村の調査
クエストの受注と共に、受付嬢より情報が貰えた。
「やみくもに調査するのは非効率だと思いますので、ギルドからもいくつか情報を渡しますね」
ギルドとしても、いくつか目的地の様なものを設定してある。もちろん、王都から遠い程、危険度があがると思われる。そして、その中からエリザ達は最も危険であるだろう、魔物の大群の通り道にあった村の調査を選んだ。
「ギルドでは、恐らくそこにはもう村人は居ないと判断しています。逃げて生き延びていれば良いのですが、王都へは誰一人辿り着いていないので……」
もし生きていれば、誰か一人くらい報告に来たであろうと。それに、逃げるにしても王都よりも安全な場所は無い。魔物が来た方角以外に逃げても、森か平野しかないのだ。平野はすぐに見つかるし、森には他の魔物が居るので、逃げて生き延びている可能性は低いと判断されたため、救助隊は結成されていない。
「ただ、現状がどうなっているのか分かりません。ですので、現状の報告をお願いします」
ギルドとしては、良くて無人、悪くて魔物の住処になっていると予想している。もし、魔物の住処になっていれば危険であり、そのため情報が重要だと考えている。
「分かったわ。行きましょう」
エリザは、その危険度が分かったうえでも尚、気にしていない。なぜなら、王都を襲った魔物の大群よりも危険度が高いはずが無いからだ。それに、ギルド職員は知らないが、それを蹴散らしたブラックドラゴンのクロンも居るし、そもそもエリザとマオだけでも十分に戦える。
エリザ達は、遠出の準備が要らないのでそのまま王都を出る。破壊された門の方から出ると、まあまあ片付いているのが分かった。門は応急処置がされて通れるようになっていたし、破壊された城壁も組みなおされている途中だった。破壊したクロンは、気まずそうに顔を背けたが、それについては誰かが何かを言う事は無かった。
「王都から馬車で1日くらいの距離ねぇ。飛んでいくほどでは無いし、そもそも今日はもうクロンに乗れないわね」
クロンが人化してからまだ半日も経っていない。仮に飛んだとしても1時間もかからずに村についてしまい、クロンとしても微妙な気持ちになるだろう。さらに、目立ち過ぎるため多用は出来ない。
「少し、走りましょう。いいわね?」
エリザは確認というか、決定事項を伝える。100キロ以上ある距離を、だらだら歩いていては日が暮れるどころか何日もかかってしまう。エリザとしては、移動に時間をかけたくないのだ。それに、ここに居るメンバーは普通ではないので、普通に移動する必要もない。
そして、エリザ達は誰も見ていないことを確認してから走り出す。常人の数倍の速度で走り、数時間で問題の村へと着いく。
「破壊された跡があるわね。それに、静かすぎるわ」
村にある家はどれも、壁や扉が破壊されていた。魔物が住民を襲ったのだと分かる。今は、その魔物すらいない。ギルドが心配していた、新たな魔物の巣になっているという事はなかった。
「マオ、どう?」
「ソナー。動いている者の反応は無いな。だが、かすかに魔力を感じる」
「つまり、何も無いわけじゃ無いって事ね」
エリザとしても、村は無人で何もありませんでした、では面白くない。それに、すべてを魔法で調べても面白くないので、マオの調査を早々に打ち切る。
「実際に、村に入って調べましょう」
まずは村の中心に向かう。家はやはりどれも壁や扉が破壊されていて、そこから中を覗いてみても人の気配は一切なかった。だが、中心に向かうにつれて変化がある。
「魔物に食われた死体があるわね」
村人は、魔物の大群に包囲され、逃げることが出来ずに、村の中央へ逃げてきたのだろうか。中心へ向かうほど死体が多くなっていく。どれも、魔物のエサになったからか、死体の損壊がひどく、常人であれば注視など不可能なほどだ。だが、常人ではない4人は平気で死体も調べる。
「変ね。襲撃から数日は経っているはずなのに、死体が腐っていないわ」
死体にたかるハエも居なければ、腐敗臭もしない。お化け屋敷の様に、そこに転がっているのがただの死体風のマネキンである感じだ。だが、死体は本物で、マネキンではない。腐敗臭はしないが、血の匂いはある。ただ、血はすでに固まっているからか、そこまでひどく臭う事は無い。
中央にある、村長の家と思われる場所に着いた。村人は、そこへ集まろうとしたのか、村長の家を中心にして死体が積み上がっている。
「ご主人様、あの家に入りますか?」
一応、クロンがエリザに確認する。
「気を付けた方がいいぞ、魔力反応があるのはあそこだ」
マオが初めに調べた時にあった魔力反応が村長の家から発せられていた。
「調べましょう。一応、いつでも動ける準備はしておいてね」
エリザはレランの方を見てそう言う。この中で一番弱いのがレランだからだ。レランがきちんと戦闘準備をととのえたのを見て、クロンは村長の家の扉を開ける。何故か、村長の家だけ壁も扉も破壊されていなかった。いや、修繕されたのだろうか。
「誰か居るのかしら?」
扉からは、奥まで見通せない。散らかった屋内は、すでに住人が逃げ出し無人であることを現している。慎重に家の中に入り、奥へと向かう。そして、寝室であると思われる場所に、一つの少女の死体が布団の上に寝かせられていた。その死体は、きちんとワンピースの様な服を着ている。見える素肌は、何か所も縫われてはいるが、怪我をしているようには見えない。
「誰?」
その死体から声が発せられたと同時に、上半身が起きる。
「ふあーあ、もう夕方ね。そろそろ起きる時間だったから、丁度良かったわ」
「平気なのか? あんた、ここで何があったんだ?」
レランは、少女に尋ねる。しかし、どう見てもその少女の顔は青白く、生気を感じない。何より、顔に斜めに縫われた跡がある。もし、そんな傷を負えば生きてはいないだろう。
「それはこっちのセリフよ。私の家に何の用?」
「私達は、この村を調査しに来たのよ。村の惨状を見る限り、魔物の襲撃に遭ったのは間違いないはずよね? なぜあなたはここに居るのかしら?」
「私が住むのに丁度よかったからよ。実験材料も山ほどあるし。それに誰も近寄らないはずだったのよ」
少女が立ち上がる。それと同時に、家の外でも誰かが動く気配がいくつもした。




