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封印されていた最古の魔王。――外伝――  作者: 斉藤一


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弱点

レイランが放心している完全な隙を突いてレランが攻撃しようとする。


「レラン、待って」


「はい、ご主人様」


レランはすぐに攻撃を止める。今のうちに倒せばいいのにと思ってはいるが、勝手な行動をすると後が怖い。レイランよりもエリザの方が100倍は怖いのだ。


「ねぇ、あなた。もう無いの?」


「え?」


レイランは話しかけられたため、意識が現実へと戻る。


「あなたも四天王という立場なら、奥の手の一つや二つあるんじゃないの?」


「えっと、もう出しましたが……」


レイランにとって、ドラグルが切り札で、テンペストが奥の手だ。もともと、出し惜しみするタイプではなく、研究結果を自慢したいと思っていたため、ピンチになる前からドラグルを出していた。ただ、それらも打ち破られただけだ。


「あの風魔法は面白かったけど、それだけね。そっちの四天王は、元々私が倒したやつだから新鮮味が無いわね」


「あなたが倒した……」


レイランは、ここにきてやっと勝ち目のない戦いだと気が付かされた。どう見ても一撃で倒されたとしか判断できないドラグルの死体。そして、今も全く四天王である自分たちを歯牙にもかけない強さ。レイランは、とうとう膝をついて座り込む。ドラグルも、新たな命令が無ければどう動いていいか判断できなくなっていた。


「ふ……ふふっ、ふふふふふっ。こうなったら、最終手段よ」


「なによ、やっぱりあるんじゃないの、奥の手」


「これを使ったら終わりよ。あーあ、結果を知りたかったんだけどなぁ。どうせ死ぬなら、あんたたちを巻き込まないと、死んでも死にきれないし。ドラグル、融合」


「あ……ああ、ぐがあぁぁぁぁ!」


レイランが融合といった瞬間、ドラグルの体が膨れ上がる。首が5つに増え、伸びる。体が大きくなり、象の様な体に。そして、持っていた大剣の柄が中央の頭に刺さり、角の様になった。


「ヒドラと竜人の融合よ。こうなったらもう、魔石の魔力が無くなるまで止まることは無いわ。無限の再生とパワーを思い知りなさい。あははっ、あはははは――」


レイランは、高笑いをしている途中にドラグルによって踏みつぶされた。ドラグルにはもう、知能は無く、ただ目に映るものすべてを破壊する本能しかなくなっていた。しかし、レイランはこうなることを最初から分かったうえで融合を行っているので、本望と言えば本望である。


「ギャオオオ」


「レラン!」


ドラグルの首の一つから、高圧の水が吐き出される。近くに居たレランが、その水圧で数十メートル吹き飛ばされる。鎧部分に当たったので吹き飛ばされるだけで済んだが、普通の人間であれば体に大穴が開いているところだ。

そして、他の首がそれぞれエリザ、マオ、クロンにも攻撃を始める。エリザには火炎放射器の様な炎が、マオには大量の石つぶてが、クロンにはテンペストを圧縮したような細い竜巻が襲う。


「よっと。それぞれ別の属性のブレスを使うなんて……うん、普通ね」


「エア・シールド。普通なのか? 我らはともかく、あやつらにとっては危険かもしれんぞ」


エリザは難なく避け、マオは風のバリアで防ぐ。クロンは剣でガードしたが、それごと吹き飛ばされ地面を転がる。


「炎、水、土、風で……真ん中は何かしら?」


「あたしが倒してやる!」


水で吹き飛ばされたレランが、怒ってドラグルに向かう。火竜だけあって水が嫌いだったのだ。だが、角のある首が口を開けた瞬間、レランの突進が止まる。


「ぎゃっ!」


「なるほど、真ん中は雷ね」


その攻撃スピードは、回避する暇がない程で、口を開けた瞬間にはもうレランが感電していた。特に、水にぬれているレランには効果が抜群だったようで、ピクピクと痺れている。死んではいないが、このまま他のブレスを食らったら終わりだろう。


「レラン! ここは私が。パワースラッシュで!」


クロンが、他属性ブレスを回避しながらパワースラッシュを決めようと近づくが、レランと同様、真ん中の角ありの雷ブレスを食らって倒される。来るのが分かっていても、防御も回避も不可能だったのだ。


「あの子達じゃダメみたいね。マオがやる? 私が援護するわ」


「援護するなら、あやつらが突っ込む前にやればよかったのでは」


エリザは聞こえないふりをして、矢を放つ。その矢は正確に土のブレスを吐いていた首を吹き飛ばす。しかし、次の瞬間、首の付け根がぼこぼこと泡立ち、新しい首が生えてきた。


「再生力が上がっているようね。これじゃあ、さっき援護していても一緒だったわね」


「それなら、同時に破壊するならどうだ? エア・スラスト」


マオは、フローターで同時に4属性の魔法を放つ。そして、自らは風魔法を放った。炎の首には水魔法を、水の首には雷魔法を、雷の首には風魔法を、風の首には火魔法を、土の首には水魔法を放つ。首ごとに特に弱点とかは無いので、属性を分けた意味はないが、マオの気分的に分けたかったのである。そして、魔法を受けてすべての首が破壊されたが、さっきと同様にすぐにボコボコと再生する。


「うーん、こういう場合は再生が間に合わないほど何度も攻撃するか、どこかにある魔石を破壊しないとダメかしら?」


「魔石の位置が分からぬから、あやつの魔力が切れるまで攻撃するしか無いだろう」


ドラグルは、そう何度も首を破壊されてはたまらないと、激しく攻撃する。しかし、回避不能な攻撃速度を誇る雷のブレスが、エリザには躱され、マオには当たらなかった。エリザは攻撃のタイミングを計っての回避で、マオは自身の前に風の層を作り、雷の通り道を誘導していたのだ。


「魔石を探した方が早いかもしれぬな」


もう、何度首を破壊したか分からないほど攻撃をしていたが、一向に再生速度が落ちる様子は無い。さすがに、無限に再生できるという事は無いだろうが、時間がかかりすぎる。そして、完全に日が落ちて辺りが暗くなってきた。


「マオ様、尻尾、尻尾です!」


倒れていたクロンが、ドラグルの尻尾に光るものがあると気が付いた。微かな発光ではあったが、暗くなったために分かるようになったのだ。そして、その弱点を教えたことに腹が立ったのか、ドラグルは自身の角……大剣を頭突きの様にしてクロンへと攻撃した。





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