クエスト
「それで、これからどうするのだ? もちろん、ギルド等には話したりはしないのだろうが」
「もう少し、この家でゆっくりしてから適当にぶらつきましょう。しばらくすれば、あの男から話を聞いた仲間が、私達を監視するでしょうし」
実際、男はすでに自分の部下に3人を監視するように命令していた。もちろん、詳しい話はしていない。ただ、部下は元々冒険者の斥候役として動いていたので基礎はできている。仮に上位ランクの冒険者だったとしても、マオの探知魔法から逃れるすべは無いのだが。逃れたいなら、同じく魔法で対抗するしかない。しかし、残念ながらこの世界では魔法使いの数は少なく、また実力も低かった。
「ところで、このお茶はどこで手に入るのかしら? それくらい、聞いておけば良かったわ。クロンも気に入っているみたいだし」
「しっかりと温めれば、さらに美味しいです」
自前の炎で温めたクロンのお茶は、ブクブクと沸騰している。水である以上、100度以上にはならないのが残念だ。
「そろそろ行きましょうか」
「エリザの予想通り、我らに監視が付いたみたいだぞ」
マオは、ドアの向こうの家の影に人が居る事を確認した。本来なら、Cランク冒険者でも簡単に気が付かないレベルの隠密ではあるが、魔法の前には無意味である。ただ、今回は見てみないふりをする事になっている。そして、それから3日間、何も無いのんびりとした時間が過ぎた。主なイベントはエリザの食べ歩きくらいで、監視している男の報告事項はエリザの大食いぶりくらいだった。
「来たわよ」
「さすがに人が多いな」
「視線がうざいですね」
エリザ達は、約束の3日後に再び冒険者ギルドへ来ていた。今日は、他の冒険者にも報酬が払われるので人数は多い。エリザたちの事は良く知られているので、注目する人も多い。ただ、今回は報酬の受け渡しだけなので話しかけるものは居ない。報酬を渡す対象人数は多いが、それ自体はギルドも見越していたので対応する人数も多いため、待ち時間自体はそんなに長くない。何より、報酬は一律なので渡し間違えとかも無い。ギルド職員は、名簿から渡した冒険者の名前を探してチェックを入れるだけである。
エリザたちも報酬を受け取った。しかし、そのまま帰らずに残る。大抵の冒険者は、報酬を受け取ったらすぐに武器屋や防具やに向かうか、臨時に開かれた酒場に向かっていた。報酬をもらったばかりでクエストを受けようなんて冒険者はほとんどいない。何より、今回の報酬は魔物の数が多かったため、普通のCランクパーティがクエストで稼ぐレベルの報酬が支払われていた。参加していたのはほとんどCランク未満なので、めったに見れない大金である。
そして、誰もクエストを受けないので、新しく貼られたクエストも全部残っている。エリザの目的は、そのなかから面白そうなクエストを受けることであった。
「さすがに、魔物討伐系は無いわね」
「あれだけの魔物の大群が向かってきたのだ。野良の魔物など逃げ出しておるだろう」
「むしろ、魔物の群れの食料になっていましたね」
クロンは当事者であったため、そのあたりの事は知っていた。
「新しく増えたのは、城壁と城門付近の瓦礫の片付けと、魔王軍が来た方向の調査ね……どっちも面白く無さそう。あら、もう一つあるわね」
エリザは、最後の一番をジッと見る。
「……鉱石の採掘? これは他のよりは面白そうね。依頼者がドワーフというのがいいわ。これを受けましょう」
「好きにしろ」
「ご主人様に賛同いたします」
エリザはマオとクロンの了承が得られたので、紙を受付へと持っていく。
「もう仕事をされるのですか? ギルドとしては助かります。特に、それは緊急みたいですので」
「おお、お前たちが受けてくれるのか……って少女ばかりだな……」
貼られたばかりだったからか、依頼主のドワーフはまだギルドに残っていたようだった。




