リベンジ!人魚姫 次こそは幸せになりますわ 前編
ああ ……… ワタシ早まったと後悔してますの。お姉様達の美しい髪の毛をざんバラにした上、海の泡になり、哀れに思った神の思し召しで、空気の娘になった事に ………、
そもそも人魚は賢いのですわ、七つの海を制する生き物ですもの。よく考えればよかったのに、恋は盲目、愚かにもほどがありましてよ。
空気の娘となり、三日もすればワタシは落ち着いて、アレコレと考える時間に恵まれ、そして自分の愚かさに呆れ果ててますの。はあぁ、どうしようかしら、会いたいですわ、愛しい王子様。他の女と結婚してますけど、そんなの関係ないですもの。
よく考えれば、一夫一妻なんて人間の世界でも、上に行くほど無かったもの。ましてやワタシはお魚だし、結婚?よくわからない。好きだから側にいたいな、なのよね。
「あら?あの娘、崖の上で何を?」
何時もの様に、物思いに耽りながら、ふあふあと飛んでいると、何やらワケアリな娘の姿を見つけましたの、人間死期が近いとワタシ達のようなモノが見えるの、そしてどう見ても、彼女の顔色は、死神にとっつかれている感じを見て取ったから、ワタシはダメ元で優しく声をかけたの。
「どうしたの?美しい娘さん」
「え!空に浮かんで、貴方は天使様?」
やはりそうですわね。ワタシは崖っぷちの彼女の正面に浮かんでますの。上から下までしげしげと、観察しましたよ。
亜麻色の髪、碧空の瞳に、白い肌、ふーん、胸も豊かで
………、ワタシは持ってる魔法の知識全てを総動員をかける。もちろんそんなもの使えないけれど、今なら何かできそうと思ったから、そして閃いたの。
これは僥倖ですわ、何という巡り合わせ、ぜひともモノにいたしましょう。娘に更に甘く優しく話したわ。
「ええ、似た様な存在ですの、愛に生き愛に全てを捧げた人魚姫ですの、美しい娘さん、どうして死のうと思ったの?貴女の助けになりたいの」
「愛に全てを捧げた ………… そして私の助けに …………、ああ、天使様、天使様、わ、わたしは、私、結婚しよう言われてたのに、言われてたのに …………、妹に寝盗られたの、ううううっ」
「まあー!それは哀れな、貴方はそのお方を愛していたのね、わかりますわ、ワタシも王子様と結ばれることなく、ヨヨヨヨ」
シクシク泣いてる娘の前で、ワタシもシクシク泣いてるフリを、上手く話を盛り上げないと、彼女がここから飛び降りたら、フカの餌だもの。勿体ないわ。
「わかってくれますの?天使様、その男は私に金貨を渡して、遠くに行ってくれないかと、そして私の親までもそういうのです。私がいると家の恥となると、遠くの修道院に行き帰ってくるなと、もう誰も信じられません、神様も、だから私は」
「ここから飛び降りるの?そんな、貴方のような清らかな人間が自ら死んではいけないわ、今の事を忘れる事なく抱いたままで、永遠の闇の中を歩く事になるのよ、そうだわ、ワタシの手をお取りなさいな」
「この辛い気持ちのまま永遠の闇を、そんな。死ぬと何も無くなるのではないの? …………、天使様のお手を?なぜ?」
涙に濡れだ目でワタシを見てきた。フフ、ここでヘマはしちゃいけない、慎重にしなくちゃ …………、
「あなたを助けたいの、空気の娘にしてあげる、長い時間がいるけど、神様のお言いつけに従えば、新しい人間に産まれかわれる事が出来るのよ」
「新しい人間」
「そう、新しい人間として生きるの、そして全て忘れるの、さぁ、空気の娘になりたいと願って手を取って、みんな忘れて楽しく暮らしましょう、さあ、いらっしゃい、哀れな娘さん」
全てを忘れる、みんな忘れて、この言葉が娘の心を捉えたみたい、フラリとワタシに手を差し出してきた。その手を取る。ドスン!ワタシは身体が重くなり、彼女が目の前からフワリと光り、サラと消えてくのが見えた。
「やったー!器に入れたわ!ん?んん!痛くない!そうよね、前は魔法で尾を足に変えたんだもの、声まで売って、あー!馬鹿なことしたわよ、あーあーあーあーあー、うん、なかなかいい声ね、少し鍛えたら出る様になるわね!」
ポケットを探ると、金貨が入った革袋が出てきた。中には、金貨十枚といくつかの宝飾品が入っている。宝石は彼女の親からかな?男は金貨ってたから、十枚か、馬一頭分だわね、ケチ?その男。親もケチねぇ!高価なのって、ピンクゴールドの真珠の髪飾り位ね。
うふふ、こう見えても審美眼は鍛えられているわ、沈没船からよく拾って集めていたもの。ワタシはそれをポケットの奥深くにしまい込んだ。それを使う気は今はない。
「さあー!王子様に会いに行かなくっちゃ、でもどうしたらいいのか、あら?音楽が聞こえる」
その音に惹かれるように、そこに向かったの、賑やかなその場所には馬が数頭、幌馬車がいくつか、そして楽器を操り歌って踊ってる一団、旅芸人ね、ワタシは彼等に声をかけた。
「あの、すみません、ワタシ都迄行きたいのですが、その間だけ仲間に入れてもらえませんか?」
お!こいつぁキレイな姉ちゃんだ、なんか芸が出来ればいいぜ!と言われて、ワタシはツバメの様にクルクル回って踊って見せた、それと練習不足だけど歌も。
「ほおぉぉ!こいつぁたまげた!あんたの芸金になるよ!良いよ仲間になろうぜ」
ふう、良かった、こうしてワタシは旅芸人達と商売をしながら、王子様がいる都へと向かったの。