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好きな服を着ればいいじゃない

ゆるーい設定です。あまり深くつっこまないでお楽しみいただけると嬉しいです(*'ー'*)


私の名前は麻耶。26歳ごくごく普通のOL。


なんの因果かうっかりゆるっと今流行の異世界トリップというやつをしてしまったらしい。

本当にうっかり、そして色々ゆるっと。


ここに来た当初、ラノベや漫画でよくあるヒロイン的展開とか主人公補正っていうやつを期待しましたよ、私。

黒目黒髪がめずらしい!とか

実はすごい魔法が使えます!とか

私が世界を救う巫女でした!とかさ

でもね、

黒目黒髪?そこら辺にありふれてます

凄い魔法?一人でこっそりファイヤーボール!って唱えましたよ。何も起こらなかったけど

世界を救う巫女?普通に平和みたいです

うん、なんかね、私、特に呼ばれた訳じゃなかったみたい。うっかりここに来ただけ、みたいな?


そもそもここには色んな人がいる。

欧米系もアフリカ系もアジア系も普通にいる。加えて獣人も魔人もエルフもドワーフも、もうみんないる。

うん、私のこと誰も見てないね。私別に隠れる必要ないね。っていうか隠れてたら生きていけないね。


という訳で、ここにトリップしてきたその日にすぐ職探しですよ。はい。

幸い大きな街だったから仕事はすぐ見つかった。食堂の厨房兼ホール。しかもラッキーだったのは制服と3食賄い付きで寮完備!

港町で人の出入りが激しいから少しでも長くいてもらえるよう待遇をよくしてる、とは食堂店長の談。当時は本当に助かりました。店長マジ神!


働いてるうちに会計を任されて、計算が得意ってわかると店長に店舗運営の仕事の方に回されて、更にオーナーを紹介してもらって本業である貿易商の仕事を手伝うようになったのは、かれこれもう1年以上前のこと。


ここにトリップしてきて約2年たった。うん、私だいぶこの世界に慣れてきた。


最近思う。今まで目立たないように暮らしていたけど、それってもったいないよね。

せっかく全然違う世界に来れたんだから、もっと色々楽しんでいいよね。

レッツエンジョイ異世界ライフ!

という訳で、私は自分のやりたいことをしてみることにした。


やりたいことその1。好きな服を着る。


ここの人たちは老若男女問わずみんなおしゃれ。

淡いピンクの髪の男の子がミントグリーンの服を着てたり、銀の髪をしたマダムが深い紫のドレスを着てたり、みんな自分の魅力を引き出す色を選んでる。流行の色とか定番の色とか、何それイラネって感じ。

服の形だって普通にカジュアルの人もいればドレスの人もいる。騎士みたいなの服の人も、冒険者みたいな服の人も、それこそ布だけ巻いてるみたいな人もいる。みんな人それぞれ。でも誰も気にしない。


私は日本人的感覚が抜けなくて、ついついグレーとか紺とかベージュとか、無難な色ばかり選んでた。

しかも体の線を出したくないから、だぼっとしたハイネックのトップとかくるぶし丈のロングスカートとか、極力胸も足も出ない形の服ばかり。

でもせっかくここにいるんだから、自分が好きな色の好きな服を着てもいいよね。


そう思った私は友達の服屋さんに相談にのってもらった。

この世界、基本、服はオーダー。まず基礎となるパターンがあって、それぞれ自分のサイズを測って作ってもらう。

確かにこれだけ色んな種族がいれば、基本がS、M、Lの3種類のサイズっていう日本的考えは通用しないかもね。


「こんにちはー。アデリーンいる?」

「はーい、いらっしゃーい」


そう言って奥から出てきたのは身長は180cmくらい、大胆にスリットの入った黒いセクシーなドレスを着こなし、ショッキングピンクの長い髪をゆるく編み込んでサイドから前に流した、泣き黒子がなんとも色っぽいイケメン(推定20代後半)。

いやー、お姉系って異世界を含む全世界共通なのね、って私の認識を新たにしてくれた人です。


「あらー、マーヤ、この間の服着てくれたのね。とっても良く似合ってる。流石私の見立ては完璧だわ」

「えー似合ってる?嬉しいなー」


今日私が着てるのは白のボートネックのカットソーに、ブルーの花柄が可愛いひざ下丈のふわっと広がるスカート。

最初から色々頑張るとちぐはぐになるから、まずは上か下かどちらかだけ変えた方がいいってアデリーンのアドバイスを参考にしたコーデです。


「それでね、今日はこの間言ってた服の絵を書いて来たの。これこれ」


そう言って私はカウンターの上に絵を広げた。

参考にしたのは某アメリカアニメに出てくる花の名前のお姫様の服。

さすがにあそこまで露出高くはできないけど、ボトムはあの色、あの形で、上を白のちょっとぴったり目のカットソーとかに変えたらすごく可愛いんじゃないかな。うふふ、妄想が広がる。


