一騎打ち
「ブモオオォォ!」
グレートオークキングが咆哮を上げる。すると、いままで瀕死で倒れていた魔物たちが立ち上がり始める。グレートオークキングは、グレートオーガが食べたことによって新たな特殊能力を得ていた。それは、自分よりも弱い魔物を従え、さらに体内の魔石を消費して死ぬまで戦わせることが出来る。そして、その能力には対象者の痛みを感じ無くし、身体能力向上の効果もあった。つまり、強化されたゾンビの様なものになるのだった。
「なんだ、急にウルフが起き上がって……ぎゃああぁぁ!」
「こっちのガルダは急に弓が効かなくなったぞ!」
「オークジェネラルが生きてやがった!」
瀕死の魔物に止めをさすだけの仕事が、ワンランク上の力を持った魔物の相手をする事になった。特に、ガルダがやっかいで、すでに対抗できる冒険者や兵士、傭兵は存在しなかった。
「私の失態です。まさか、こんな事になるなんて……」
クロンは、あえてブレスを一発しかうたなかった。やろうと思えば、何発もうってすべての魔物を完全に倒せたのにだ。しかし、普通であればそれで十分でもあった。オークキングとグレートオーガが生き残り、食べることが出来たのは偶然でしかなかった。
「残念だけど、人化の呪いの解除は1日に1回よ」
「このままで戦います。私がオークキングの相手をするので、ご主人様達はガルダや他の魔物をお願いします」
「分かった。我はガルダをやろう」
「じゃあ、私がガルダをやるわ」
「……ほら、強そうなオークが生きているからエリザはそっちをやったらどうだ?」
「マオこそ、空中戦は得意じゃ無いでしょ? とりあえず、飛ぶのは無しね」
「はぁ、分かった。我が地上をやろう」
「やった、私が空を制す!」
しばらくマオとエリザの言い争いが続いたが、最終的にエリザがガルダをマオがウルフやオーク、オーガの生き残りを倒す事になった。
「これをやってみたかったのよね。レイン・アロー!」
エリザは弓を空に向けると、矢を放つ。それはある程度空へ向かい、落下状態に入ると同時に複数に分かれる。そして、上昇した時よりも早く落下するのだった。
「原理的には、エネルギーの塊を撃って、それを複数に分けて風の魔法でブーストしたのよ」
「誰もそんな事を聞いておらんぞ……」
魔法が無ければ不思議な現象だが、魔法ありなら結構普通にできる技だった。マオは、冒険者達を助けるために、強いものから順番に倒す。オークジェネラルは、せっかくパワーアップして復活したのに、マオの魔法によって一撃でやられるのだった。
そして、クロンはすぐにグレートオークキングの元へと向かった。グレートオークキングは、自分の前に立つ浅黒い肌の少女を不思議に見る。今の自分の力を見たなら、普通の人間であれば恐慌状態になるはずだからだ。
「さあ、オークキング。私が相手よ。私はブラックドラゴン。今はクロンと名乗るわ」
「貴様がブラックドラゴンだと? まあいい、それが本当であれ、嘘であれ、俺様の憂さ晴らしに付き合ってもらう」
クロンは自分の爪が変化している剣と盾を構える。グレートオークキングは、何気なく落ちていた石を拾うと、軽くクロンへと投げつける。
「くっ!」
その投石は、思っていたよりも早く、クロンは躱せずに盾で受けた。クロンは、いくら力がドラゴン時の半分になったとはいえ、まさかオークキング程度に負けるとはまったく思っていなかった。
「これが俺様の新たな力か……。今なら何でも出来そうだ」
グレートオークキングがクロンに右手を向ける。すると、そこから黒いツタの様なものが伸びてきた。クロンはそれを避ける。しかし、そのツタはそのまま伸びて死んでいるオークウォリアーの死体に突き刺さる。突き刺さったツタは、オークウォリア―の魔石を吸収してグレートオークキングへと力を送った。
「おお、格下の魔物でも俺様の力になるとは。これなら、俺様は無限に強くなれる!」
「それはない。私がお前を殺す!」
クロンは、剣を構えてグレートオークキングへ向かって走った。




