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リベンジ!人魚姫 次こそは幸せになりますわ 中編

 ワタシは旅芸人達と都に向かっている。途中アチコチと街に寄りながら、そこでワタシは身なりを整えたの。軽い生地で作られた色鮮やかな碧色のドレス、舞うとフワリと広がる様に、少し裾丈を詰めてもらいましたの。


 そしてビーズの飾りがついた靴!そうよ靴を履いても痛くないのよー!下着に手袋、絹の靴下、普段着のブラウスに裾短な茶色のスカート、白のエプロン、上着が一枚、帽子が一つ歩きやすい柔らかな革の靴、それを入れる衣装箱も。ドレスのお直しを急いでもらったので、料金が割り増しだったけど、金貨5枚のお買い上げ。


「へえ!あんた良いところの娘さんだったのかい、お金が残ってんなら、紅白粉も買うべきだよ、小間物屋の露天に行こうよ、いい店知ってんだ、え?紅白粉したことない?教えてやるよぉ、あんた綺麗なのがもっとキレイになるよ」


 一緒に買い物に付き合ってくれた、踊り子のジェシーが色々教えてくれる。お買い物って楽しいわね、ウキウキしちゃう。


 フアリと香りの良い店に来た、何も持ってないなら櫛に髪を結うのに使う留金に、リボンに紐にピン、髪油、化粧水に紅白粉、黛、刷毛もいるね、パフも、これは良いの使わなきゃ、雪うさぎの尻の毛がいいんよー、ねぇ店主、そうだ!男を虜にする香水も、と自分の買い物はそっちのけであれこれ選んでくれる。


 金貨一枚のお買い上げ、まとめて買ったのでそれを入れる袋はおまけだよ、って貰えたからタダ!これはオマケしてってジェシーが交渉してくれたの、ワタシはとっても親切な彼女にお礼がしたくなったの。


 だから金貨一枚取り出すと店主さんに差出して、ジェシーが欲しいものをあれこれ選んだ時、ついでにあの子の分をってお金を払ったの


「えー!悪いよ、そんなつもりじゃないんだ、自分の買い物は自分の稼ぎで …………、え?お礼、親切なお友達、そ、それってあたいの事?エヘヘ、アハ、お友達、うん、きゃ!恥ずかし、うん、ありがたく貰っとく、初めてだな、贈り物って、それに友達も」


 赤のドレスが似合う彼女は、小さな銀の鈴を縫い付けた、薄絹の領巾をヒラフワ回して踊るの、ワタシが碧、鈴の音色に拍子を合わせて、歌を唄いながらツバメの様にクルクル回る。息が合ったワタシ達は一緒に踊る事が多くなり、たちまち一座の花形になったの。


 おひねりが、チャリンチャリン投げられるの!どこの街に行っても大当たり、そのうち金持ちの夜会やら、領主の館やらで呼ばれる様になって、そこには王子様の様な殿方がいらっしゃるの。


「美しい異国の碧の姫、この花を受け取ってください」


 仕事が終わったあとに、美しい庭に呼び出され求愛されたのも、一度や二度では無いわ、その度に胸がちくんとするの、大好きな王子様を思い出してしまって

…………、ワタシはこんな風に、目をキラキラさせて、愛を申し込まれた事がなかったなって。


 胸がきゅっとなったわ。姿に形は違うけど、気持ちを伝えられる今ならどうなのかしら、美しいと言ってくださるかしら、舞が素晴らしいねと、歌声が綺麗と言ってくださるかしら。


 花を捧げて貰えるかしら、王族やら、お金持ちは側室を持ってるんだよねって、ジェシーが教えてくれた。あんたならよりどりみどりたから、どっかに落ち付きゃいいのにって、


「あたいと違って、礼儀作法っての?きちんとしてるしさ、アハハハ!あたいはムリ!堅苦しいのはにがてさ!」


 ううん、ワタシは誰でもいいわけじゃ無いの、王子様、王子様にお声をおかけしてもらいたいの、花を捧げていただきたいの、お側にいさせて頂きたいの。


 ワタシを抱き締めて欲しいの。ジェシーが時々、隠れて短刀使いの彼としている様に、唇を重ねて欲しいの。だってジェシー、とてもキラキラとしてるんだもの、ワタシは初めて見たの。


 人間の女の人が恋をすると、綺麗になるって事が、本当だっだって事に、ジェシーにそれを聞いたわ、だって知らなかったんだもの。


「えええー!見たの!ウヒやぁ、恥ずかし、うーん、綺麗になるって聞くけど、わからない、え?でも恋したこと無いの?そんなこと無い、そうやろそうやんなーあんたほど綺麗ならひとつやふたつ、え!片思いやったんかぁ、その男ハズレ …………、というより恋の神様が味方してなかったんやね」


 恋の神様、神様にもそんなお方がいらっしゃるとは、陸地には知らないことがまだまだ沢山あるのね、ワタシはジェシーから恋のおまじないやら、男の人とのお付き合いの仕方からアレコレ沢山教えてもらったの。


 ウフフフ!前はなんにも知らなかったから、何も出来なかった、今ならそうわかるわ、だから次こそは王子様にお会いする事さえできたならば …………、



 絶対にモノにしてみせるわ!



 あと二日もすればたどり着く時に、座長から話があると言われて呼び止められたの、素晴らしい話を聞かせて頂いたの!


「たのみがあるんだがな、都についたら終わりとか言ってたが、お城に呼ばれてるんだ、それまではここにいてもらえないか?」


 何でも国王陛下の六十の祝とやらに賑やかしで出てくれないかと、何時も世話になっている商人から、言付けが届いたんだって。


 お返事はもちろん大丈夫です、ってお答えしたわ、こうも順調にお城に行けるなんて、夢かと思った、これは来てるわね。ふふふふ、恋の神様が、次こそはワタシに微笑んでくれているのかもしれない。


「そうか!助かる、じゃ頼んだよ」


 座長さんはポン、と肩に手を置くとニコニコとして、頭を下げたの。


 ワタシは笑顔で頷いた、彼が離れた後でその場に立ち止まり青空を見上げる、少し前前迄はそこをふあふあと飛んでいた。


 最初は神様の言うことを信じて、時を重ねて人間に生まれ変わろうと、懸命に過ごした。でもすぐに考えを変えた、後悔したの、ワタシが消えた所に姿を見せる、短い髪のお姉様達、お祖母様やお父様を見たときから、悪い娘だとチクチクと胸が痛む、


 あの時お姉様の言うことを聞いておけば良かったと、でもそれは出来ない、大好きな王子様を殺して、人魚に戻る。それは出来ない、そんなことは出来ない。


 だから一番良いのは、王子様とあの時一緒に死んでいたら良かったんじゃないかと思っていたの。


 青空は海の上の色、深く下になればなるほど碧になる。ワタシはそこにいた頃、お祖母様の目を盗んで、太陽がキラキラしている時に、青の色に惹かれて上に遊びに行ってた。空を見ると思い出す。


 懐かしい海底の国を。家族を、仲間達を、ワタシは全てを壊したかもしれない。幸せになりなさいと言われて育てられたのに、だから今度は、次こそは、精一杯考えて、出来る事全てをし尽くして!幸せを掴んでみせる!


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