ドワーフのドワング
現れたのは、小柄でひげもじゃなおっさんだった。ファンタジーのドワーフそのものである。そのドワーフは、エリザ達をジロジロと見る。
「どこからどう見ても少女じゃ。ワシの依頼は、確かクエストランクC相当じゃなかったのか?」
「はい、Cランク相当ですよ。彼女たちは、最近Cランクになった実力者です」
ギルド職員には、エリザ達が本来Bランク以上の実力があるとギルドマスターから直々に通達されているので、仮にエリザ達がBランクのクエストを持ってきても普通に受付するつもりであった。
「そうか、依頼内容が鉱石の採掘だからか? ワシが頼みたいのは、ワシが鉱石を掘るのを魔物から護衛してもらう事なのじゃが」
「それなら、もっとキチンとギルドに詳細を教えてください。あなたは、鉱石を掘る依頼じゃ! 魔物が居るから最低Cランクの冒険者に頼みたいって言ってきただけじゃ無いですか。それも、最低Cランクといいつつも、依頼料はCランクパーティが請け負うぎりぎりの金額ですし。本来、急ぎならもっと上乗せするところなんですからね」
「くっ、分かった。しかし、本当に実力はあるんだろうな?」
「クロン、さっき教えたアレをやってみなさい」
「分かりました。マオ様、お願いします」
「ストーン」
マオは、拳大の石を魔法で作る。そして、クロンはそれを上に放り投げると、剣で真っ二つにする。速度と切れ味が無ければ、ただ石が弾き飛ばされるだけになるが、クロンの腕力で振るったドラゴンの爪(剣)は、しっかりと切裂いていた。クロンは、地面に落ちた石をドワーフに渡す。
「……すごいの。ワシも石を空中で斬る事の難しさは分かるつもりじゃ。分かった、お主たちに頼もう」
「それじゃあ、改めて受付をお願いするわ」
「はい」
受付嬢は、エリザのギルド証にしっかりと受注を登録する。受注内容には、クエストの期間などが入っているため、放っておくと自動的にクエスト失敗と記録されてしまうので注意が必要だ。
「それで、場所は遠いの?」
「徒歩で行けば10日くらいの距離じゃが、馬車ならもっと早く着くはずじゃ」
「その場所に、馬車は出ていませんよ。山しかありませんから」
受付嬢が、馬車が無い事を指摘する。ちなみに、馬車を個人で借りた場合は、乗合馬車の10倍は金額がかかる。
「……お主たちは、馬車は持っておるか?」
「持っていないわよ。もっといい乗り物は手に入れたけど」
「それなら、お願いする。おお、名乗り忘れていたな。ワシの名前はドワングだ」
「私はエリザ。こっちがマオで、こっちがクロンよ。乗り物は、人目につかない場所から乗るから街の外まで行くわよ」
エリザ達はドワングを連れて街の外へと向かう。街の外には遮蔽物が無いため、エリザ達の監視は遠目から行われている。そして、街から十分に離れた場所まで歩いてきた。
「この辺でいいかしら。ドワングさん、少し離れて貰えるかしら」
「うん? まさか、アイテムボックスか何かに入っているのか? 馬はアイテムボックスに入らないはずじゃが……」
「違うわよ。もっと早くてすごいものよ。クロン、おいで」
「はい」
エリザは、クロンの人化の呪いを解呪する。すると、クロンは元の大きなブラックドラゴンに戻った。
「な、なんじゃこりゃあああ!」
「クロンはブラックドラゴンなの。これなら、数時間もあれば山に着くでしょ」
「ぐるぅ」
クロンは、土足で背中に乗られたことを少し不満に思う。なんで、ドラゴンに乗る人はみんな土足で登るのだろうと。傷は付かないが、汚れは付くのに、と。ただ、ドラゴンになったクロンは話す事が出来ないので黙っている。そして、呆然としているドワングをクロンの背に投げ、拘束魔法で落ちないようにする。マオとエリザは自力でも飛べるため、落ちる心配が無いのでそのまま乗る。
「それじゃあ、クロンお願いね」
「ぎゃおっ」
クロンは、返事をすると飛び立った。