「小さい時からこの服に憧れてて、一度着てみたいって思ってたんだよね」

「あら!これなかなか可愛いじゃない。マーヤは胸が大きいんだからもっと主張する服着ればいいのよ。武器は使えるうちに使わないと」

「あははー、そうかなあ。女が一人だと色々危ないかと思って、極力目立たないようにしてたんだよね。でも私元々地味だからさ、そんなことする必要まったくなかったって、最近ようやく気が付いたよ」

「大丈夫よ!いざとなったら私がマーヤのこと護ってあ・げ・る・か・ら!」

「えー、そこはやっぱり素敵な彼氏に護って欲しいんだけどなあ」

「なに贅沢言ってんの。あんたには私で十分よ!さあ冗談言ってないでちょっとこっちに来なさい。色を見させてちょうだい」

「はーい」


そう言うと私はアデリーンの後ろにある、大きな鏡のある採寸室に入った。


「このグリーンみたいなブルーはなかなか難しいわねー。マーヤの肌の色だとこっちの方が映えるかしら」


アデリーンは似たような色の布を次々と私の顔にあてて行く。


「ねえアデリーン、私の意見は聞いてくれないのかい?」

「ああん?あんたは私に任せておけばいいの。ねえ、ちょっと髪の毛邪魔だからあげてちゃっていいかしら」


アデリーンは器用に私の髪を一つにまとめると、アップにしてピンで留める。


「・・・ふふ、アデリーンの方が髪の毛結ぶのが上手いってどういうこと?」

「あんたほんとに女子力の低い残念な子ね」


そう言ってアデリーンは綺麗なエメラルドグリーンの布を手に取った。


「うん、マーヤの肌の色だと少しグリーンが勝ってるほうが似合うわ。これにしましょう。ほら見て」


アデリーンは私のすぐ後ろに立って手を前に伸ばし、鏡の前で布を顔の下にあてる。


「最初のブルーのよりこっちの方が似合ってるでしょ?」


鏡の中には大柄美女の腕の中にすっぽり収まる私が映ってる。うん、ちっちゃいね!のっぺりしてるね!

こんな間近で現実を見てしまうと、色がどうこうって次元で頑張ってもねーとか思ってしまう。

見よ、このアデリーンの綺麗な肌!すっと伸びた鼻の高さ!少し垂れ目がちの大きな目を縁どるばっさばさの睫毛!そしてそれに比べてあまりにも平坦な私の顔・・・

まあ服を楽しむのは自分の為だもんね。ここは見なかったことにしておこう。


「うん、こっちの色にする。やっぱりアデリーンはセンスがいいね。私、自分でもどの色が似合うか知らないのに、ぱっと見るだけでわかっちゃうんだもん。ほんと尊敬する」


振り向いてそう言うとアデリーンの顔がすぐ近くにあってびっくりする。うおっ顔が近いよ!まあこんな美女を間近に見れてラッキーだけどさ。

アデリーンは私の顔を見てちょっと驚いたように固まったけど、すぐに離れて頭を振った。すまんね、のっぺりで。


「・・・まったく、あんたは自分で自分のこと知らなさすぎ。鈍感なのよ!」

「あははーごめんね?じゃあ私もう行かないと。今日は早く絵を見て欲しかったからお昼に抜けてきちゃったんだ。だから急いで戻らないと。ねえ、これ出来上がりはいつ頃になる?」

「そうね、まあ難しい形じゃないから1週間もあればできるわよ」

「1週間ね、わかった。じゃあまた来るねー!」


そう言って私はばたばたと荷物をまとめるとお店をあとにした。

うふふ楽しみ楽しみ!





浮かれていた私は知らない。

私が出て行ったあと、アデリーンが妖艶な笑みを浮かべて物騒な独り言を言っていたことを。


「・・・まったく鈍感にも程があるわ。もうそろそろきっちり捕まえとかないと、これ以上放置しておくのは危険ね。マーヤ、覚悟しておきなさい」




マーヤ 「あれ、なんか寒気が・・・?」

アデリーン 「ふふふ・・・」



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