一騎打ち3
「一体、どこで間違えたというの……?」
エリザはグレートオークキングとクロンの戦いを見ているしかできなかった。一番目立つであろうガルダの群れを華麗に倒し、周りの冒険者から尊敬のまなざしを得ることは出来た。実際、マオが戦っているゾンビの様な地上の魔物は散発的で、それぞれがバラバラに動いているため目立っていない。ただ、その魔物と戦っていた冒険者からは感謝されるが、エリザの目的は目立つことなので、やはりガルダの方を選んで正解だった。
「なぜ、クロンとあの豚が互角の戦いを繰り広げているの……?」
エリザの見立てでは、クロンよりもグレートオークキングの方が格上のはずだった。実際、クロンの通常攻撃はグレートオークキングの肌を傷つけるのがやっとで、さらにそれは再生していた。つまり、クロンでは絶対にグレートオークキングを倒す事が出来ない。そして、エリザはピンチになったクロンの援護をして、自分が目立つ予定だった。やはり、一番目立つのは一番強い敵を葬った時だろうと思っていた。それなのに、人化して間もないはずのクロンが、思ったよりも善戦している。炎を纏ったクロンの剣は、グレートオークキングから傷の再生を奪っていた。
「てやああぁぁ!」
「ブヒッ! ブヒイィィィ!」
クロンの剣がグレートオークキングの腕を斬り飛ばす。傷口には炎が留まり、再生できなくしていた。そして、その戦いはエリザが救った冒険者達が見守っている。地上の魔物はもう少しでマオが倒し終わるだろう。
「今ここで私があの豚を攻撃したら、まるでいいとこどりしたようになってしまうじゃない」
エリザであれば、一撃でグレートオークキングを倒す事は可能だった。しかし、状況がそれを許してくれない。一進一退で戦うクロンを応援する冒険者や傭兵、兵士達。すでに残る魔物はグレートオークキングのみ。さらに、これ以上魔物が増える事も無い。つまり、最終決戦はクロン対グレートオークキング。そして、注目の的。
「くうぅぅ、私の活躍の場が!」
「おぬし……」
マオは、エリザを冷めた目で見る。傷だらけで戦いながらも、優勢に戦うクロンには、マオも手出しをするつもりはない。そして、その戦いはクロンがブラックドラゴンから変身したところを見ていたはずの冒険者ですら虜にしていた。
「がんばれ!」
「いけー! 嬢ちゃん!」
冒険者達の応援を受け、クロンの動きは良くなった。今まで、人から応援される思いをした事がなかったクロンは、力がみなぎる気がしていた。
「はあぁぁぁ! 止めだ!」
「ブヒィィ! 肉体強化!」
クロンは、全身に炎を纏う。いくら炎に耐性があるクロンであっても、自身の本気の炎までは完全に防ぐ事は出来ない。しかし、すべての力を込めなければ、グレートオークキングに勝つことは出来ないと思っていた。そして、グレートオークキングも、この攻撃を凌げば勝ちだと思い、周り中の届く範囲の魔石を吸収した。グレートオークキングにとっての誤算は、力を使い果たした魔石には、グレートオークキングを強化する力はほとんど残っていなかった事だ。それでも、一部の傷は治り、腕を強化することには成功した。
「ドラゴン・チャージ!」
クロンは剣を突き出して思いきり前へと突進する。グレートオークキングには、すでにその攻撃をかわす力は無かった。グレートオークキングは、強化した両腕でクロンの剣を受ける。しかし、受けた場所からクロンの炎によって炭化し、再生する事も出来ずにグレートオークキングはクロンによって倒されるのだった。




