テロリスト 飯野手呂
誰もが寝静まる午前3時。飯野 手呂はテロを起こすべく、行動を開始していた。
飯野は深夜でも人口が集中している都市へとやってきていた。しばらく歩いていた飯野だったが、ある物が目に止まり、ピタリとその歩みを止めた。
「うう……寒い……」
「販売開始まであと少しだ……!」
「あと少しであの新型ゲームがこの僕の手に……!」
飯野の目に映っていたのは、まだ開店すらしていない家電量販店に並ぶ、新型ゲームを求めて徹夜で並んでいる人々だった。
10秒ほど、飯野は彼等を品定めするように眺めると、裏路地へと入っていった。どうやら今回のターゲットは彼等に決まったらしい。
(体感気温0度。ターゲット総数は約50……今回の作戦はR、プランKか。了解した)
飯野は送られてきた作戦メールを確認した飯野はポケットからリモコンを取り出しスイッチを押した。
すると、何もなかった路地に、どこからともなく巨大なコンテナが出現した。このコンテナは最新鋭の光学迷彩が搭載されたコンテナで、より円滑にテロを遂行するために開発された物である。
飯野はコンテナに格納されていた道具を5分で組み立てると、ターゲットの方へと気配を消しながら、まるで獲物を狙う蛇のように近づいていった。
10分後
家電量販店の周りは阿鼻叫喚の地獄絵図となっていた。
人々は我先にと押し合い、そしてあるところでは悲鳴が、またあるところでは腹を押さえて這いつくばる人々がいた。
その中心にいたのは屋台の中でラーメンを作る飯野の姿だった
・・・・・
・・・
「よし、こってり豚骨ラーメン2丁上がり!!早い者勝ちだ!」
「俺が先だ!」
「イヤ俺が!!!!」
家電量販店を成していた行列は今や瓦解し、人々は飯野の屋台へと群がっていた。中には空腹に耐えきれず、腹を押さえうずくまる者までいる。
「そうだ!もっと食え!」
悪魔のような笑みで多くの人にこってり豚骨ラーメンを勧める飯野。飯テロリストである彼はより多くの人を悪魔の道へと誘うべく、高カロリーなこってり豚骨ラーメンを凄まじいスピードで作り上げていく。
その時だった
「そこまでだ!テロリストめ!」
怒号と共にライトで照らされる飯野。それに驚いたのか、ラーメンを啜っていた者達は蜘蛛の子を散らすように一目散に逃げていく。ライトの向こう側には何人もの武装した兵士達。
「貴様の目的はなんだ!」
「目的……?そんなもの決まっている……!」
隊長らしき男が飯野に向かってすごみのある声で問いかける。しかし飯野は幸せそうに濃厚こってり豚骨ラーメンを啜る者達を思い返し、そしてポケットから錠剤の入ったケースを取り出すと、こう言い放った。
「こんな物を食料と称して国民を騙し続ける貴様ら政府を打ち倒すためだ!!」
錠剤の入ったケースには“超栄養タブレット”と書かれていた。
3XXX年、世界政府は食糧難警報を発令。国民には超栄養タブレットという錠剤を配給し、表向き、食糧難は解決していた。
しかし
食糧難というのは世界政府上層部が食料を独り占めするための真っ赤な嘘であった。
結局、理由は分からずじまいであったが、その情報を掴んだ飯野は5年前からこのテロを計画し、着々と準備を進め、本日の凶行へと及んだのであった。
「……そんなことより俺ばかりを気にかけていていいのか?」
「何?!」
絶体絶命な状況にもかかわらず、余裕な態度を崩さない飯野を訝しむ部隊長。その時だった。
「た、隊長!大変です!こ、後続部隊が無力化されました!」
「なんだと!!」
部下からの報告を聞いた隊長の顔が驚愕に染まった。
「報告によれば美味しそうなラーメンなるものの画像と共に美味しそうな匂いがしたとのこと!隊員達は軒並み超栄養タブレットを貪り食べてるとのこと!一部では奪い合いの乱闘が起きている模様!」
部下の報告を聞きながら飯野を睨み付ける隊長。そんな隊長を実に愉快そうに眺める飯野
「くはは!大変そうだな!さて、目的は達した。今回はここらで消えるとしよう。さらばだ!」
「ま、待て!!!」
制止する隊長の声を気にも留めず、飯野は忽然と姿を消した。
飯テロリスト飯野手呂の反逆はまだ始まったばかりである。