依頼達成報告
クロンは目立たないように王都手前の森で着陸する。王都には、クロンのブラックドラゴン姿を知っているものも居るが、大半の者は知らないため、余計な混乱を招かないための心づかいだ。なお、着陸した森から王都までは数キロほどある。
「さすがクロン様、あたしよりも飛ぶのが早いですね!」
「当たり前」
「うぅ、ワシは空を慣れたというとったが嘘じゃった……。まさか、最初に向かった時は手加減したスピードだったとは……。拘束魔法ありがとな、マオ」
「気にするな、依頼人が落ちたら困るからな」
「レランの冒険者証も作って貰わないといけないわねぇ。まあ、ランクは一番下からでしょうけど」
「あたしは、ランクは気にしないので大丈夫だよ」
これからの予定を話ながら、王都へと戻る。門番は、エリザたちの事を知っていたらしく、レランを含めてそのまま通る事が出来た。また、ドラゴンの襲撃があってから、王都へ来る人は減っており、列に並ぶ事も無かった。
「それじゃあ、ギルドに報告に行くとするか」
ドワングを先頭に、ギルドへ向かう。ギルド内は、まだ仕事をしようとする冒険者が少ないのと、時間的に昼頃なので元々少ないのとで閑散としていた。なので、すぐに受付できる。
「依頼の達成報告に来たわ。あと、この子の冒険者登録もお願いするわ」
「分かりました」
エリザが代表して受付嬢に証を渡す。そして、レランには登録用紙が渡される。レランは当然、文字をかけないのでマオが手伝う。本来、依頼主がわざわざギルドに同行する必要性は無いのだが、同行して報告することによって冒険者の評価が上がる事もあるため、ドワングはわざわざ同行している。エリザ達が評価を気にしていない点を除けば、ドワングの対応は冒険者にとって大変うれしい対応になる。
「あと、いくつか素材の買取もお願いするわね」
「量はどれくらいですか?」
「結構あるわよ」
「それでしたら、直接解体場の方へ来て貰ってもよろしいですか?」
「いいわよ」
エリザは、鉱山で倒した魔物の素材を売るために受付嬢に着いて行く。売る魔物の素材はあらかじめ選別してあり、高ランクモンスターの素材は出さない。エリザ達は、お金には困っていないが、冒険者らしい行動を心がけようとしているので、素材の売却もその一貫だ。ただ、解体まではしていないので解体料は取られる。そして、一部の素材はすでにドワングが武器や防具を作る素材としていくつか渡してある。100%ミスリルなんて装備は普通作らないからだ。鎧はともかく、武器の刃以外の部分をミスリルで作る意味が無く、無駄になるためだ。また、魔物の素材によってはミスリルとはまた違った用途に使えるものもあるので、あって困ることは無い。
「ただいま」
エリザが素材を置いて帰ってきた。素材の売却額は解体後に決まるため、そっちのほうの支払いは後日になるため、受付嬢からは護衛依頼の報酬だけ貰う。しばらく待つと、レランの冒険者証も発行される。ランクは当然Gだ。
「これがあたしの身分証か」
レランは、物珍しそうにカードをひっくり返したりして確かめる。ドラゴンの身分は強さで決まる為、強くなればランクが上がる冒険者についても、レランには理解が得られやすかった。ただ、いつでも喧嘩をふっかけて勝ったものがランクが上がるドラゴンの世界とは違うため、強くても機会がなければそうそうすぐにランクは上がらないのだが。
「さっそく、依頼を受けてみたい」
レランは、すぐにクエストボードの方へと向かう。そのあたりの常識は、事前の雑談で知識を入れてある。主に、ドワングが先生として教えていた。エリザもマオも、この世界について知っていることは、クロンやレランよりも下なのである。なので、同時にエリザとマオの為にもなっていた。
「いい依頼ねーな」
レランが個人で受けられるクエストのランクはGか、一つ上のFまでだ。Gにはまだ、門と城壁の瓦礫の片付けが貼り付けられているが、その他は薬草採取などの常設クエストしかない。Fは、ゴブリンの討伐かウルフの討伐が常設として置いてあるが、他にめぼしいクエストも無い。ただ、エリザのランクがCの為、エリザが同行するならレランはもう一ランク上のEのクエストを受けることが出来る。しかし、コボルトの討伐以外はFと大して変わらない依頼が並んでいる。本格的な冒険者として受けられるクエストランクは、C以上が普通だった。
「この中で戦える感じなのは、ゴブリンかウルフくらいか。あたしとしては今更こんな雑魚と戦うって言うのもねぇ」
「それでしたら、調査の依頼なんてどうでしょうか? 何があるか分からないため、ランク不問で受けられますよ。そして、情報の重要度、危険度に応じて報酬が上がります。きっとランクもすぐあがるでしょう」
魔物の大群の襲撃があったため、調査するものを募集しているが、今の王都には低ランク冒険者ばかりが残っているため、思う様に人数が集まっていなかった。ランク不問と言っても、この街に居る冒険者はほぼ全員魔物の襲撃の対応に駆り出されていたため、魔物のレベルを知っている。そのため、命知らず以外は受けてくれないのだ。万が一、オークキングやジェネラルに出くわしたら殺されるだけである。なので、受付嬢も少しでも受ける冒険者を増やそうと、その部分を知らせずにメリット部分だけを言う。だから、なおさら受ける冒険者が減ったのかもしれないが。
「やる、やりたい! やらせて! いいよな、ご主人様!」
レランは、尻尾を振る犬の様にエリザの元へと駆け寄る。エリザも、直感的に面白そうだと感じた。どうせ他に行く予定も無いし、何よりも冒険してこその冒険者だと思っている。
「そうね、良いわよ。これなら、パーティとしても受けられるんでしょう?」
「はい、ランク不問ですから。その代わり、報酬はランクに応じて支払われる事になっていますが」
つまり、寄生して報酬だけ取ろうとする冒険者には、それなりの金額しか支払われないという事だ。ただ、低ランクでも荷物持ちや優秀な斥侯も居るため、その辺はパーティ内でやりくりする。まあ、わざわざ寄生されてると感じる冒険者と一緒にクエストを受けるものも居ないと思うが。エリザは、面白さ優先の為、報酬や評価は二の次だと考えてる。なので
「じゃあ、そのクエストを受けましょう」
と、あっさりとクエスト受注の許可が下りた。




