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封印されていた最古の魔王。――外伝――  作者: 斉藤一


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ランクアップ

平原の魔物を回収し終わり、全員街へと戻る。住民にはまだ戦闘が終わったことを知らせていないため、城門付近はまだ閑散としている。居るのは、念のために残された門兵くらいだ。城壁の上には数人、バリスタ用に残された人員は居たが、戦闘が終わったのを見て門の方へと集まっていた。


「よくやった!」

「見ていたぞ、すごい戦いだったな!」

「今日は宴だー!」

「まだ早ぇよ! それに、店はどこも開いてないだろ!」


冒険者、傭兵はすでに宴気分だ。兵士は、まだ残っている仕事を考えてげんなりしている者が多い。街に被害は無いとはいえ、壊された城門、城壁付近はまだまだ瓦礫が残っているからだ。何より、魔物の侵攻が今回だけだとは誰も思っておらず、訓練が厳しくなるのが目に見えていた。


ギルドマスターは、一番活躍したマオ、エリザ、クロンの3人に近づく。周りを囲んでいた冒険者達は、少し離れる。


「お前達、本当によくやってくれた。魔物の侵攻がこれだけの被害で済んだのはすべてお前達3人のおかげだ」

「我は出来る事をやったまでだ。褒めるなら、オークキングを倒したクロンを褒めるがいい」

「ああ、確かに。それに、どう見てもオークキングよりも強かった。俺も昔、オークキングを見た事があるが、あんな再生能力も防御力も有しては居なかった。恐らく、ユニーク個体だったのだろう。本当に、よくぞ倒してくれた」

「私のプライドが許さなかっただけよ」


クロンは、照れ隠しに片腕をぎゅっと掴んで横を向く。しかし、尻尾がフリフリと揺れているので喜んでいるのは誰にでもわかった。ただ、なぜ尻尾があるのかは疑問に思うものが多い。ブラックドラゴンだと知っている数人の者たちはほっこりとしているが。そのものたちもすでに、クロンが敵側だと思っている者は居なかった。


「それじゃあ、ギルドに行くわよ!」

「おう!」


エリザは、後衛職でありながらギルドに向かう先頭を行く。エリザの戦いを見ていた者たちは当然それを意外には思っていない。マオもクロンもエリザに続いているので、エリザがリーダーだと誰もが判断した。その視線を感じて、エリザは満足げに歩いてゆく。


それからしばらくして、住民は元の家へと戻り始め、店も開店しはじめたため活気が戻ってゆく。ギルド内はまだ、持ち込まれた魔物の解体と報奨金の準備などで職員が慌ただしく走り回っている。報奨金の支払いは3日後となったため、冒険者達は各々休むなり、店を回るなりして時間を潰している。誰もクエストを受けようとしないし、今は受付自体止めている。傭兵は国に雇われたため、ここにはいない。兵士たちは、特別ボーナスが出る様だ。


そして、マオ、エリザ、クロンの3人はギルドマスターの部屋へと呼ばれていた。


「こほん。お前達にはいろいろと聞かなければならない事もあるし、報酬の事もある。そっちのソファーへ座ってくれ」


3人は、クロン、エリザ、マオの順で座った。真ん中のエリザが向かいのギルマスと話しやすいようにだ。


「まず、一応の確認なんだが……その少女は大丈夫なんだな? いや、ここに呼んだ時点で俺は味方だと思っているが、そちらの口から直接聞きたいのでな」


ギルマスはクロンの方を向いてからエリザに問う。


「ええ、大丈夫よ。この子がブラックドラゴンであることはギルドマスターも知ってるよね? 私はそれをテイムしたのよ。そして、ドラゴンの姿だと目立つから、人の姿にしてるの。この姿の時は、力は半減してるよの」

「力が半減か……。それでも、あのオークキングを倒せるのだから冒険者の中でもトップクラスの実力になるがな」

「それは私も驚いているけど、暴れたら私が尻尾でもなんでもむしるわよ」

「ヒッ、それだけは勘弁してください」


クロンは、自分の尻尾を自分で抱える。本当にオークキングと戦っていた少女と同一人物かと疑うほどの弱弱しさだ。ただ、その姿を見てギルドマスターがクロンの心情的な危険度を下げた事も事実だが。


「それなら、俺から言う事は無いが……お前達はブラックドラゴンよりも強いんだよなぁ……」


ギルドマスターは、よく考えたらブラックドラゴンが暴れるよりも、そのブラックドラゴンがビビるほどの強さを持つエリザの方が手に負えないと気付く。ご機嫌取りでもないが、出来る限りの事をしなければと決意する。


「約束通り、他の者たちよりも先にお前たちのランクアップと報酬を渡す」

「その前にいいかしら?」

「なんだ?」

「この子、クロンの冒険者登録もお願いしてもいい?」

「……いいだろう。冒険者である証があった方が、トラブルも少なくなるだろう」


ギルドマスターは、たとえギルド証があったとしても、これから与えるランクによってトラブル自体はあると思っていた。ただ、出自不明というか、魔物であるクロンにギルド証を発行していいものかどうかは一瞬迷うところではあった。ただ、エリザが居るなら大丈夫かと楽観視して発行する事にした。


「そして、お前たちに与えられる新しいランクはBランクだ」

「え、そんなにランクアップしていいの?」


マオは、エリザなら「たかがBランク? 舐めてるの?」とけんか腰になるかと思ったが、そうならなかったことに驚いた。逆にエリザは、どれだけ活躍しようとも実力ではなく貢献度でランクが決まっていると分かっているため、たった1回の活躍でそれほどランクが上がるとは思っていなかった。


「当然だ。本来なら、街が攻められるほどの魔物の侵攻だった。それを防いだとあればAランクでもいいのだが、それには複数のギルドマスターの承認が居る。俺だけの判断ではBランクまでしか上げられなかったのだ」


つまり、たった一つの街では最高Bランクまでしか上がらない。複数の街を巡り、そこで活躍してこそAランクになるのだ。そして、勇者はSランク。国が認めたものだけが成れるランクである。


「……せっかくだけど、Cランクでいいわ」

「どうしてだ? 緊急依頼の受注義務はCランクからだから、避ける事はできんぞ? CランクとBランクの違いは受けられるクエストと指名以来の信頼度くらいだ」

「ぽっと出の新人がいきなりそんな高ランクになると、裏取引きを疑う人たちも出て来るでしょ? だから、まだCランクでいいわ」


それでも、GランクからCランクへのランプアップは前例が無いほどの事例だ。ただ、この街の冒険者達以外は、実際に戦う姿を見ていないのでランクのみで判断するだろう。


「それが望みならそうするが……本当にいいのか?」

「構わないわ」


マオもクロンも特に反対意見を出す事は無かった。マオはそもそも、ランクにこだわっていないし、クロンがエリザに意見することなどでき無いからだ。


「それなら、クロンのギルド証を発行する手続きから始めるか。おい、誰か!」


ギルドマスターは、ドアを開けて職員を呼ぶのだった。

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