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無自覚は無慈悲

今日は待ちに待ったアデリーンのお店に服を取りに行く日!

前回採寸してからちょうど1週間。朝からとっても楽しみだったんだー。むふふ。

私は例のごとくお昼休みに事務所を抜け出して、アデリーンのお店に向かった。


「こんにちはー。アデリーンいる?」

「はーい、いらっしゃーい」


何時ものようにお店に出てきたアデリーンを見て私はびっくりした。

なんと!アデリーンが男の格好をしているではないか!

体にぴたりと沿う黒のシャツを着て鮮やかな髪を無造作にしばった姿は、無駄に色っぽいけど普通に男性です。そしてまじイケメン!

でもなんかこう、激しくこれじゃない感がするのは何故だろう・・・?


「えっと・・・男装?」

「いや、こっちが普通だから」

「えっ!?でもそれ、私は初めて見るよ?」

「うん、まあ今日は大事な仕事があるからね。それとも何時もの方がいい?」

「えっと・・・うーん、アデリーンの好きな方でいいよ。私はどっちのアデリーンも好きだから」

「そう?ふふ、ありがとな。とにかく例の服出来てるよ。着てみるだろ?」

「う、うん。そうしよっかな」


なんだか私、男の姿のアデリーンに動揺しまくりです。なんだろう。このもやもやは。

もやもやしてる私をアデリーンは何時ものように採寸室に通すと、服を渡してくれた。


「下のサイズは大丈夫だと思うけど、問題はトップだな。これデザイン的に胸が大き開いてるから難しいと思うんだ。まあとにかく一度着てみて」

「うん・・・」


もやもやしてる私はもやもやしたまま着替えます。

楽しみにしていた花の名前のお姫様の服、ちっとも嬉しくないのは何故だろう。

思ってより色はずっと違和感なく私の肌に馴染んでる。ラインも綺麗。けど、なんだろう・・・いまいちテンションが上がらない。


「どう?」

「うん。サイズは大丈夫みたい。」

「入っていい?っていうか入るよ」

「え!?えっと・・・」


今まで平気でアデリーンに採寸とかしてもらってたのに、男の姿だというだけで見てもらうのも妙に緊張する。

いやいや落ち着け私。これはアデリーンだから。むっちゃ色気があるイケメンだけどオネエだから!

そんな私の顔を見てアデリーンは意地悪そうに笑った。


「なにマーヤ、そんなに顔赤くして。今までさんざん俺の前で脱いでたくせに、俺が男の服着ただけで意識しちゃった訳?」

「うっ・・・」


そうか、このもやもや感はそれか。女友達だと思って油断してたら実はイケメンだったってやつか。しかもこやつ、新たな属性色気ダダ漏れのオネエ系イケメン!


「・・・悔しいけどそうかも・・・」

「は?」

「今までアデリーンのこと女友達みたいに思ってたのに、実はすごいイケメンなんだもん。だからこんなにドキドキしちゃうんだよ・・・」

「・・・ぐっ、お前、それ反則・・・」


そう言うとアデリーンは口を抑えて慌てて採寸室から出て行ってしまった。

あれ?どうした?何があった??

そういえば私も事務所に戻らないと時間がぎりぎりかも。やばい!


「ごめん、アデリーン、もう時間なくなっちゃった!今日の帰りにでもまた寄るねー!」


慌てて服を着替えて採寸室から出ると、奥から出てこないアデリーンに声をかけて私はお店をあとにした。


それにしても新たな属性出現とは・・・やるな、あいつ!

っていうか、女友達感覚で接してたけど、普通に男性だったね。うっかりしてたなあ。


「はあ・・・」


事務所に戻った私は、頭を抱えて自分の机の上につっぷした。

今まで私、アデリーンの前で平気で脱いだり採寸してもらってた。それにけっこう際どい女子トークもしてた気がする。

やばい、女子として終わった。始まってないのにもう終わった。

私は今まで自分がしでかしたことを思い出して、余りの居たたまれなさに一人机で身悶える。


「おい、大丈夫か?」


ああ、グレイさんの声が聞こえる。さぼっているのが見つかった!

私が恐る恐る顔を上げると、なんだか彼はひどく心配そうな顔をしている。


「あの・・・」

「マーヤ、顔が真っ赤だ!熱でもあるんじゃねえのか!?」


いきなりがばっと近づいて私のおでこで熱を確認するグレイさん。

ひえぇっ!顔!近い!近いよグレイさん!っていうか私イケメンに至近距離で触られてます!


「だ、大丈夫ですから!」

「いや、だが頬もこんなに赤いぞ?首まで赤くして、これから熱が上がるんじゃねえか?」


そう言ってグレイさんは真剣な顔で今度は私の頬を触り、それからうなじも触って熱があるか確かめる。

やめて!もうやめて!とっくに私のライフはゼロよ!


「や・・・、グレイさん、もうやめて・・・」


私が半泣きになって首を振って抗議すると、グレイさんは一瞬驚いたような顔になったあと、意地悪そうに笑った。


「なんだマーヤ、お前照れてんのか?おでこを触られた位で恥ずかしがるような歳じゃねえだろうが」

「うっ・・・」


だってこの2年こんなに過剰なスキンシップは誰からもなかった!しかもこんなイケメンのスキンシップなんて、日本にいた時だってされたことなかったよ!


「・・・だって・・・」

「あん?」

「今まで男の人におでこ触ってもらったことなんてなかったもん。それがグレイさんみたいなイケメンが触るからこんなにドキドキしちゃうんだよ・・・」

「・・・ぐっ、おめえ、それ反則だろ・・・」


そう言うとグレイさんは口を抑えて慌てて事務所から出て行ってしまった。

あれ?どうした?何があった??っていうか最近どこかで似たような光景を見た気がするよ?


その後何故かグレイさんは事務所に戻って来なかった。

そして私は事務所の全員に顔が赤いと心配されて、いつもより早く帰って良い事になったのだった。

えへへ、らっきー。



アデリーン「あの顔やばすぎるだろ。マーヤのやつ、反則だよ・・・///」

グレイ「・・・あれは・・・可愛いすぎるな」


その頃のマーヤ@帰宅途中

マーヤ「今日のご飯は何にしよっかなー」

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