野宿
食事が終わり、その日は適当に土魔法で作った家で休む事にした。魔法で作った家であれば、並の魔物であれば、破壊することが不可能なので見張りなどを立てる必要もないし、大きさも自由自在だ。なお、目立つので普通の旅では使う事は無い。仮に、魔物が近づいてもマオ達であれば寝ていても気が付くし、攻撃されても怪我する事も無い。家を作ったのは、ドワングの安全の為だけだ。
「すごいな、こんなものまで作れるのか。本当に、お前さんの魔力は底なしか?」
「無限ではないが、この程度の魔法ならばいくらでも使う事は出来ると思うぞ」
「普通の魔法使いなら、これだけの家を作るのに数人がかりでやらないと出来そうにないが……」
「そんな事より、早く入って休みましょう」
「あ、ああ……」
ドワングが雇い主なので、ドワングの安全が確保されないとエリザ達も休めない。もし、見張りを立てろと言われたならば、クロンを生贄に差し出すつもりだ。だが、マオの魔法を信用しているのか、ドワングは見張りについて何も言わなかった。
「明日、魔道具を作ってくれそうなやつの村へ向かう。距離的には、王都に戻るのとそうかわらんはずだ。方角は逆方向だがな。クロンにとっては、大した差でもあるまい?」
「当然です。私が本気で飛べば、すぐにつきますよ」
クロンが本当に本気で飛んだ場合、ソニックウェーブで大変なことになるので低空では本気で飛ばすわけには行かない。もっと高度を上げれば問題は無いだろうが、そこまで急ぐ必要もないので自重してもらいたい。
「王都からここに来たくらいのスピードでいいわよ。まだ、護衛期間もある事だし。それに、すぐに到着すればドラゴンの姿で居られる時間が短くなるだけよ?」
「そ、そうですね……それでは、安全に行きましょう」
クロンは少しでも長く元の姿でいたいので、急ぐのを止める事にした。
「ワシにとってはもっとゆっくりで、もっと低飛行のほうがいいのだがな」
「善処します」
ドワングは、高いところが苦手なので低空を望む。だが、1回乗ったことにより最初よりは慣れた。そして、安全も保証されているのであとは心構えだけだ。
「よし、寝るか」
「ちょとまって、クロン、少し臭うわね……」
「そうですか?」
クロンは前衛で戦っていた事もあり、魔物から返り血を受けていた。野生では生肉を食べていたので、血で汚れること自体は多々ある事だ。なので、クロン自身は気にしていないが、閉鎖空間では他の人が臭いがこもって困る。エリザは汚れないし、マオも人間的な汚れは無いため、クロンだけが気にしなければならないことだが。
「マオ、クロンを洗ってちょうだい」
「ならばクロンよ、外へ出るのだ」
クロンはしぶしぶ外へ出て、少しはなれた場所まで行って立ち止まる。
「ここでいいですか?」
「よし、ウォーター」
クロンの頭上から滝のように水が流れ落ちる。それは、攻撃魔法を限りなく弱め、水だけを発生させたものだ。
「む、血が固まっている場所もあるようだ。やはり、湯でないと落ちぬな」
「それなら、適当に穴を掘ってそこに水をためて沸かしましょう」
マオは、穴を固め水がしみていかないようにして、そこに水をためる。そして、火魔法で温める。すぐに水から湯気が立つ。
「あたたまった様ですね。それじゃあ、入ります」
「ワシには、思いっきり沸騰している様に見えるのだが……」
クロンにとっては、沸騰しているお湯でも大した温度ではない。そして、十分に体と装備の血と汚れを流したあとは、マオが風魔法でクロンの全身を乾かす。ちなみに、装備を付けたまま入ったので裸にはなっていない。クロンに人間としての羞恥心は無いが、さすがに裸になろうとすればドワングが止める……はずだ。
「もう少し冷めたら、ワシも入っていいか? 汗はそれほどかいていないが、全身が埃っぽくてな」
「よかろう。それならば、土壁で囲んでおこう。最後に、洗い流すための水も用意する」
ドワングの裸を覗き見したいものなど誰も居ないが、見せられても困るので土壁で周りを囲む。天井は無いので、暗くは無い。横に綺麗な水ためを作ってその日のマオの仕事は終わった。




