ラッキー!
Boarunn Ford内では独自のボイスチャットシステムがあるらしいので一回拓海との電話を切った。
Boarunn Fordの世界に入るとまず大きな街にいるらしい。
そこが日本サーバーの街らしい。
とにかくそこに着いたらじっとしとけばいいらしい。
このゲームのプレイヤーは基本的に「冒険者」と呼ばれる。
ただ元から冒険者になっているわけではなく冒険者カードの発行が必要だ。
現実世界の身分証みたいなものだ。
本当はすぐに冒険者カードを発行するために冒険者組合に行くそうだが…
「たぶん渚は迷うぞ?あの街はとにかくでかい!地図を最初に全員に配られるけどよくわかんない奴も多いからな!」
ということなので俺が入ったら探してくれるらしい。
迷ったとしても案内してくれるNPCがいるので大丈夫らしいが手っ取り早い…とのことだ。
そして今俺、柚木原誠二は友達の拓海に誘われて「Boarunn Ford」という今流行っているゲームを始めようとしている。
だが早くもつまずきかけていた。
最初はそのままテクニスの世界に入るのではなく、いろいろやることがあるそうだ。
最初のチュートリアルを終え、順調にプロフィール等の書き込みを行っていたのだが、よく分からないやつがでてきた。
「振り分け?…」
このゲームは最初に自分のユーザー名やキャラ選択などの普通のゲームと同じような始め方なのだが
、ステイタス振りというのが最初にある。
これが今後の冒険に大きく関わるらしい。(拓海によると)
攻撃力100
攻撃速度100
物理防御力100
魔法防御力100
特殊耐性100
回避力100
…
といった初期ステイタスがある。
(どれにしたらいいんだ…)
俺は全く分からなかった。
こんなことならちゃんと拓海に聞いておけばよかった。
教えてくれると言ってくれたのだが全部を拓海に頼んでいたら悪いと思ったので断ったのだ。
一回ゲームを中断してもいいがまたスキップ出来ないチュートリアルを見ることになると考えると…だるくなってきたのでやめた。
「さて…どうしたものか…」
俺は考えた。
振るのは3000ポイント。
(まず攻撃力は必要だろう…あとは防御力…いやいるのか?う~ん…)
その結果としてこうなった。
ユーザー名:レイド・アルフォート
キャラ:バンパイア
役職:殺し屋
ギルド:なし
ランキング:6549842位
ランク:Eランク
ステイタス
攻撃力:2000
攻撃速度:1000
物理防御力:100
魔法防御力:100
特殊耐性:100
回避力:300
…
常用スキル:絶対回避…自分、もしくはパーティーメンバーが攻撃されている時に三回に一回、攻撃を無効化する。または一定以上の攻撃力をもつ攻撃を一日一回無効化する。(これらは物理、魔法に関わらず適用される。また特殊攻撃には意味はなさない)
超絶技巧…自分が攻撃している時に五回に一回、与ダメージが10倍になる。ただし、戦闘時にスキルが発動する確率は30%である。
不屈の闘志…死亡した際に50%の確率で生きかえる。ただし生きかえりの際はHPの最大値の30%とする。
格上の闘志…二つ以上のランクの冒険者、もしくはモンスターに相対する時に自身のステイタスが急上昇する。ただし、上り幅、持続時間はランダムである。
絶対耐性…全て状態異常に耐性がある。ただし、モンスターのみ。
「よしっ!いい感じ!」
俺はこれが最善の手だと考えていた。
もしもの時はもう一回やり直せばいい。
(ちょっと中二病っぽい名前にしすぎたか?…まああとでまた直せるか…)
そんな時にスキル欄を見たら一際光っているものがあった。
気になったものの俺はあまりあまり気にせずに進めた。
その後も面倒なものもあったが順調に終わった。
しっかり俺は読んだのでちゃんとゲーム内容は分かっている。
ここで安易にチュートリアルとかを聞いてないやつはいつか苦労すると俺は思っている。
だが、確認することがないことに気づいた俺は時間を見た。
いわゆるこのゲームはVRなので自分の部屋の時計を見れない。
だが時間は見ている景色の右上に表示されているので心配はない。
拓海と約束した時間は午後8時だったが今何時だろうか。
「ん?9時だと…やっべ!」
このゲームは現実の時間より五倍の早さで一日が過ぎるらしいがあまりそういうのは感じない。
そのため現実より長い時間をゲームをしているのだが、短い時間しか経っていないことが多いらしい。
それなのにいつのまにか時間が経っていた。
ただでさえ一時間の遅刻なのにゲームだと五時間の計算になる。
(あぁ…拓海怒ってそう…)
俺はそんなことを思いながら急いでテクニスの世界に飛び込んだ。
~~~~~~~~~~~
自分、横渚拓海は友人である渚を待っている。
約四時間待っている。
それはテクニスの中での話だ。
実際には五十分程度だろう。
・
現実の時間の八時と言ったはずなのだが間違えたのだろうか?
