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 第肆話。通常日程の始まり。弍

〜 弍 〜

俺は学校に到着した。

先程の鬼塚百合恵(おにづかゆりえ)とのやりとりで上機嫌になったせいもあり、軽く足を弾ませながら教室へと入っていく。

しかし、俺を待ち構えていた教室は静寂で満たされていた。それは他ならない教室中央にたたずむ3人の生徒に向けられている静寂だった。


「オッ和真氏‼︎まっていたのだぞ!」


「宮本氏に聞きましたぞ!この学校でも名高い、かの鬼塚百合恵殿の幼馴染みだったそうではないか!」


「どういうことでござる!」


はぁ〜と俺はため息をつくと、喝を入れるつもりで口を開く。


「おい宮本ぉ!貴様俺の話も聞かないで百合恵のお菓子に釣られていったくせにそんなデマ流す事だけはまじめってどういうことじゃぁ!?」


「おぉ?和真お前いま百合恵って言わなかったか!?」


「どう言う事でござる!和真氏!」


「まさか鬼塚百合恵氏と恋仲になったとか!?」


更に喧しくなる3人に向けられていた視線は一層冷たくなり、静寂は深みを増していった。もちろん、俺に向けられる視線も同じ様なものなのだが、飛んだトバッチリだ。

今の彼らを止められるのは恐らく、百合恵の登場のみだろう。彼女に期待するのも難だが、今はそれしか最良の方法がない様に思える。だが、彼女の到着まで少しの時間を稼がなければいけないのもまた事実。俺は何とか彼らの説得に入る。


「違うに決まってんだろ!そうなれるならとっくになってるわ!」


「しかしお隣どうしってのは本当なのだろ!?」


「お隣っつてもそんな良いもんじゃないし、まだあいつが引っ越してきてからそんなに経ってないから会話もあんましてねぇよ!」


「とにかく拙者等を差し置いてそんな美味しいポジションをもっていってるのでは無いわ!まるで貴様、ラノベの主人公みたいではないか!」


この無駄に騒いでいる三人の中でもリーダー格的な生徒が、後藤 雪風(ごとう ゆきかぜ)。俺のオタク仲間で、俺も含めた四人の中ではロボットアニメについてが専門分野だ。容姿は、どこにでもいる様な男子高校生で、何の変哲もない顔立ちと、若干太り気味な体格をしている。

彼とは、中学からの付き合いだが、(記憶を失った後からのではあるが)いつもアニメの好みや、シーンの良し悪しで揉める。

そんな彼にいつもくっついて回っているのが、島風 武蔵(しまかぜ むさし)だ。彼も同じく中学からのオタク仲間だが、専門の近未来系などのローファンタジーとは関係なく、いつも後藤に話を合わせており自分の主張をしたことがあまりない。容姿に関して言えば、後藤ほどは悪くない。細マッチョで、一部の女子には好まれる様な顔立ちだ。

この2人と宮本と俺が合わさり、たった1年で「光陽のオタク四天王」と言う不名誉なあだ名がつけられている。ちなみに、宮本の専門は、ジャムプ系アニメや漫画、更に日常系やギャグ系で、俺の専門は異世界ものと、恋愛ものだ。(勿論色んなものを見るが。)

互いの知識や情熱は尊敬しあっているが、やはりこのような誤解や争いは避けることができないことが多い。しかしそのほとんどが他人の手によって止められてきた。

そう。

今回も俺が望んでいた止め役にあたる人物が現れてくれた。


「朝から何をギャーギャーさわいでいるのかしら?」


「アッ!鬼塚百合恵殿!」


百合恵に反応して、この緊迫した状況を打開してもらおうと、助けを求めようとした女子生徒を押し除けて、後藤が百合恵に食いつく。


「鬼塚殿!和真氏とはどの様な関係なのですか!?」


「え………貴方は何者?……と言うか和真の何なの?」


「は?あぁ失礼致しました!拙者、和真の友人で後藤雪風と申します!どうぞ今後ともよろしくお願い致しまする所存であります!」


この自己紹介に百合恵と同じくクラス全員が恐らくドン引きしたであろう。空気に重たさと今まで感じた事のないような冷たさを感じた。


「…ウワッ………あ、そう。ふ、ふ〜ん。……で、用件は何だったけ?和真と私の関係?」


「はい。」


「そうね……」


そう彼女は言うとしばらく黙り込んでしまった。内心ワクワクしながらどんな回答が出てくるのかと期待しながら見つめていると、彼女と目が合う。慌てて目を逸らした彼女は何故か赤面しながら、まごまごとし出した。それから気持ちを切り替えたかの様に、スッと後藤の方に向くとまるで悪戯好きの小悪魔の様な怪しい笑みを浮かべると衝撃の一言を放った。


「和真はわたしの恋人よ。」


「!!!!!!」


「!!!!!!」


「!!!!!!」


『!?!?!?』


後藤や島風、宮本を含めクラス全体が一気に湧く。もちろん一番の衝撃を受けたのは俺自身だ。


授業すら始まっていない教室は怒号や驚愕に満ち溢れ、俺の周りを人がたかり、新二年生一学期の通常日程はスタートしたが、こんな俺の様子を楽しそうに眺める百合恵の姿が俺の視界に一瞬入った気がした。

しかし、そんな百合恵もまた彼女を狙っていたであろう男子や、取り巻きの女子たちに飲まれていったのだった。ーーーーーーーーーーーー










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