じーさんの知り合いなんですね。そして回想終了
あまりにとうとつな事に驚きバッと振り向き声の主を見る。
そこに居たのは黒髪に白髪が混じった髪をオールバックに整え、口と顎の髭も綺麗に整えられた燕尾服に蝶ネクタイとあまりにも山の中には場違いの初老の男性が立って居た。
『なぜここに執事?』と、そんなツッコミをする余裕もないほどに男性の穏やかな口調とは裏腹にとてつもないプレッシャーがヒシヒシと肌を刺す。
そのプレッシャーはじーさん秘蔵の酒を落として台無しにしてしまった時の比ではない。
そんな危機感が薄れる考えを切り替えて何とか男性の質問に答える。
「こ、ここに来たのは、、、、」
こうゆう時はなるべく簡潔に丁寧に答える方が良いので長くならないように気をつけながら山に登った経緯とこの場であった事を話す。
「ふむ、ではここに来たのはこの私と闘うためにきたで宜しいかな?」
「は、、、?何でおっさんと闘うんだ?俺の用があるのは森の主でモンスターだ、人と闘う事じゃない」
「おっさんではない。私は、ドラガ・ゲイル・バハームト。この山一帯とドラゴンの頂点に立つものだ。そして、その後ろで身動き出来なくなっている者は私の可愛い可愛い大切な孫娘だ」
最初の口調とは真逆な怒りをあらわにした声で、後ろにドラゴンのシルエットのオーラが見え、ドンっと一気に殺気が増しその場で膝をついた俺は『あっ、これ死んだ、、、』と、もはや他人事のように自分の命が散るのを悟りすぐに抵抗するのをやめた。
だが一向に攻撃なり何かしらあると思ったが何も起こらず恐る恐る視線を上げる。
「フー、フー、フー、はー、いかんいかんキャラが壊れてしまう落ち着け私、私は紳士私は紳士、、、」
などと訳のわからない事(キャラ作ってたんかい)を呟いている。頭の中を?が埋め尽くす中ドラガさんから声をかけられる。
「そこのこぞ、、、貴方の後ろにいる子はちゃんと無事なんですよね?」
改って聞いてきたドラガさんは最初の言葉を無かったことにして背後の塊、もとい孫娘とやらの安否を聞いてきた。
「ええ、倒しきる事は早々に諦めて身動きを取れないようにしただけなので命に、とゆうか傷もほとんどないと思いますよ(硬いし)」
少しぼかして状況を伝える。
「ん?まぁ無事であるならそれで良いのですが早急にあの岩をどかしてはいただけないでしょうか?勿論貴方に襲いかかるような事はおそらく?多分、まーほとんどないと思いますが。そこは、私の怒りを鎮めると思って素直に従ってはいただけないでしょうか」
思いっきり丁寧に脅してきた。
戦闘になった場合瞬殺されるのは目に見えてる。ここで話の通じる?相手には従った方が賢明ではあるので素直に従うことにした。
魔法を解除するのは簡単だがそれでは岩に埋もれたままになるので上に重なっている岩を一部解除しながら収納魔法で岩をしまい覆い被さっている部分を撤去する。
ある程度取り除いたら全ての岩と口をグルグル巻きにしてある魔糸の魔法を解除する。
「grru、、、」と鳴き、岩をガラガラと崩しながら立ち上がる。
最初とは打って変わって大人しく『ドンっ』ドラゴンの顔がいきなり突っ込んで体に擦り付けてきた。『鱗が痛いなんか臭い』と思ったが、攻撃されているわけでも無い(鱗でダメージ受けてる気もするが)ので我慢してなされるがままでいると。
「な、何をしている?チェーレちゃん直ぐに離れなさい、そのこぞう、、、人間はチェーレちゃんを攻撃した者だぞ。だから直ぐに、直ぐに離れなさい」
慌てて間に入り離すように促し「gru、、、」と鳴いてシブシブと離れるが少しヘソを曲げてドラガさんを睨みつけている。
「あの、何でいきなり擦り寄って来たんですか?俺はただ動けなくしただけなのに」
擦り寄られた衝撃で仰向けに倒れながらその状態でドラガさんに聞く。
