無駄
「やっと出番が来たようね」
エリザは城壁の上から魔物の大群を見てニコニコ顔だ。どうやって活躍しようか、いろいろと考えている。あっさり倒すのか、それとも味方が苦戦しているところを目立つように立ち回るのか。
「マオ、どう思う?」
エリザは、マオにどうこのイベントをクリアするか聞くが、当然それを理解していないマオはこれからどう動くかと聞かれたと理解する。
「もしこのまま冒険者として活動するのならば、とりあえず指揮官の言う通り動くのが良かろう」
「えー、無双して目立つのは?」
「我らはすでにランクアップも確定するほどの活躍をしただろうに……」
「それもそうね」
一番強い四天王のドラグルを倒した。つまり、ここに集まっている魔物をいくら倒してもこれ以上のランプアップは望めないし、やるだけやって無駄骨になるのは避けたい。大した手間ではないが、無駄は嫌いなのだ。
「それなら……クロン」
「はい」
「あなたとドラグルってどっちが強いの?」
「当然、ドラグルです。それでも、今のご主人様であるエリザ様とは比べるまでもありませんが」
「あっ、やっぱり強かったのね、一応。一発で倒せたから魔法か何かであなたを従えているのかと思ったわ」
「私はプライドの高い高等な魔物です。自分より弱いものの下には絶対につきません」
「それなら、忠誠の証にあなたにこの場を任せてみようかしら。まさか、元お仲間だから無理ですって言わないわよね?」
「あのような雑魚共を仲間だと思ったことはありません。任せてください」
「それじゃあ、城壁の外へ出たら人化を解くわ」
クロンは城壁の端から少し離れ、助走を付けて城壁の外へと飛び出す。それを見ていた周りの兵士や冒険者が、身投げしたのかと思って慌てる。
「人化の呪い解除」
エリザはクロンに手を向けると、そこから紫色の光線がでてクロンの人化を解除する。クロンが地面に到達する前に、ブラックドラゴンの姿へと戻っていた。
クロンの姿に、周りの冒険者は慌てだす。そして、魔物の大群は味方であると思っているブラックドラゴンが現れたので歓喜する。
しかし、クロンは軽く上空を一周してから制止すると、口へと魔力を集めた。そして、一筋の閃光が走ったかと思うと、魔物の大群が爆風で吹き飛ぶ。辺りには、魔物の死体か重傷を負った魔物しか残っていない。
「えー、もう決着? 詰まんないの。人化の呪いをかけるからこっちへ来て」
エリザはクロンを手招きして呼ぶと、空中でもう一度人化の呪いをかける。クロンは器用に人型に変わりつつも城壁の上へと着地する。
「な、何が起きたんだ?」
「ドラゴンが消えたり現れたり、一体なんだ?」
「俺は見ていたぞ、あの少女がドラゴンになるところを!」
「味方なのか? 敵なら俺達はお終いだ!」
冒険者や兵士、傭兵たちは慌てふためく。目の前の魔物の大群が居なくなったが、それを一蹴するドラゴンがすぐ近くに居る。今のところ、暴れる様子も無ければドラゴンに戻る様子もない。
「何匹か生き残っている魔物が居るはずだ、城門の外へと出て止めをさせ!」
指揮官は、混乱しながらもやるべきことをやらなければと命令を下す。冒険者や兵士たちは魔物の大群が居た場所へと向かった。
「私達も行きましょうか」
「分かった。ここに居てもやることは無いだろうからな」
クロンが2人の後ろを着いて行く。ドラゴンがクロンに変身したのを直接見ていた者たちは、クロンを避けるように離れた。変身を見ていなかったものは、珍しい少女の冒険者達だと思うくらいだ。