友人のたまに抜けているところを思い出し、笑った。
(まあ…これで連絡が来るからいいか…)
自分は渚のフレンドコードを事前に教えてもらい、もうフレンドになっていた。
フレンド同士は両方が承諾すれば位置関係をいつでも把握できる。
そのため渚が入ってきたらそこに行くつもりだ。
だが、その渚が一向に来ない。
一回ログアウトしてもいいが…また何か言われそうだ。
渚曰く自分は世話好き…だそうだ。
自分では感じないがそうらしい。
なので外にまで迎えに行ったらウザがられるだろう。
ということで自分は暇をつぶすために少しダンジョンに潜ろうかと思っている。
・・
もしも途中で渚が来ても、首都ポアルンであればワープで帰って来られる。
どこのダンジョンに行って、時間を潰そうか考えていると…
(ん?…限定ダンジョンだと…行かなくては!…だけど…)
地図上に限定ダンジョンのアイコンが現れた。
一日一回程度しか出くわさない低確率出現のダンジョン…限定ダンジョン。
難易度は高いが、報酬は大きい。
自分はテクニスの発売日からやっているのでこれぐらいは攻略できる。
しかし、問題がある。
時間もかかるのだが、途中でリタイヤが出来ないのだ。
つまり渚が来たとしても出れないのだ
(う…どうしようか…)
悩んでいたが決めた。
(限定ダンジョンに行こう!渚も俺を待たせたからな!)
その後自分は限定ダンジョンの場所まで足早に歩を進めた。
~~~~~~~~
俺はテクニスの世界に来た。
「な…」
言葉が出なかった。
周りをを見渡すと外国の街並みにあるような家が並んでいた。
そこには多くの人が喋ったり、食べ物を食べている。
人と言っても、豚人や狼人っぽいやつらが多い。
だが、俺はそんなことで驚いたわけでもない。
何に驚いたかというと…
「おい!聞いたか?ベンドルさんのところが子供生まれるだってさ!」
「え?そうなのか?じゃあ…もう三人目か?」
「そうだな!元気な子が生まれるといいが…」
「俺も早く子供がほしいな…」
「その前にお前は嫁さんだろう!」
NPC達が見た目もそうだが喋り方も振る舞い方も生きているようにしか見えなかったからだ。
プレイヤーにはNPCとプレイヤーとの違いが分かるように相手の頭上にマークが付いている。
プレイヤーなら赤色、NPCなら青色らしい。
その青色の表示が出ているキャラが流暢に喋っているのだ。
グラフィックもそうだが、人工知能を取り入れているのではないだろうか。
それもNPC全員に。
俺はそのことを知り。このゲームの凄さに鳥肌が立った。
その後も俺は驚くことばかりであった。
何かに触れた時の感触、ドアを開けた時のきしむ音、光の差し込み方…
全てにおいて何もかも完璧だったのだ。
興奮し過ぎて俺は拓海を待つのを忘れていた。
(それにしても…すごいな…流行るのも当然だな)
街中を歩きながら思っていた。
この歩いてる感覚も現実の俺の体にはない。
このゲームはスリープモードという技術があり、本来なら体動かす必要なところを動かさなくてもよくできる。
もちろん体動かして操作もできるらしいが、そんなことをしたら危なくてしょうがない。
家の中の物にぶつかってけがをするだろう。
俺もスリープモードで意識は覚醒しているものの体は動かしていない。
俺は近くの公園のベンチに腰掛け、そこで拓海が迎えに来るのを待つことにした。