「あ"ん、、、あぁ、ちょっと待て。 何々、『こんなに遊んでくれた人は初めて、人間もドラゴンも遊ぼうと近づいても皆んな私を見ただけで逃げるし。だけど貴方は私と追いかけっこもしてくれたし一緒に空も飛んでくれたし、だけど私が落としちゃったから怒ちゃったんだよね。だから謝りたくてもう怒ってない?また遊んでくれる?』だそうだ。どうなんだ小僧?」
『あ、最早小僧呼びになったキャラ完全に壊れてるね。てゆうかあれ遊びですか命が何個あっても普通は耐えれない物ばかりだったよね。じーさんの特訓受けてなきゃ出会って1秒であの世ですやん』俺も変な関西弁になる程の思いが募るがそれを脇に置き質問に答える。
立ち上がりドラガさん達を見ながら。
「えぇ、怒ってないですよ。落ちたのは自分からですし。遊ぶのも、まぁー、命の危険が無ければ出来るだけ相手になりますよ」
思わず口にした言葉ではあるがそれを聞いたチェーレは嬉しいのか「gruuuuuu、、、」と鳴いた。
ドラガさんは眉間にシワを作り何かしら考えているのか黙ったままだ。
「ふむ、まぁここで話し込んでもあれだな場所を移そう。私の住処に来なさい。お茶くらいはだそう」
そう言って先に歩き出し付いてくるように促した。それに付いていく俺、チェーレは飛び立ちドラガさんの向かう方角に旋回しながら先に向かった。
「あの気になってたんですけど今質問しても良いですか?」
「何だ?答えられる事なら答えよう」
「では、何で会った最初は執事風だったのに今は普通に話してるんですか?」
ただの世間話のつもりで振った話題ではあったがドラガさんは『ハッと』今気がついたと思ったのか慌てて言い直し答えた。
「えぇ、それはですね、ダイラルフと言う魔法使いと色々勝負をして賭け事をしていたのです。私が勝てばその方のお酒やら食べ物を、その魔法使いが勝てば私に色々と仮装や芸などさせられたのですが、最近その勝負に負けましてね。次の勝負があるまでこの格好と口調を強要しているのですよ」
最後「ははは、、」乾いた笑みを浮かべ遠くを見るドラガさん。
じーさんと知り合いだったのかよ。なぜこんな格好させてんの?確かに似合っているけど。
「あ、じーさんと知り合いなんですね」
そんな当たり障りなく返したら『バッと』振り向き俺を見る。
「彼奴と知り合いなのか?何が望みだ私に今度は何をさせる気だ」
「え、何もさせないですよ。俺も森の主達と戦って来るように言われただけなので」
「そ、そうだったな。うん、そうであった」
ポンポンと肩を叩き俺に悲しそうな視線を向ける。
じーさん一体何をさせたんだ。てか私と一緒だなみたいな感じで哀れむな泣きたくなる。
「そうかそうかお主も苦労しているのだな。あぁ、そう言えばお主の名前をまだ聞いておらんかったな名は何と言う?」
口調もくだけた感じで会話を進め俺は自己紹介と簡単なじーさんとの出会いを説明する。
「そうか、彼奴と同郷かならば色々と都合が、、、げふん。イヤなんでも無いそれよりももうすぐで私の家だ」
そう言って周りは岩肌しか見えない山頂手前の平地につく。「こっちだ」と、そのまま進むと姿が霞のように消えて見えなくなった。
慌てて後を追うと、その先は綺麗に整えてある芝生、色とりどりの花が咲き近くには小川も流れている。その奥には家とゆうよりは、赤煉瓦で出来たシンプルでそれが美しく、綺麗なシンメトリーの館がそびえている。
門は無く簡単な柵が芝生と岩の地面の間に均等に立てられている。よく見ると魔石がはめ込んでありそのおかげで外から見えず気候や水といった環境の調整などがされているみたいだ。
その庭にはチェーレが先に着いておりゴロンと寝転がっている。
「ここが私自慢の家だ中に入りなさい」
「あの子は入らないのですか?」
寝ているチェーレをさしながら聞くと。
「あの子はまだ人化が出来ないのでな家には入れんのだ。だが庭先でも気候は安定しているし下手な洞窟より過ごし易いのだ。人化を覚えるまで気長に待ってその辺りで生活している」
まぁ、ゴツゴツした岩よりは過ごしやすいだろうと思い家へと入っていった。
