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第4回なろうラジオ大賞投稿作品

缶コーヒーの絆

作者: 衣谷強
掲載日:2022/12/01

『なろうラジオ大賞4』参加作品です。

キーワードは『缶コーヒー』。

キーワード通り、缶コーヒーのような味わいをお楽しみください。

 カシュっという小気味良い音。

 小さな飲み口から立ち上る湯気。

 鼻に流れ込んでくる焦げたような匂い。

 口を付けると苦味と薄い酸味が舌の上で踊る。

 慣れはしたけど、美味しいと思った事はない。


『すげー! ユイねぇ、コーヒーブラックで飲めるの!?』


 ヒロにそう言われたのが高校受験の時だから、かれこれ十年以上か。

 あの時は眠気覚ましに嫌々飲んでたんだけど、小学生のヒロには格好良く見えたらしい。

 近所に住む幼馴染のお姉さんとしては、その格好良い幻を消したくなくて、コーヒーを、しかもブラックを選んで飲むようになった。

 今考えると恥ずかしいくらい子どもっぽい動機だけど、気が付けばいつも缶コーヒーのブラックを飲んでいる。


『ブラック飲むなんてイケてるゥー」


 大学の時にチャラい男共は、会話のきっかけに私の缶コーヒーに目をつけた。

 でも何も感じない。

 あの時のヒロのキラキラした目。

 それ以外に私がコーヒーを飲む理由はないのだから。


「ふぅ……」


 息を吐くと、目の前に白く香ばしい香りの雲が一瞬漂う。

 あ、そういえば。


『なんでコーヒー飲んでるのに、息白いの?』


 なんて言うから思わず大笑いして、しばらくむくれさせちゃったっけ。

 そのヒロももう社会人。

 ……五歳の差は大きい。

 一緒だったのは小学校だけ。

 中学も、高校も、大学も、ヒロと同じ空間にいられなかった。

 背は追い抜かれたのに、歳の差は縮まらない。

 だから私はコーヒーを飲む。

 それが私とヒロを繋ぐ、唯一の絆のように感じていたからだ。

 ……でも、それもそろそろおしまい。

 冷たくなった缶をリサイクルボックスに入れる。

 カランカランと軽い音。

 少し寂しい気もするけど、いつまでもコーヒーに縋って生きていく訳にもいかない。

 私は大きく背伸びをして歩き出した。








「ユイねぇお待たせ!」

「遅い」

「ごめんごめん。あ、またコーヒー飲んでる。好きだねぇ」


 あんたが遅いから二本目飲む羽目になったってのに……。


「で、あんたいつになったらその『ユイねぇ』をやめるの? 私の両親に『ユイねぇを僕にください!』とか言ったら張り倒すからね?」

「う、言いそう……」

「だから今から慣れときなさいよ」

「……分かった。……ゆ、ユイコ……」

「なぁに? ヒロ」


 あ、真っ赤になってやんの。可愛い。


「ちょ、もうちょっとユイねぇで呼ばせて!」

「はいはい。あんまり待たないわよ?」

「……頑張る」


 強張るヒロの手をそっと握る。

 缶コーヒーよりも暖かくて確かな絆がここにある。

読了ありがとうございます。


え? 缶コーヒーにしては甘すぎる?

世間にはマ○クスコーヒーというものもあってじゃな……(震え声)。


お楽しみいただけましたら幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「なろうラジオ大賞4」から拝読させていただきました。 今回もお見事です。 スイカに塩を振ると甘みが増すように、ブラックコーヒーの後の糖分は効きますねー。
[良い点] 想像していなかった結末でユイねぇーーー!となりました! かわいい……! 今も昔も二人の関係がかわいくて、でも絆は変化していて……。 展開が面白かったです! 美味しい『缶コーヒー』をありがと…
[良い点] 素敵な物語でした。二人は幸せになって貰いたいと感じました。 [一言] 読ませて頂き有難うございました。
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