転がる。そして、ドラグルは止めをさそうと足を振り下ろす。
「さすがにそれはダメよ。ピアシング・アロー」
エリザがそのドラグルの足を弓矢で穿つ。ドラグルの足に大穴を開け、さらに衝撃でドラグルがよろける。
「パワー・スラッシュ!」
その隙に、クロンは折れた剣で尻尾を切り裂く。魔石を含んだ部分は尻尾の先端に近かったため、短いクロンの剣でも切り離す事が出来た。
「ギャアアア!」
咆哮と違った叫び声を上げるドラグル。そして、尻尾は再生する事が無かった。ズシンと大きな音を立ててドラグルの体が横たわる。
「倒した……?」
「あ、それフラグよ」
クロンがテンプレ的に呟いた一言は、大体倒していない時に発せられる一言である。そして、ドラグルから切り離された魔石は、逆に尻尾部分が本体として再生を始めた。ただ、今度は体がヒドラではなく、半分ドラゴンの様な体だった。首は長いが顔はドラグル、翼が生えたが小さくて飛べ無さそう、足は太いが腕は人間のままだった。
「グルアアアアッ!」
「不気味な姿に成ったわね……」
人にもドラゴンにも見えないその姿は異様の一言だった。ドラグルは、横たわるヒドラだった体から大剣を抜き、構える。姿が変わり、本能だけで動く事になっても、剣士の動きが体に染みついていたからだ。
「切り離しもダメなら、やはり魔石を破壊するしかないか」
「済みません、私があの時、切り離しじゃなくて魔石の破壊を選んでいれば……」
クロンは、とっさに尻尾を切ったが、今思えばそのまま魔石を斬れば良かったのだと気が付いた。しかし、あの時はその考えが浮かばなかったのだから仕方がない。
「別にいいわよ。ボスはやっぱり変身するものだしね。第三形態ドラグルかしら?」
竜人の姿が第一形態、ヒドラが第二形態なら、半竜の姿は第三形態になるのだろうが、望んだ変身ではないためそう呼んでいいかどうかは微妙である。
ドラグルは、自分の体にとっては短すぎる大剣を振り回す。その太刀筋は、まったく剣士のそれではなかった。体が変化したのだから仕方がないが、赤ん坊が癇癪を起して暴れているのと変わらない動きだ。
「……変身したのに、弱くなったのかしら」
「仕方あるまい、別に自ら変身したわけでは無さそうだからな」
「はぁ、はぁ、あたしはもう戦えません……」
レランは、何とかヒドラの目から自分のナイフを取り戻したが、体の痺れが取れず、戦闘の継続は難しくなっていた。クロンの方も、肝心の武器が半分に折れてしまった上に、今もわき腹からの出血が止まらないため、激しい動きは出来ない。
「そうねぇ……それなら、レランの呪いを解除しましょうか」
「いいのですか!?」
レランは、元の姿に戻れることを喜ぶ。
「いいわよ。その代わり、きちんとあいつを倒すのよ」
「もちろんです。ドラゴンの姿なら、あんなのに負けるあたしじゃありませんから」
「それじゃあ、頭を寄せて。人化の呪い解除」
レランを紫の魔力が覆い、ドラゴンの姿へと戻す。ただ、翼は無く、爪は斬られたままだが。
「ギャオオー!」
レランは、口に魔力を集め、剣を振り回すドラグルに照準を合わせる。ドラグルは魔力の集まりを本能的に感じて、同じく口に魔力を集める。レランは、その見様見真似のドラゴンブレスに失笑しそうになったが、ブレスの前に口を開くわけにはいかないため我慢する。そして、同時にブレスを吐いた。
大きな火球のレランのブレスに対し、ドラグルは黒い毒の様なブレスだった。そして、黒い毒の様なブレスは、レランの火球の勢いを止める事は出来ず、ドラグルは火球を受けて大爆発する。その時に、魔石も破壊された為、ドラグルが再び蘇る事は無かった。