その中は、あまりキンキラとした物は無くだが歴史がありそうな調度品が綺麗に並べられたエントランス、その床は落ち着いた色の絨毯が敷いてある。
そのエントランスを通過して客間のような場所に通される。
「ここで待っておれ今お茶を持ってこよう」
ドラガさんがそう言って部屋を出て行き、とりあえず待ってるように言われた俺は大人しく長めのソファーに腰掛け待つ事にした。
客間も物は無くソファーとテーブルロココ調の収納台、本棚などがある20畳程の部屋だ。
少し広い部屋にポツンと待つ事数分で戻ってきたドラガさんの手にはなぜかティーカップやティーポットではなく。急須と湯飲みそして漬物であった。
『洋風の家でなぜ日本茶⁇そして漬物⁇』と別の意味で驚いた俺を見てドラガさんは
「どうした?彼奴が来た時はこの組み合わせなのだが気に入らんかったか?」
ざっ日本茶と田舎旅行番組でしか見ないようなお茶受けの衝撃から立ち直った俺は
「そうなんですか。いえ何でもありません。漬物何て久しぶりです」
と笑顔で返した。
「やはりな、そうでは無いかと思った。彼奴と試行錯誤して作った物でな、この野菜などは私自ら裏の畑で作った自信作なのだ。存分に味わってくれ」
ドラガさんも笑顔で漬物と野菜を自慢し始める。
そしてお茶と一緒に漬物を食べてみると意外に美味しく『あっ、ご飯食べたい』と哀愁の念がこみ上げてきた。そんな一幕があり落ち着いた所でドラガさんが徐ろに口を開く
「さて、お主は彼奴にわし達、主と闘うように言われここに来たのだな」
「えぇ、そのとうりです。ですが貴方と面と向かって闘っても勝てない事は十分解っているつもりです」
「ははは、これでも世界の頂点にいる存在達だぞ。勝つことはおろか闘いにすらならんわ。じゃが強くなりたいのであればわし自ら手解きをしてやろう」
「良いんですか?でもまた何で?そんな優しくされる覚えはないんですが?」
「勿論ただでとはいかん。交換条件として彼奴と賭けをするときにいつもいつも彼奴はオセロや将棋、トランプなどと言ったお主達の世界での遊びを持ちかけてくるのだが私の惨敗で終わっている。そこで同郷のお主から勝てるだけの技を磨きたい。彼奴が言うには対戦し続けるのが上達の肝だとぬかす。だがこんな山の奥に誰が相手をする者が居ようか。それに孫娘もお主と遊びたがっておるしな孫娘の相手もしてもらえるとなお良い。あの子は他のドラゴンと違って私の力を継承しておってな並みのドラゴンでは近付くことすらせんのだ」
そんな時お主が来たこれは僥倖逃がしはせんぞと眼光鋭く語ってくる。
じーさん初心者相手に容赦ないな。それにオセロや将棋、トランプなど色々あるみたいだ。おそらく俺が来る前の転移者か転生者が広めた者だろう。もしかしたらじーさん本人かもしれないが。
そんなテンプレを数段飛ばした内容に少し考え了承することにした。正直オセロは出来るが強さは普通だし将棋に至ってはルールは解ってもやった事はほとんど無いですよと言ったのだがそれでも良いとのこと。
「よしよし、では早速、、、」
立ち上がり収納棚からゲーム盤を取り出しテーブルに置き直ぐに始めようとするドラガさん
そこから始まる地獄は想像に絶する事になる。
何十もしくは何百と対戦をし合間をぬって戦闘訓練をしてチェーレと命を賭けた遊びをし、またゲームをするとゆうサイクルを1ヶ月近くする羽目になったのだがこれは割愛する。
そりゃ何百何千と対戦すれば強くもなりますよ。何方がとは言わないが。そこまでしてようやく満足したのか俺が山を降りる時には満足した笑みを浮かべ見送ってくれた。
チェーレはまだ遊び足りなそうな顔をしていたがここは納得してもらわないと俺が死ぬ主に睡眠不足で。そして山を降りて次の主を探す旅に出たのだ。
〜〜〜〜
回想終了
そうここで出てきた、俺にとっては無害(何度か死にかけている)でしかない黒竜こそ今街に接近しているチェーレ本に、、本竜なのだ。