一騎打ち2
「てりゃああぁ!」
クロンは飛び上がり、体重を乗せて斬りつけた……つもりであった。しかし、人化の呪いと共にクロンの質量は、エリザの異空間へと移送されている。なので、クロンの体重は見た目どおりの重さしかなく、鎧の重量を足しても人間の大人の男性程度にしかなっていない。そして、クロンの武器がいくら切れ味の良いドラゴンの爪を元にしていても、体重が乗っていなければ大した攻撃にはならなかった。
「ふん、この程度で何がブラックドラゴンだ。まあ、昔戦った冒険者よりは強いように感じるが、今の俺様に取っては取るに足らん」
オークキングだった頃、いや、もっと昔から何度か冒険者と戦ったことがある。魔物は、レベルが上がれば進化する。そして、魔物が一番経験値を得られるのは人間の冒険者を倒した時だ。なので、時には仲間と共に、時にはソロでだまし討ちをして、時には配下を使って冒険者を殺してきた。格上を食う事によってパワーアップする特殊能力を持っていたグレートオークキングは、普通の魔物よりも多く格上を戦ってきたのだ。その中には、Bランクの冒険者も含まれていた。グレートオークキングは、そのBランク冒険者よりも、目の前の少女の方が遥かに強く感じた。それこそ、Aランク以上の。しかし、グレートオークキングとなった今では、Aランクパーティですら余裕で倒せると自負するほどの力を得ていた。
「くっ、この体ではまだ戦いに慣れていない……。だけど、お前を倒してご主人様のご機嫌を取らなければならないのだ! 私の命に関わるからね」
「そんな心配は無用だ、貴様は今ここで俺様に殺されるんだからな」
「お前がね!」
クロンは素早くグレートオークキングの懐に踏み込み、みぞおちに蹴りを放つ。しかし、ただでさえ脂肪が多いオークの、さらにオーガの鋼の肉体を得た今では物理攻撃の効果は薄い。
「効かん!」
「分かってるよ」
クロンは器用にも剣を地面に刺し、それに尻尾を絡めて支えにし、グレートオークキングの首に足を絡めた。
「これならどう?」
「ブヒッ、それがなんだ? 俺様に攻撃して欲しいのか?」
グレートオークキングの首周りは、脂肪によって守られていた。クロンは窒息死を狙ったが、それもグレートオークキングには通用しなかった。逆に、足を掴まれて地面に叩きつけられる。
「ぐあっ」
地面が割れて陥没するほどの衝撃がクロンに伝わる。それは、頑丈な体を持つクロンであっても全くの無傷というわけにはいかなかった。そして、グレートオークキングは追い打ちで踏みつぶそうとする。しかし、さすがにそれを受けると危ないと思ったクロンは、転がって何とか避ける。そして、グレートオークキングの足は、その勢いのまま地面に突き刺さった。
「隙あり!」
クロンは素早く起き上がると、グレートオークキングのわき腹を剣で斬る。今度はしっかりと地面を踏みしめての斬撃なので、グレートオークキングのわき腹を切り裂くことに成功した。しかし、グレートオークキングのその傷はすぐに再生する。
「無駄だ無駄だー!」
「くっ、やっかいね。それなら、再生できないようにしてあげるわ」
クロンは、ブレスの様に魔力を炎に変換し、剣に纏わせた。




