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封印されていた最古の魔王。――外伝――  作者: 斉藤一


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「うーん、晴れてていい朝ね」


エリザが伸びをしながら土の家から出る。日差しは明るい。仮に雨だとしたら、恐らく1日中家からでなくなり、予定が狂った事だろう。まあ、その場合はマオが雨雲を風魔法で散らすかもしれないが。


「朝食の用意は出来ています。マオ様とドワング様はすでに起きて食事を摂っております」

「みんな早いわね。ご苦労様」


クロンは、睡眠時間を自由に決められる。寿命が長いため、人間にとっては長い時間でも、ドラゴンにとっては一瞬ということだ。そのため、下手したら数日どころか数年単位でも寝ていられるし、起きていられる。そして、それはエリザとマオにも言えることではあるが、とりあえずドワングに合わせて普通の人間のサイクルでの生活を心がけている。エリザは、寝ること自体が大好きなので、暇があれば寝ている方だが。


土で作った簡易的なテーブルの上に、エリザの為の朝食が用意されていた。パンの上に焼いた魔物肉を乗せただけの簡単な料理だが、冒険者の食事としては普通だ。むしろ、魔物の肉が手に入らなくて干し肉をお湯で戻しただけという事の方が多い。エリザのマジックボックスには食料自体は入っているが、冒険者生活を楽しむために食事は基本的に現地で取る。ただ、飽きたら出して食べるのだが。


「起きたか、それでは家を片付けるぞ」


マオは用の無くなった土の家を元の土へと戻す。勿体ない様な気もするが、いつでもすぐに作れるものだし、放置しておくと誰かが勝手に住み着きそうだから使い終わったら片付ける。


「ワシは、いつ出発しても大丈夫だぞ」

「ごめんなさい、すぐに食べ終えるわ」


エリザは、パンを一口で食べる。あくまで、エネルギー摂取だけなので味わって食べる必要は無い。それに、この程度のエネルギーであれば、取っても取らなくても変わらない。


「慌てさせるつもりは無かったんじゃが……」

「いいのよ。私以外はもう準備出来ているでしょうし」


クロンは着の身着のまま、マオも特にものは無いためドワングの準備さえ整っていればいつでも出発できるという事だ。


「それじゃあ、クロンの人化の呪いを解除するわね」

「お願いします」


エリザの手から紫色の魔力が出てクロンの全身を包む。そして、クロンは元のブラックドラゴンに戻った。


「2回目だが、やはり信じられんな、あの少女がブラックドラゴンだなんてな」

「見ての通りなんだから、信じるも何もないと思うのだけど。それより、拘束魔法はいるのかしら?」

「必要だ。絶対に落ちないようにしてくれ」

「分かった。ストーン・バインド」


土が蛇のようにドワングの全身を這って拘束する。そして、そのままクロンの背中に張り付く。マオとエリザもクロンの背中へと飛び乗った。準備が完了したので、出発である。


「方角は、この山の向こうでいいのかしら?」

「ああ。大体真っすぐに進んでもらえればいい。ずれたらその時いうからな」

「分かったわ。それじゃあ、クロンお願いね」

「ぎゃおぅ」


クロンは一声鳴くと、ゆっくりと上昇する。そして、山肌に沿って飛行し始めた。昨日言った通り、のんびりと進むつもりだ。

山を越えた先には、道も何もない平原が続いていた。これならば、目撃されることも、間違って馬車を破壊する事も無いだろう。そのまま真っすぐに飛び続けて数時間が経つ。


「そろそろ見えてくる頃だが。おお、あの尖った柱がある場所だ」


遠目に、尖った白い柱が立っているのが見える。そして、その周りに何十件か家がある。お世辞にも大きいとは言えない村だ。


「隠れ里みたいね」

「隠れているわけじゃ無いが、特に交流がある村や町も無いはずだ。基本的に、国に縛られたくない人たちが集まった村だからな」

「それじゃあ、国の庇護下にも無い事になるわね。それは大丈夫なのかしら?」

「それなりに実力者が居るからな。隠居した腕の立つ冒険者とか、傭兵とか。それに、この辺にはそんな強い魔物も居ないからな。居てもウルフ程度のはずだ」

「そう。それで、魔道具を作ってくれる場所はどこかしら?」

「青い屋根の家に住んでいるやつだ。何、もっと近づけばすぐにわかる。だが、ドラゴンだと目立つから少し離れた場所で降りるぞ」

「そうね。分かったわ」


クロンは、村から数キロ離れた場所に着陸する。そして、エリザによって再び人化の呪いがかけられた。


「まだ数日ですが、大分ひとの姿にも慣れた気がします。それほど嫌だとは感じなくなりました」

「それじゃあ、尻尾を斬って完全に人になる?」

「いっ、それだけは勘弁してください……」


クロンは、自分の尻尾を大事そうに抱えて優しくなでる。尻尾をちぎられた痛みは、想像を絶するものだったので、2度とやってほしくないと思っている。


「それじゃあ、村へ行くぞ」


ドワングは、先頭に立って村へと歩いて行った。

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