長話
「もう少し、詳しく話を聞かせてもらえないかしら?」
「いいぜ。まず、勇者と魔王の戦争の話からだ。知っているかもしれないが、勇者は魔王への特効がある。つまり、勇者は魔王にとっての天敵だ。ただ、特効は魔王に対してだけだから、その側近である四天王へは自力で勝つしかない。そのために、勇者は4人パーティで魔王へ挑みに行った」
「ふーん、むしろ、たった4人でよく戦争しに行ったわね?」
「ああ、いや、正確には4人以外の人類も戦争に参加しているが、その他の魔物と戦っている。その司令官にあたる四天王及び魔王と戦うのが勇者パーティだ。ただ、そこで問題が起きた。勇者は四天王に勝てなかったんだ」
「負けたの? それなら、魔王軍が攻めてきたのにも納得するわ」
「いや、勝てなかっただけで負けていない」
「どういう事?」
「勇者は、特殊な能力で死んでも自分を含めて4人まで即時に安全地帯で蘇生されるんだ。ただ、魔王に殺された場合だけは別らしいが、勇者は魔王に特効があるから魔王もおいそれと勇者の前に現れたくない。そして、一進一退の戦闘が続いた結果、勇者と魔王が話し合いをして支配地を半分ずつ持つことで和解したんだ」
「勇者よ、仲間にならないか? 世界の半分をやろう……ってやつね」
「? まあ、そうだが。ただ、今の世界はおよそ9割に人類が住んでいる。だから、4割の人類が今住んでいる場所を追われる事になるんだ。つまり、勇者に見捨てられたって事だな」
「それなら、魔王側についても一緒じゃ無いの?」
「いや、人類の方が土地が多い分だけ戦力も多い。その中でも、冒険者は特に実力が高いものが多い。支配するのに戦って、配下を減らしたくないのさ。だから、強いやつは仲間になるように声をかけているのさ。魔王軍は弱肉強食。強ければ、いい待遇が受けられるぞ」
男は、それからも魔王側につく利点を話し続ける。エリザは、しばらく黙って男の話を聞いていたが、急に椅子から立ち上がった。
「決めたわ。私は、魔王軍と敵対する!」
「何故だ!? お前たちの実力なら、確実に良い待遇を受けられるぞ。何なら、四天王の座も夢じゃ無いはずだ」
「それじゃ、面白く無いもの。それに、せっかく魔王軍から引き抜いたクロンをまた魔王軍に戻すのも嫌だしね」
「なん……だと?」
男は、改めてクロンを見る。装備の一部だと思っていたが、尻尾が直接体から生えている事に気が付く。男は、隠していた毒を塗った長い針を手にもって構える。
「慌てないで。私は、あなたを見逃すわ」
「……何故だ? 敵対するなら、俺を見逃す利点は無いだろ?」
「いいえ。私達の強さを魔王に伝えなさい。そして、刺客を送ると良いわ」
「……よくわからんが、見逃してくれるなら逃げさせてもらう」
男は、エリザ以外のマオとクロンにも目だけ動かして動きを確認する。しかし、2人とも捕まえに来る様子は無い。本当に、見逃してくれるものだと判断し、男は素早くドアへ走って外へと逃げた。
「逃がしてよかったのか? これで我らの存在が確実にバレるのだぞ」
「いいのよ。雑魚の相手ばかりじゃつまらないもの。それに、勇者にも興味があるわ。魔王以外に殺されない存在なんて、面白そうじゃない。マオが殺したらどうなるのかしらね?」
「我には関係ないと思うのだが……」
「一応、魔王でしょ?」
「別世界のな」
「だから、どうなるか試したいじゃない」
「……いい迷惑だな……」
エリザとマオの話をよそに、クロンは麻痺毒茶を温めなおして飲んでいた。




